【ガイドブックに載ってない島の旅・アソ―レス諸島】
第7話)番外篇-ロンドンなんか嫌いだぁ!

《ポルトガル|アソ―レス諸島|ファイアル島|サォンミゲル島|テルセイラ島》

やっと運気が上向いてきたかなと思ったらもう帰国の日である。アングラ=ド=エロイズモの街から空港まで20分ほどの道のりは、到着した日と同じタクシーの運転手が迎えに来てくれた。

 運転手:「わしはこの間も、日本人を乗せたよ。」
 僕  :「この島にも、日本人ツーリストが来るのですね。」

 運転手:「ツーリストじゃないよ、ジャーナリストだよ。」
 僕  :「ジャーナリスト!」

 運転手:「そうさ、この島でアメリカの大統領とイギリスの首相が会談したろ。」

お、思い出した。そうだ、あのイラク戦争開戦直前、ブッシュとブレアが大西洋の米軍基地で会談したと日本でもニュースになったが、それはまさにこのアソーレス・テルセイラ島の米軍基地だった。

タクシーの車窓からは美しいアソーレスの田園風景が広がる。青い海に緑の牧場を乳牛がのんびりと草を食む。まったくのどかなこの島で、悲惨な戦争の会談が行われていたのかと思うとなんだか複雑な気持ちになった。

テルセイラ島の田園風景
テルセイラ島の田園風景

ファイアル島 → サォンミゲル島 → テルセイラ島 と続いた僕の旅は、こうしてあっという間に終わってしまった。

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今回、休暇そのものはそれなりの日数を確保できたのだが、いかんせんアソ―レスは遠かった。ロンドン、リスボンと乗り継がないと辿り着けないのだから。そして、行きの旅程で痛い目に会ってしまった。

ロンドンからリスボンへ-写真はリスボンの4月25日橋
ロンドンからリスボンへ-写真はリスボンの4月25日橋

行きは、ロンドン夕方1600着、そして翌朝830発のリスボン行きに乗るという旅程だった。実は僕、イギリスは今回が初めてだった。ロンドンはアールズコート地区に安いB&Bがあるとの情報を得て、その辺りで一泊する予定でいたのだが、、、まぁここでちょっと行きのロンドンでの乗り継ぎをふり返ってみよう。

東京から10時間あまりのフライトで疲れていた僕は、アールズコート地区まで行くのが面倒になってしまい、空港のホテル予約カウンターに向かった。

 僕  :「この空港に安いホテルはないかしら?」
 予約係:「ありますとも、サー」

おお、それは良かった。明日は朝のフライトだし空港で安く泊まれるならそれにこしたことはない。

 予約係:「シェラトンが一番安いです、一泊たったの98ポンドでございます。サー」


きゅ、98ポンド~!!それは日本円にすると2万円近いではないか、べらぼうめ。

 僕  :「あの~、30ポンドぐらいのところはありませんか~?」(本当は20ポンドと言い
     たかったのだが、なめられそうなので10ポンド分奮発して言ってみた)

 予約係:「ふん、ここにはないよ。街中だね。ビクトリア駅近くで48ポンドだよ。」

 僕  :(声にならない声で)「げっ!48ポンドぉぉぉ~」

それでも、最初に98ポンドという数字を聞いたので、なんとなく45ポンドが安く感じられてしまった僕は、アールズコートでの宿探しが面倒になり、そこに泊まることにした。3.7ポンド払って地下鉄で空港からビクトリア駅まで向かい、予約した高い安ホテル?に泊まった。

翌朝は超早起きして5:30に地下鉄ビクトリア駅に向かった。すると、ん?何か変だ。

   え"~!!  

      地下鉄の入り口が閉まってる~!!

どういうことだ!8:30発の飛行機に乗るには、遅くとも6:00にはビクトリア駅を出ていないとまずい。それなのに地下鉄の入り口は鉄格子で硬く閉められ、鍵がかかって入れない。僕はいくつかある地下への入り口をあちこちと片っ端から調べてみたが、どの入り口もことごとく閉まっている。やっと一ヶ所だけ、鍵のかかっていない扉を発見した。。

僕はそこから中にしのび込み、自動販売機で切符を買った。すると。「こら~、入ってはいかん!」と職員に怒られた。

 僕 :「どうして?」
 職員:「今日は日曜だ。早朝の電車はない」

し、知らなかった。ロンドンは日曜日に地下鉄が朝寝坊するだったなんて。

 職員:「地下鉄は7:00からだ。ん?空港行き。それは7:30が初電だ。」
 僕 :「7:30!!!、それじゃ全然間に合わないよ。」

僕は焦った。8:30の飛行機に間に合わない。

 職員:「ならばパディントンへ行け。空港直行の電車がある」
 僕 :「わかった、ありがとう。」

僕は、地下鉄の階段を駆け上がりパディントンへ急いだ。急がなきゃ、急がなきゃ、急がなきゃ~!! 

   「はてな。パディントンってどこにあるのだ?」

僕は完全に冷静さを失っていた。イギリス初体験の僕、当然ロンドンの右も左も分からない。パディントンなる駅はここから北にあるのか南にあるのか。ともかくその辺りの通行人に聞いてみよう。

 通行人:「パディントン? ああ、地下鉄で行きなさい。」

ちょっとまて、その地下鉄が動いてないから聞いているのにぃぃぃぃ。

そうこうしているうちにどんどん時間がたって行く。モタモタしていたら8:30の飛行機は飛んでいってしまう。もはや最後の手段、タクシーに乗るしかなかった。

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結局、なんとかチェックインには間に合ったが、タクシーは42ポンドもかかった。一息したところで、頭の中は自然と一晩にかかったコストを計算していた。ビクトリア駅近くの宿48ポンド+地下鉄往復7.4ポンド+タクシー42ポンド=97.4 ポンド也。ああ、こんなことなら最初から98 ポンドのシェラトンに泊まればよかった。

だいたい日曜の朝は、地下鉄の始発が極端に遅いなんて許せないぞ、ロンドン地下鉄!

僕は急にロンドン地下鉄が腹立たしく感じられてしまった。そしてふと今朝買った未使用の「ビクトリア駅→ヒースロー空港」の切符を思い出した。そうだ、せめてこの分ぐらいは払い戻してもらおうじゃないか。飛行機の出発までにはまだ時間がある。僕は空港の地下鉄駅に向かった。

駅の職員は、まだ街からの一番電車が到着していないのに、ビクトリア駅発の切符を持っている僕を大変怪しい目で見つめていた。

 僕 :「飛行機に間に合わないので、タクシーで来たんだ。
    この切符は使ってないから、払い戻してくれ。」
 職員:「わかった、でもここではできない。」

 僕 :「どこに行けばいいの?」
 職員:「ビクトリア駅で払い戻しできます。」

 僕 :「え“!」

飛行機はあと40分後に出てしまう。もうどうすることもできない。僕はもう2度とロンドンには来るまいと誓ってリスボン便の機上の人となった。

=FIN=


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最終更新:2016年08月27日 16:36