【アミーゴの国を行く・メヒコ旅行記】
第1話)安ホテルの予約

《メキシコ旅行記|グアナファト・ケレタロ・モレーリア》

国際線2本と国内線1本をぶっ通しで乗継ぎ、深夜のレオン国際空港にたどり着いた。成田から約20時間、エコノミーシートの狭い空間に閉じ込められていたのと時差ボケとで意識は朦朧としている。

記念すべき初メヒコの旅は、ここから車で小一時間ほどのグアナファトの街から始まる。だが、到着したとたん僕のあらゆる思考回路は停止していた。誘われるままタクシーカウンターに並び、言われるまま300ペソのタクシーチケットを買う(因みに為替レートはだいたい1ドル=10ペソ=100円とわかり易くて大変よろしい)。

グアナファトの街
グアナファトの街を目指す

深夜の到着は予め分かっていたことだ。何事も事前の準備が肝心である。出発前にめぼしをつけた一泊300ペソのホテル・ミネイロには予約のメールを入れておいた。ただ気がかりなのは、予約がスペイン語サイトからだったことだ。スペイン語のスの字も知らない僕は「Nombre」の欄に「いったい何のナンバーを記入すればいいのだろう? パスポート番号かな?」などと真剣に悩んでしまった。「Nombre」が「名前」という意味だとは、後でスペイン語に明るい知人から聞いたのだが、その時は夢にも思いつかなかった。

そんな僕のうそ臭い予約メールに対し、当然のことながらホテルから予約確認メールなど来るはずもない。まあ、行けばなんとかなるだろう。僕はネットから印刷した地図をタクシードライバーに渡すと直ぐに寝込んでしまった。

ゴトゴトと小刻みに車が揺れる。車はグアナファトの旧市街に差し掛かっていた。石畳に車が進入した瞬間の振動で僕は目を覚ました。ホテルの地図と窓の外を睨めっこしながら目指す今夜の宿を探す。タクシーは狭い車道を左に曲がろうとした。ちょっと待て!右に見える建物がホテル・ミネイロじゃないか!僕はタクシーを止めさせ「空き部屋があるか確認するから待てって」と身振りでドライバーに伝えフロントに向かった。

「セニョール、今夜は一泊700ペソの3人部屋しかございません。」とフロントは言ってるようだった。やはり事前の予約メールなど何の役にもたっていない。しかたなく「どこか高くない宿に連れっておくれ。」とそどろもどろのインチキ語でタクシーの運ちゃんにお願いして、何軒めかのホテル・レフォルマにようやく空き部屋が見つかった。もうどこでもよい。熱いシャワーを浴びて早く眠りたい。僕はここにチェックインすることにしたが、通された208号室は窓もない物置のような部屋だ。おや何だ!この部屋は内側から鍵がかからないではないか。

僕はフロントの親父に文句を言うと、親父は「OK、OK」と内側の鍵の閉め方をデモストレーションしだした。驚くことにその部屋の内側ははるか天井近くに鍵があって、机に昇らないと鍵に手が届かない。どーしてそんな変なところに鍵があるんんだ。面倒くさいじゃないかぁ。

 「ところで親父。ここは一泊幾らなんだっけ?」
 「100ペソでっせ。セニョール。」

「100ペソ!」嫌な予感がした。約1000円と安いのはうれしいのだが、この値段だと設備には期待するほうが間違っている。僕はシャワーのお湯の栓を恐る恐るひねってみた、淡い期待を込めて。でも、当然のごとくお湯など出てくるワケがない。ああ!もういい。僕はシャワーをあきらめベットに仰向けに寝転がった。そして気づくと僕はひたすら泥のように眠りに入っていた。

(続く)


もどる < 1 > つぎへ




最終更新:2016年08月27日 16:56