【おんぶにだっこ・マダガスカルの旅】
第5話)アリアリとマダガスカルフランと

《マダガスカル旅行記|モロンダヴァ|アンタナナリヴ|ペリネ自然公園》

モロンダヴァで2泊した後、国内線で首都アンタナナリヴに戻る。リヴァさんたち一行も偶然同じ旅程だった。まあ一日一便程度しかフライトがないから自然と日程は同じようになるのだが、、、 アンタナナリヴの空港ではリヴァさんの弟が車で迎えに来てくれていた。市内に向かう途中で、ワニ園やマーケットに寄って、ここでもまたおまかせコース。マダガスカルに来て3日が経つというのに、未だ自分で値段交渉を一度もやっていない。パックされた旅行って本当に楽チンだ。

楽なんだけど何かちょっともの足りなくもある。地元の人たちがどんなものを幾らで飲み食い買っているのか実感できないと、なんかその国に来た気がしないなぁ。

翌日リヴァさんたちは、横っ飛びサルで有名なベレンティ自然公園に行くためフォール・ドーファンに向かって、またもや国内線で飛び立っていった。3日後に再会する約束をして、ここからしばらくは僕一人だ。あまりボケッとしていると痛い目にあうゾ。さあ気合を入れて、アンタナナリヴを探索だぁ。

51欧州のように見えるアンタナナリヴの街
欧州のようなアンタナナリヴの街

田舎のモロンダヴァと違いアンタナナリヴは大きな街だ。仏植民地の首都だったため街の造りもおフランスしている。走っている車もルノーやシトロエンといったフランス車ばかり、といっても博物館クラスの年代物ばかりではあるが、逆にマニアなら堪えられないに違いない。

仏のクラシックカーが現役だ2-アンタナナリヴ
仏のクラシックカーが現役だ
仏のクラシックカーが現役だ-アンタナナリヴ

ともかく、この街の写真から地元民の姿を消したら誰もがヨーロッパと答えるはずだ(否、最近は欧州もアフリカ系の人がいっぱい住んでいるから、写真を修整する必要もないかもしれない)。アンタナナリヴは2つの丘に囲まれた街なので、やたら坂が多い。何かどこかで見たことあるようなノスタルジックな空気感、、、そう、この坂道の雰囲気、これはポルトガルのリスボンにそっくりじゃないか。

などと思いつつ街中を散策する。しばらく西の丘を歩くと見晴らしのいい公園に出くわした。ここからは反対側の東の丘が一望できる。そしてこの公園から階段状の坂道が谷底の大通りに向かって一直線に伸びている。大通りを突っ切った延長線上には、東の丘を真っすぐに駆け上る登るもう一方の階段道に繋がっていた。ここが有名なアンタナナリブヴの階段マーケットだ。

アンタナナリヴ名物・階段マーケット2
アンタナナリブヴ名物、階段マーケット
アンタナナリヴ名物・階段マーケット

階段の両脇にはカラフルなパラソルが思い思いに並び、野菜や魚、携帯電話からガラクタまで、雑多な個人営業の屋台が軒を並べ活気に満ち溢れていた。おや?この屋台は何を売っているのだろう。白くて丸い小さな塊は何だ?と思って近づいてみるとナチュラルチーズだった。アンタナナリヴ周辺の高地は酪農が盛んなようだ。南国でチーズとは意外だが、うまかった。

ナチュラルチーズ-階段マーケット
階段マーケットではナチュラルチーズも売っている

階段マーケットではカフェをすする人をよく見かける。僕もちょっと一杯飲みたくなった。でもコーヒー売り場なんて見当たらない。どこで売っているのだろう。近くの人に尋ねてみると、「そこだ」と坂道の真ん中を指差す。

えっ?何もないじゃないか。

あれ、でもヤカンが一個ぽつりと置いてあるぞ。するとガキンコがやってきてヤカンからコーヒーを注いで差し出した。アンタナナリブヴのスターバックスはヤカン一丁で勝負しているのだ。

アンタナナリブヴのスターバックスはヤカン一つで勝負
アンタナナリブヴのスターバックスはヤカン一つで勝負

こうして庶民レベルの買い物をしているうちに気がついたことがある。マダガスカルの通貨はアリアリとフラン(マダガスカルフラン)の2本建てで、フランはアリアリの5分の1の価値しかない。つまり100フランは20アリアリに過ぎないのだが、ホテルやツアー、レストランといったところで僕が支払ったのはいずれもアリアリだった。この国の通貨はアリアリで統一されつつあるのだろうと僕は思っていたが、それは大間違い。この階段マーケットのような庶民の世界では「これいくら?」と尋ねると「100フランさぁ」といった具合に例外なくフランで返ってくる。

どうやらこの国では、アリアリで生活している人の世界と、その5分の1の価値しかないフランレベルで生きている人々の世界があるようだ。そしてその二つの世界はなかなか交わることがない。だから2つのお金が別々に使われている。ということのようだ。

アリアリ札とフラン札を見分けるのは、慣れると実はそれほど難しくない。新しく発行されたアリアリ札はパリッとして印刷も鮮明だが、フラン札といったらもう、どれもこれもしっとり薄汚れて茶色く変色している。なんだか2つの階層の生活レベルをそのまま表しているようでちょっと物悲しい。

夕暮れまで坂道の多い街中を散策した。そろそろ宿に帰ろう。最後に僕は1軒の立ち飲みコーヒースタンドに寄った。むろんこの手のお店はアリアリではなくマダガスカルフランで支払いだ。甘いお菓子と苦味の効いたブラックコーヒーで疲れを癒していると、子供が二人が寄ってきて、僕をつついて現地語で何か言っている。それを見たスタンドの店員は大声を上げて子供たちを蹴散らした。

「あの子たちは何と言っていたの?」子供たちの現地語が判らなかったので僕は仏語で店員に尋ねてみた。すると店員は顔を曇らせて、一言ポツリとつぶやいた。

 「Fain(ファン)!」

ファン、すなわち空腹。

この国にはアリアリ経済はおろか、フランレベルの生活にも属せない人たちがいる、、、、、。

(続く)


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最終更新:2016年08月27日 16:09