【アミーゴの国を行く・メヒコ旅行記】
第6話)伝統漁法の獲物

《メキシコ旅行記|グアナファト・ケレタロ・モレーリア》

ケレタロを後にして、今度はこれまた世界遺産の街モレーリアにバスで移動する。この街を拠点にして近郊のパツクアロ湖に浮かぶ不思議なハニッツィオ島を訪れてみる。

モレーリアからパツクアロ村まで、ローカルバスに揺られて1時間。さらに村からボート乗場まではミニバンを改造したタクシーバスで約15分。ここからエンジン付きボートで島へ渡る。

ボートには観光客が多く乗船していた。島に住む少数民族の女性も乗り込んで伝統工芸の刺繍に余念がない。程なくボートが動き出すと居合わせたギター楽団4人衆が生演奏を始めた。メヒコはいたるところで音楽にあふれている。それも全て生演奏だ。

ボートに乗り込む楽団
渡し舟で営業中の楽団

5分もすると島の全容が見えてきた。島には山頂まで家々がびっしりと張り付いている。島の中で暮らす少数民族の家だ。それにしても、なんだこの島の格好は!山頂には巨大な独立運動の英雄像が建っていて、右手を高々と上げているのだが、その手の上げ方が妙に直線的でウソ臭い。

湖に浮かぶ不思議なハニッツィオ島
不思議なハニッツィオ島

島の船着場付近はカフェやらレストランで賑わっていた。ここから山頂の銅像まではちょっとした坂道を登ることになる。さあ気合を入れて登ろう!

ハニッツィオ島の食堂
ハニッツィオ島の食堂にて

狭い坂道の両脇は土産物屋でびっしり。これはどこかで見た風景だな。そうだ、湘南の江ノ島と一緒ではないか、などと思っているうちにちょっと意識が朦朧としてきた。そうそう、この辺は実は標高2000メートル以上ある高地なのだ。酸素が薄いのである。坂道にちょっと息が切れてきたのとあいまって、なんだかボーとしてきた。おや、この土産物屋の人形は妙に大きくてリアルだなと感心したら、それは土産を売ってる民族衣装のおばちゃんだった。なんだか人形と人間の見分けが付かなくなってきた。大丈夫か、僕。

ともかく20分ほどで山頂にたどり着くと意識もクリアになってきた。山頂は公園になっていて、しっかり入場料をとられた。だがそこから一望できる湖の風景はなかなかのものである。まったりとした一時をそこで過ごして、再び坂道を降り、帰りのボートに乗る。

ボートは島をゆっくり離れる。島の周りには地元漁師が伝統漁法の仕掛け網で魚を獲っていた。我々のボートは漁師たちの近くを超スロー運転で近づき観光客にシャッターチャンスを提供すると、もの珍しさも手伝って、シャッターがあちこちで切られ、しばしのフォトセッションが続いた。

パツクアロ湖の漁民
パツクアロ湖の漁民

それが一段落すると、今度は漁民たちの手漕ぎ舟がこちらに向けて一斉に近寄って来た。そして手漕ぎ船を我々のボートに接岸し、ついにはこちらのボートに乗り込んで来て、観光客からモデル料を徴収し始めた。そうか!伝統漁法の獲物は魚ではなかったのだ。我々人間こそが獲物だったのだ。もちろんおいらも餌食になったのは言うまでもない。

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モレーリアの街に戻るともう陽は暮れていた。パツクアロ村やハニッツィオ島に比べたらモレーリアは巨大な都市に見える。荘厳なカテドラル前の中央広場は、巨大な屋外ダンス会場となっていた。生バンドの演奏に会わせて、老いも若きもラテンのリズムに合わせて、くるくる回って踊っている。なんかとても平和だ。

モレーリアのカテドラル
夜のモレーリアのカテドラル

あ、ちょっとお金が足りなくなってきた。ちょっくらATMでお金を引き出すか。

オープンテラスのレストランが立ち並ぶ目抜き通りにキャッシュディスペンサーのサインが見えた。テラスでは大勢の人々が優雅に食事を楽しんでいた。そのテラスの奥にあるATMのガラス戸を開けようとして、僕はギョッと足が立ちすくんでしまった。

 ホームレスが、そのATMブースを住処にして寝ていたのだ。。。

そんなところを寝床にされてはたまったものではないが、わずか5m離れたテラス席にある優雅な時間と、このブースを住処としなければならない人生とを隔てているものとは一体何なのだろうか、、、、

(続く)


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最終更新:2016年08月27日 16:53