【ガイドブックに載ってない島の旅・アソ―レス諸島】
第6話)運気は上向き?

《ポルトガル|アソ―レス諸島|ファイアル島|サォンミゲル島|テルセイラ島》

サォンミゲル島で2泊した後、僕は次なる島、テルセイラ島に飛んだ。この島にはアングラ=ド=エロイズモという世界遺産の街がある。その昔、世界中の財宝をかき集めたポルトガル船は、本国に向かう前、必ずここの港に立ち寄ったのだそうだ。今でも当時の難破船が見つかると結構なお宝が引き上げられるらしい。

アングラ=ド=エロイズモ(テルセイラ島)
アングラ=ド=エロイズモ-テルセイラ島

テルセイラの飛行場からは例によってタクシーに乗り安宿を紹介してもらう。ガイドブックなし旅のコツもやっとつかめてきた。今回も一泊25ユーロ也の快適な民宿を紹介してもらえた。どうやら宿泊代が高かかったのは最初に訪れたファイアル島だけだったようだ。

アングラ=ド=エロイズモという街の名前は、「エロ」と付くから変なふうに思われがちだが、エロイズモはHeroismoと書く(Hは発音しない)。ポルトガル語のHeroismoは英語のHeroにあたる。つまり英雄の街ということだ。

かつては世界中の富が集まった英雄の街。でも「それって本当?」と思わず発してしまうほど、この街は小さくかわいらしい。狭い入江と岬の先にそびえるブラジル山に抱かれ、500年前から進化をやめてしまったかのような旧市街は、あと数週間でエスピリトサントのお祭りを迎える。イルミネーションで飾りつけられた教会がちらほらと現われ、街は祭りの準備に余念がない。

元は宝島だった世界遺産の街である。この街の博物館にはきっととんでもないものがあるに違いないと、期待を胸に出かけてみた。

アングラ=ド=エロイズモ(テルセイラ島)
アングラ=ド=エロイズモの街

教会を改装した博物館の入り口には、遠く海に向かって砲身を向けた古い大砲が僕を迎えてくれた。さて、博物館の入り口はどこだろう? おや何か看板がある、えーと、むむむ?「祝日は休館」って書いてあるではないか?しまった!今日はポルトガルの祝日だった。

すると入り口に職員らしき人影が現れた。休館日なのになぜだろう?と不思議に思ったが、もしかしたらはるばる東洋からの来きたゲストに「特別に中を見せてあげよう」とでもいうことなのだろうか。

 僕 :「あのう、中に入っていいですかぁ?」

すると嬉しいことに「さあ入れ」と手招きする。

 僕 :「今日は博物館休みですよね。」
 職員:「そうだ、休みだ。」。

 僕 :「中に入っていいの?」
 職員:「いいよ?」

 僕 :「でも、閉まってるんでしょう」
 職員:「そうだ、博物館は閉まっておる」

 僕 :「????」

僕は分けが判らなくなった。どうやら博物館には入れないが、教会の中庭に面した一部屋だけには入っていいようだ。

僕がその部屋の前に立つと、中から子供たちと、オバチャンというには少し言い過ぎだがおねーさんというにはちと無理のあるビミョーな年齢のオバねーちゃんが数人飛び出してきた。そのうちの一人は英語を話す。

 オバねーちゃん:「ようこそ、今日は私たち幼稚園の展示会なのよ。
         まあ日本から!ささ入って入って。」

なんだ、そういうことか!別に幼稚園の展示会を見に日本から来たわけではないのだが、まあ断れる雰囲気でもないので中に入ってみた。

部屋の中には科学の実験を子供たちに楽しく学んでもらうための手作りの仕掛けがいくつもあった。

 オバねーちゃん:「ほら、これは空気の実験なの。この瓶の中に、粉と液体を入れる
         でしょう。そして風船を口にかぶせて瓶を暖めると、」

幼稚園先生の説明に熱がこもる。彼女はガスボンベで瓶を暖めた。すると空気が熱せられて風船がぷわ~っと膨らみ出した。

 オバねーちゃん:「子供はこういうのをとても喜ぶのよ、ほら~」

瓶のなかの粉はベーキングパウダーらしい。缶にそう書いてあったから判る。ところで液体の方は一体なんだろう?疑問に思って聞いてみる。

 オバねーちゃん:「中の液体はワインから作ったの」

次に島の火山のジオラマを見せてくれた。火口部分の窪んでいるところにまたもや変な粉を入れ、そこに一気に謎の液体を注ぎ込む。するとまるで溶岩の噴火のように白い泡がごぼごぼ噴き出してきた。

 オバねーちゃん:「はら~、見て見て、面白いでしょう?」
 僕      :「ええ、ところで、その液体は何?」

 オバねーちゃん:「あら、これもワインから作った液体よ」

さすがはワイン大国ポルトガル。幼稚園ですら授業にワインは欠かせないようだ。あっぱれ。あっぱれ。

ここで僕はふと思った。そういえば知り合いに保母さんをしている人がいる。彼女も子供たちに日本酒で実験を披露しているのだろうか。。。。

オバねーちゃんたちと記念写真
オバねーちゃんたちと記念写真

東洋からの珍客はオバねーちゃんと子供たちの好奇心をいたく刺激したようで、いつしか次々と仲間たちが現れ大記念写真大会となってしまった。僕は、海外ではなぜかおばちゃんに気に入られるだが、今回はオバねーちゃんである。これは僕にとって大変な進歩である。ちょっと運気が上向いてきたような気がする。

(続く)


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最終更新:2016年08月27日 16:31