【イラン、ここは本当に悪の枢軸国?】
第3話)マライアの世界遺産

《イラン旅行記|ゴム|マライヤ|エスファハーン|テヘラン》

ひょんなことからイランの一般家庭、アリさん宅に泊めてもらった僕。翌朝アリさんは仕事があるので、同僚のモハメドさんに車を出してもらいバスターミナルまで送ってくれた。ペルシャ語に不案内な僕のためにバスの切符売り場を案内してくれ、本当に至れりつくせり。

 「ミスター、ぜひまたマライヤに来てくれ。」

アリさんは名残惜しげにそういうと最後に別れの挨拶。イラン風に僕の両頬にキスをする。あわわわ、ヒゲが痛いぞ、アリさん!でもこれだけ親切にしてくれたのだからやはり日本男児としては礼を尽くさないといけない。ううーん、しかたがない。僕もアリさんにイラン式挨拶をした。あちち、やっぱりヒゲが痛いぞアリさん!でもアリさんの親切、一生忘れないよ~ん。

さて、マライアからはエスファハーン行きのバスが出ているのだが出発は昼の12時。今はまだ朝9時だ。ちょっと時間が余りすぎている。ターミナルの売店でタバコを買うと、僕は乗り合いタクシーで一旦街の中心に戻って時間をつぶすことにした。昨日は気がつかなかったが、マライヤは山裾の落ち着いたきれいな街である。

マライアの北50kmほどにはガイドブックにも載っている大きな街ハマダーンがあった。ハマダーンにやってくるツーリストは多少いるようだが、ここマライヤでは一人も見かけない。ましてや東洋人ともなるとよほど珍しいのであろう。バザールをぶらり写真を撮りながら散策していると、次々と人が集まってくる。撮ったデジカメ画像をその場で再生すると「さすがはメイド イン ジャポン!」と皆感嘆する。

ある人に、靴職人の長老の写真を撮ってくれと頼まれる。自分のデジタル再生画像を長老は興味深げにいつまでも見つめていた。

昼前、僕はバスターミナルに戻った。朝タバコを買った売店でお菓子でも買い込もうと思った。店主はペルシャ語で「おう、また来たのか?」とでも言ったのであろう。「まあここに座って茶でも飲め」と僕をベンチに座らせチャイを振るまう。僕はお店のお菓子ととともにチャイをいただく。むろん菓子代は払うつもりだ。「日本からきたのか、よく来たな」とでも言ったのだろうが、何せ相手は一切英語がわからないし、こちらはこちらでペルシャ語のぺの字すらわからない。ともかくガイドブックの会話ページを見せ合いながら暫く変な会話をしつつお茶をご馳走になる。

「さあ、そろそろ時間だから」と僕はお店のお菓子代を払ってバスに乗りこもうとした。すると、店主は売物であるはずのお菓子の代金を受け取ろうとしない。そればかりか、店主は自分の電話番号を書いて「電話しろ」と言う。いったい電話したところでお互い言葉もわからないのにどうやって意思が疎通するのか定かではないが、ともかく店主は外国からの珍客に大喜びだった。

ガイドブックに載っていない小さな山間の街、マライア。そこには観光名所などひとつもないが、世界遺産に認定したいくらい純朴な人たちがいっぱいいる街だった。

(続く)


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最終更新:2016年08月27日 10:11