【やっぱりボラれた-ベトナム旅行記】
第5話)犬は産直に限る

||ベトナム旅行記|ハノイ|フエ|ホイアン||

ハノイでは犬が食べられるという。僕は未だ犬を食べたことがない。これはぜひトライしなければならない。犬料理はハノイの郊外を北に行くと食べられるらしいのだが、具体的な住所がわからぬ。ガイドブックも地図の端に「この道を2kmほど進むと犬料理のレストラン街 → 」とあるだけ、要は街の外れということだ。

僕は意を決っして自転車で探しに行く事にした。

割と広いギータム通りをえっちらおっちら、左手にタイ湖を見ながら進む。湖を過ぎると、田園と住宅が混在してくる。このあたりの住宅は3~4階立ての大きなものが多い。シルエットは中華風だが、壁はフランス風で、色使いがパステルカラーと、要は出来損ないのラブホテルのような住宅が続く。

だんだん、住宅が少なくなり、田園風景が多く入り混じってくる。でもいったいどこに犬料理屋があるというのだ。

やがて、辺りの風景がさびしくなり、道が土手の上を大きく左にカーブするあたりに、粗末な食堂が数軒建ち並ぶのが見えてきた。食堂というか、作りは日本の海の家のそれである。

ここが犬料理屋なのだろうか?

看板には「… THIT CHO …」とある。僕は買ったばかりの「旅の指差し会話帳ベトナム」を取りだし、意味を調べてみた。

 THIT … 肉
 CHO … 犬 

そうだ、ここに間違いない。

犬料理レストラン
発見!犬肉料理レストラン

このあたりの犬料理屋は土手の片斜面に半高床式で建っており、道路に面した入り口は1階のように見えるが、実際は高床式の2階である。

さすがにここまでくると店員には英語もフランス語も通じない。メニューもベトナム語オンリーだ。ともかく身振りでオーダーする。が、いったい何が出てくることやら、、、というより自分でも何をオーダーしたのか解らない。

やがて、ソーセージとゼリー固めの肉のスライスが出てきた。これが犬料理か?
おそるおそる箸を出す。

 「う、臭い」

犬肉、それは特に最初の口当たりがなんともいえず強烈である。周りではベトナム人の家族連れが美味しそうに箸をつついているのだが、どうも僕の口にお犬ちゃんは合わないようだ。

とはいえ、この国の食文化を一介の外国人が露骨に否定するような様は見せられない。僕は日越文化摩擦を回避する指命に燃えて、香草とまぶして何とか食べ終える。

 「やっと食べ終えた、ふぅ」

と思ったら、もう一皿でてきた。今度はから揚げだぁ。こんなもん頼んだっけ? でも出されたからには頼んだのだろう。これも一見普通の肉に見えるのだが、やはり独特の臭みがある。しかし日越友好のためにもう一踏ん張りする。

そして、何とか全部食べ終えたその時である。

 「キャイーン!」

高床式の床下から犬の悲鳴が聞こえた。

どうやら僕は産地直送の大変新鮮な犬肉を賞味していたようであった。

(続く)


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最終更新:2016年08月19日 00:05