【ガイドブックに載ってない島の旅・アソ―レス諸島】
第3話)アソ―レス航空のつかの間の夢

《ポルトガル|アソ―レス諸島|ファイアル島|サォンミゲル島|テルセイラ島》

ファイアル島オルタは小さな街だが、そのわりに教会の数が多く、歴史の深さを物語っている。

ファイアル島の小さな教会
ファイアル島の小さな教会

格式高いリゾートハーバーの入り江の対岸には、富士山のような山が海面からニョキッと突き出し、威風堂々そびえたっている。最初その山は同じファイアル島にあるものと思いこんでいたのだが、対岸に見えたのは隣のピコ島であった。ピコ島はファイアル島のほんの目の前にある。そして富士山に似た優美な姿の山こそ、ポルトガル最高峰のピコアルト山だ。

調べてみると両島の間には一日に何本も渡し船があった。アソ―レス諸島間は飛行機じゃないと往来できないと信じていた僕は、この後他の島への移動に既に航空券を買ってしまっていたので、ちょっと悔やしかった。。もし、船で移動できると知っていたなら絶対そうしたのに!そのほうが風情があるし、なにより安上がりだもの。僕は航空券代を損した気分になった。

そんなことを考えつつ、しばしオルタの港を散歩していると急に雲行きが怪しくなってきた。アソ―レスは結構小雨が多い。程なく雨は大粒になり、海原に無数の波紋を打ちつける。これはたまらん。ぼくは適当な家の軒下で雨宿りをする。

10分もすると雨は小降りになった。気づくとすぐに太陽がまばゆく照り出し、辺りはうっすら湿気を帯びてきた。僕はふと港の方に視線を向けた。するとどうだろう。対岸のピコアルト山を背景に、海原から大きな大きな虹がかかっているではないか。なんと幻想的な光景。島の神様が恵んでくれた素敵なプレゼントだ。

ピコアルト山にかかる虹-ピコ島
ピコアルト山にかかる虹-ピコ島

ファイアル島、ここは旅人の心に優しい島のようだ(でも、フトコロにはぜんぜん優しくなかったけど、、、)。

☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

翌日、次なる目的地のサォンミゲル島へ向かう。ファイアル島の空港を飛び立つとすぐ、アソ―レス航空の小さなプロペラ機はピコアルト山のそばを通過して行く。プロペラ機なのでスピードもゆっくり、かつ高度も高くないので、万年雪をいだくポルトガル最高峰の雄大な眺めが、左側の窓から満喫できる。

「OH~!」何人もの観光客から歓声があがる。すると、まだシートベルト着用サインが消えてもいないのに、乗客たちが勝手に左側の席に移動し始めた。 

「あっ!」 一瞬飛行機がバランスを崩し、左に傾いた!(冷汗)

いや、傾いたような気がしただけであった(ホッ)。

アソ―レス航空の機内誌をパラパラめくって路線図を眺めてみると、生意気にも「普通のアソ―レス航空」と「アソ―レス国際航空」の二つの会社に分かれていた。島と島の間は「普通」の方が飛んでいる。

では「国際」の方は?と路線図をみてみると、ポルトガル本土とを結んでいるだけではないか。どこが「国際」なものか!いや待て、アソ―レスの島民にとっては本土も十分「国際」なのかもしれない。「普通」の方の小さなプロペラ機に乗っていると、その感覚もなんとなくわかる。

こんなちっぽけなアソ―レス航空だが、一人前にマイレージプログラムなんぞも用意している。僕は変な航空会社のマイレージカードを集めている。もちろんこれもコレクションの一つに加えることとした。アソ―レス航空史上(たぶん)初めての日本人会員の栄誉をゲットしたぞ。ふふふ。

ポルトガル語オンリーのパンフレットにはいったい何が書いてあるのか謎だらけではあるが、どうやら「わずか5000マイルで無料券がもらえる」となっているようだ。「5000マイルでタダ券!」と一瞬驚いた。こんなイージーなプログラム見たことない。僕ははやくも無料券分得した気分になっていた。

だがちょっと待て。5000マイルのタダ券は島と島を結ぶ最も短い区間のしかも片道のものであった。そのためには、短距離路線がほとんどのアソ―レス航空を、少なくとも20回くらい(推定)は乗らなければならない。

世の中に甘い話はない。

初めての日本人会員の栄誉は簡単にゲットできたが、初めての日本人タダ券獲得者の栄光ははるか彼方の幻。僕はまたしても航空券代を損した気分になった。

アソ―レス航空のプロペラ機
アソ―レス航空のプロペラ機

眺めは抜群、スリルもちょっと味わえるアソ―レス航空は、つかの間の夢だけを僕に与えて、サォンミゲル島に着陸した。さて次なるこの島ではいったい何が待ちうけているのだろうか。

(続く)


もどる < 3 > つぎへ



ヨーロッパ ※最高10000ポイントですよ!


最終更新:2016年08月27日 16:34