【おんぶにだっこ・マダガスカルの旅】
第7話)マダガスカルの珍獣様

《マダガスカル旅行記|モロンダヴァ|アンタナナリヴ|ペリネ自然公園》

マダガスカルは珍獣の宝庫である。ものの本によると、何億年も昔にアフリカ大陸から分離したため、動植物が独自の進化を遂げた結果、この国にしか生息しない固有種が無数にあるそうだ。だからといってその辺の野良犬のように珍獣様が街中を闊歩しているわけではない。珍獣様を拝むには、自然公園へお参りに行かねばならないのだ。

変な動物たちはマダガスカル最大の観光資源となっている。そして、たいていの観光客は真っ先に自然公園へ巡礼するのがお約束なのだが、僕の場合、なぜか珍獣参りは一番最後になってしまった。

朝7時、リヴァさんたちの車が僕の宿に向かえに来てくれた。車は、昨日苦労してたどり着いたアンブディブナ・バスターミナルをさっさと通り過ぎ、一路ペリネ自然公園へと向かった。

ペリネはマダガスカル随一の自然公園というわけではない。本格的なのは、別行動でリヴァさんたちが昨日まで訪れていたベレンティだ。車内ではA美さんがベレンティで撮った横っ飛びサル・シファカのデジカメ動画を自慢げに見せてくれた。両手を挙げてカニのように飛び跳ねるさまは見ていて可笑しい。デジカメには目玉の大きな小猿やら、ヘンチクリンな爬虫類やら、なんか宇宙生物みたいな画像が一杯詰まっていた。

ペリネ自然公園入口
ペリネ自然公園入口

3時間ほどするとペリネ自然公園の入り口に到着した。だが空模様が少々あやしい。入園料を払うと公園のガイドが僕らを森の中へと案内する。始めは遊歩道だった自然公園だが、中に入るにつれ道は獣道へと変わっていった。

「ほら見て御覧なさい」、ガイドは小枝を指差した。なぁんだ、ただの小枝じゃんと思ったら、それはそれは小さなカメレオン君であった。ガイドさんの視力は尋常ではない。小指の先ほどの小さなカエル君だって見逃しはしない。さすがぁ、と思っているうちに、木の葉がパサパサ言い出し、雨が降り出した。いつしかペリネの森は小雨に取り囲まれてしまった。僕らは傘やらカッパを思い思いに取り出し始める。

それはそれは小さなカエル君
それはそれは小さなカエル君

小一時間ほど雨中の森を散策するが、未だ大型の珍獣様にはお目にかかれていない。せっかくマダガスカルに来たのだから、せめてそれらしき動物は見ておきたいものだが、今はもうお昼前である。実は珍獣様は早朝でないとなかなかお目にかかれないシロモノなのだ。ちょっとがっかりの気だるい雰囲気が僕らを取り囲んでいた。

そんな我々の空気を察したのだろうか。ガイドさんは獣道を外れて生い茂る潅木の中へ僕らを誘うと、一本の木の下に止まった。「ほら、上を見て御覧なさい」、小雨の中はるか高い木の上を見上げると、木の枝にしては大き過ぎる物体が所在なさげに佇んでいた。

 「何よ、あれ?」
 「よくわかんないけど、写真を撮っておこう」
 「ああ、何か落ちてきた」

ボタボタと落ちてきたもの。それは紛れもない珍獣インドリ様の雲古であった。

珍獣インドリ様 ペリネ自然公園・マダガスカル
珍獣インドリ様

結局ペリネの森で拝めたのは、インドリ様のお尻と雲古だけだった。一通り散策を終えた我々は、近くのアンダシベ村で遅い昼食をとり、夕方アンタナナリヴに戻った。

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思えば6日間の旅のうち4日もリヴァさんたちのお世話になってしまった。最後のツアーも僕の泊まっているホテルまで送ってもらい至れり尽くせり。リヴァさん本当にありがとう。僕らは固い握手をして別れを惜しんだ。

翌日、早朝のマダガスカル航空便でこの国を離れた。機内ではご丁寧にも映画「マダガスカル」が上映されていた。ちょうど日本公開2日前なので、いち早く見届けて誰かに自慢してやろう。どれどれ、あれ、音声仏語で字幕は中国語じゃないか!これじゃお手上げだぁ。残念。

実は僕、この映画には大変迷惑をこうむっていた。旅の下調べにネットを検索してたころ、「マダガスカル」と入力してヒットするのはこの映画の事ばかり。まあスピルバーグ率いるドリームワークス制作の話題作だからしかたないのだが、、、

などと思っていたら、ふと気が付いた。ハリウッド映画の宇宙人キャラって、マダガスカルのキツネサルやカメレオンによく似た顔が多くない?これってもしかしたら珍獣様の肖像権侵害じゃないか!

マダガスカル政府よ、訴えてやれ。そして今すぐハリウッドに請求書を送りつけるのだ。そうすれば国ももうちょっと発展するかもしれないぞ!…でもマダガスカルフランだと0が1万光年あっても、たいした金額にならないか。

=FIN=


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最終更新:2016年08月27日 16:10