【やっぱりボラれた-ベトナム旅行記】
第7話)古都フエのボートツアー

||ベトナム旅行記|ハノイ|フエ|ホイアン||

ハノイからの夜行列車は、翌朝ベトナム中部の街フエに到着した。フエはグエン王朝の都が置かれた古い都だ。たおやかなフォン河を挟んで旧市街と新市街に分かれている。さっそく旧市街の王宮へ行ってみた。橋を渡り広場を過ぎると王宮の入り口だ。広大な敷地の中に王宮はひっそり佇んでいた。

フエ王宮
フエ王宮

残念なことに、王宮内の建造物はほとんど残っていない。あのベトナム戦争でこの王宮がそのまま戦場となり、現存する建造物は僅かしかない。優雅で壮大な全容は館内の模型で想像するしかない。

しかし、時が止まったようなその空間の居心地のよさは十分に訪れるに値する。

翌日はボートツアーで郊外に点在する寺や廟を巡ることにした。ベトナムの観光地にはこの種の安いツアーが充実している。このツアーもランチ付きでたったの3ドルである。(ただし、寺や廟への入場料と、船付き場から見所までのバイクタクシー代は別)

朝8:00、小さな船は河をゆっくり遡り始めた。船には15、6人の外国人観光客が乗っている。この船の客室乗務員は推定年令6才の女の子だ。名前は確かユンちゃんだった思う。

このユンちゃん、仕切りがすごい。小さな船はちょっとでもバランスを崩すとすぐ傾いてしまう。巨大な西洋人観光客が一方に集まると危険だ。ユンちゃんの罵声がとぶ。「おまえ、こっち。あんたはそっち!」 身長120cmに満たないユンちゃんの命令に180cmを超える大男がすごすごと従う。たいした子供である。

10分ほど進むと船は辺鄙な川岸に接岸した。おいおい、ここには何もないだろう。するとユンちゃん、ひょいっと船を下りて、岸辺の民家に隠れてしまった。

 船頭:「彼女はちょっくら朝飯食べてくるから、ちょっと待ってろ。」

この船では誰もユンちゃんに逆らうことはできない。大の大人15人はお姫様のお食事が終わるのをひたすら待つことになる。

再び船は出発する。船内では乗船客名簿が配られ、自分の名前を記入していく。最後に僕のところに名簿が回る。僕は自分の名前を記入しようとすると、ユンちゃんに止められた。

 ユンちゃん:「あんたは書いてはだめ」
 僕    :「どうして」
 ユンちゃん:「あんたで乗客16人になるから。この船15人乗りなの」

というわけで、定員オーバーにつき僕は存在を抹消されることに相成った。

 僕    :「それなら値段はタダかな~?」

するとユンちゃんは「だったら降りればぁ」と言うかわりに船の外を指差した。

  ユンちゃん、すいません。僕が悪うございました~。

一時間ほど河を遡ると船ははやがてカイディン帝廟の入り口の船着場に到着した。ここからはバイクタクシーで帝廟に向かう。片道2万ドンだ。ややぬかるんだ山道をバイクタクシーは慎重に道を選びながら進む。途中起伏の激しい所もあり、ちょっとしたスリルが楽しめる。

カイディン帝廟
カイディン帝廟

さあ帝廟についたぞ。僕は2万ドン札を運転手に渡す。 運転手はひったくるようにお札を受け取る、そして

 運転手:「ユー、ちょっと待って」
 僕  :「??」
 運転手:「これ5千ドン札ね」
 僕  :「あーごめん間違えたぁ」

ベトナムの2万ドン札と5千ドン札はともにブルーのインキで印刷されてるので、非常に紛らわしくて間違えやすい。僕は今度はしっかり確かめて2万ドンを支払った。

帝廟はしっとりと落ち着いていいところである。山中のハス池がとても優雅だ。同じツアーの旅行者と言葉を交わす。

 僕  :「やーさっき、僕、お札を間違えて渡しちゃったよ。」
 旅行者:「君ね、それ、とても古典的な手にあったんじゃない」
 僕  :「あうっ、あうっ」

そうか。やられた。2万ドン札をひったくるとすかさず手持ちの5千ドン札にすりかえたのだな。くやしい~!

案の上、帰りのバイクタクシーも「これ5千ドン札ね!」とやってきた。さすがの僕も二度は騙されない。(しかし、こんな古典的な手に一度でも引っかかるとは我ながら情けない。)

ミンマン帝廟
ミンマン帝廟

トゥドゥック帝廟、ミンマン帝廟、ホンチェン殿、ティエンムー寺とボートは進む。バイタクの洗練されたテクニックにはまったことを除けば、楽しい船旅であった。

(続く)


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最終更新:2016年08月19日 00:10