【おんぶにだっこ・マダガスカルの旅】
第3話)星に願いを!
《マダガスカル旅行記|モロンダヴァ|アンタナナリヴ|ペリネ自然公園》
ひょんなことから知り合ったリヴァさんたちとオンボロ・プジョーのタクシーで空港から海辺のバンガローに向かった。初めて見るこの国の台地は意外にも水田が多いのでちょっとびっくり。
ここモロンダヴァはリヴァさんが高校時代まで過ごした街で、親戚や友達がいっぱいるという。今日連れてってもらう宿も彼の友人が経営しているバンガローだ。到着するとさっさと値段交渉もしてくれるし、むろんタクシー代だって彼がてきぱきとまとめてくれた。いいのかな、こんなに楽しちゃって。「じゃ、お昼をたべたら、バオバブ街道に行きましょう」とツアーの手配もおまかせ~。
バオバブとはアフリカに生える木の名前である。巨木がスクッと天に向かって伸びたかと思うと、頂上の辺りだけ根っこを逆さにしたようなくしゃくしゃの枝を広げる奇妙な形が特徴で、横っとびのサルと並んで、マダガスカル観光パンフレットの表紙を飾るこの国有数の観光資源だ。だからと言ってマダガスカルならどこでも生えているというわけではない。とりわけ並木道ができるほど群生しているのはここモロンダヴァ郊外の一部の地域に限られる。2台の車で僕らは通称アベニュー・ドゥ・バオバブと呼ばれる一帯へ向かった。
僕の車の同乗者はC恵さんとシンガポール在住OL・A美さんだ。
「あなた、バンコクから来たでしょう。あたしシンガポールからバンコク経由で来たから、
空港で見かけたわ。」
「それだったら、声の一つでもかけてくれれば良かったのに。」
「でも、あなた日本人には見えなかったのよ。」
日本人には見えない?でもそういうA美さんだって、、、
「あたし高校のときマレーシアに留学してたの。おかげで英語はそこそこできるけど、
マダガスカルは英語通じないわね、、、、、」
マ、マレーシア留学とは恐れいりました。実績から言ってもA美さんの方が非日本人度は筋金入りじゃないですか。というか見た目シンガポール系マレー人と言われても納得してしまうほどなんですけれどねぇ、、、でも、そんなA美さんに「日本人に見えない」と言われてしまう僕っていったい何なんだろう?
郊外へと向かう道は徐々に舗装がはがれ、やがて土埃のたつオフロードに変っていった。ぽつりぽつりと姿を現しだしたバオバブの木はだんだん密集して生えてくる。しばらくすると道の両脇をずらりとバオバブの木が取り囲むアベニュー・ド・バオバブに到着した。僕らは車を降り、街道を散策する。
観光客を乗せたバンやタクシーがぽつぽつアベニューに集まってくる。すると現地の子供たちがどこからともなく現れ、写真を撮ってもらうわ、勝手に手をつないで歩きだすわと、観光客は子供たちの格好のおもちゃと化していった。
夕暮れが近づくにつれバオバブの巨木に夕日があたり、景色は美しく変色して行く。やがてあたりは夕闇に包まれていった。
車で街に戻るころ、街灯のほとんどないここモロンダヴァの夜空は満天の星で埋め尽くされていた。僕らはバンガロー脇のビーチで星空を眺めに行った。天の河って途方もなく大河だったんだぁなんて思っていると、スッーと流れ星が漆黒の空にきらめいた。
「はら、願い事を3回、唱えなきゃ。」
「あ、流れた!えーっと願い事、願い事、ああ消えちゃった。」
星が流れるほんの一瞬に3回も願い事を唱えるのはとても難しいことだと初めて判った。見つけた!と思ったとき流れ星はもう跡かたもなく消えている。相当な反射神経が要求されるのだ。リヴァさんも女性陣4人もなかなか上手くいかない。
僕はふと裏山の方に目をやった。あっ流れた、今だ!全速力で叫べ!
「カネカネカネ~」
やった成功だ。見事消える前に唱えられたゾ。大金持ちになれるかしら、ふふふ。
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マダガスカルの海岸で叶えたはずの僕の願いは、帰国した今も一向に実現する気配を見せてくれなかった。
いや、ちょっと待て、留守中にスーパーの懸賞で洗剤セットが当たってたではないか!マダガスカルで掛けた願いは、叶うのもマダガスカルフラン基準なのかぁ!
最終更新:2016年08月27日 16:09