【ウエストコーストの旅(カンボジアのだけど...)】
第7話)噂の北朝鮮レストラン

《カンボジア旅行記|ココン|コンポンソム|シアヌークヴィル|プノンペン》

さて、プノンペンではどうしても押さえておかねばならないスポットがあった。北朝鮮国営レストランである。なぜそんなものがプノンペンにあるかというと、実はカンボジアはあの共和国と国交があるのだ。そして外貨獲得に努めよ!と将軍様の命を受けた美女軍団がカンボジアに派遣されツーリストのフトコロを狙っているらしい。

しかしそのレストラン、某●球の歩き方にも載っていない。プノンペン・シティツアーのミニバスの中で僕はガイドに尋ねてみた。ちょうどモニボン通りを南に向かっていた時だった。

 「あら知ってるわよ。そこよ。」

なんと訪ねた瞬間にミニバスは店の前を通りかかっていた。僕は「平壌冷麺」と掲げられた看板にある住所を見逃すまいと目を凝らした。

 [ モニボン通り400番 ]

なんだ、サルでも暗記できる住所じゃん。よかった。でも、忘れないうちにメモしておこうっと、、、そんな僕の不審な挙動にツアー客の一人が興味を示し話しかけてきた。Tさんという大阪から来られたおじさんだ。

 「いやー、わしもそこへ行ってみたいと思っとたんだよ。ほな今晩行きますか。夜8時に集合ってことでよろしいおまか?」

ということで、ツアー終了後一旦それぞれの宿に戻り、現地に再集合となった。

プノンペンの夜は暗い。それでも、どこからともなくバイクタクシーの運ちゃんがわらわらと集まってくるから不思議だ。

 僕(英語で):「モニボン通り400番のコリアンレストラン、知ってる?」
 バイクタクA:「?」
 バイクタクB:「?」
 バイクタクC:「?」

弱った、北朝鮮国営レストランはプノンペンでの認知度が恐ろしく低い。ようやくわけの分かりそうなヤツを見つけてレストランへ向かった。

平壌冷麺@プノンペン
モニボン通り400番のコリアンレストラン

韓国人と思われる団体客で埋まったお店の中ではTさんが先に始めていた。

 「やぁ、先に始めてたよ。あんたも注文しなさい。」
 「そうですね。すいません、メニュー!」

ウエイトレスが注文をとりに来た。おぉぉぉ、こ、これが美女軍団か!たしかに美人系ではある。でも、地味目のワンピースが共和国ちっくなのは愛嬌か。でも何故だか、彼女はひどく慌てているようだった。僕の注文を受けるとさっさと厨房に消えていく。そして、結局僕のオーダーがテーブルに届くまでには、しばし時間を要する羽目になってしまった。

 なぜならショータイムが始まってしまったのだ。

美女軍団の妖しい踊り?-プノンペン
美女軍団の妖しい踊り?-プノンペン

さっきのウエイトレスを含む4人の美女軍団がステージにお出まし。幼稚園のお遊戯風の北朝鮮ダンスを踊りだす。するとどうだ、韓国人の団体客たちが一斉にカメラを取り出し、披露宴のケーキカット状態にフラッシュがたかれる。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

 「なんや、みんなべっぴんさんやけど、化粧が一緒やな。」
 「そうですね。でもあのウエイトレス、ステージに夢中で僕の注文
  忘れてるみたいなんですが、、、」

そう、ここのウエイトレスはみなエンターテイナーでもあるのだ。踊りが終わると思ったら楽器の演奏、客とカラオケのデュエットと休む間もない。興が乗ってくると、浮かれた韓国人団体客の子供までステージに上がってきて美女軍団とダンスをしはじめた。

 「あはは、愉快じゃなー。」

と、Tさん。しかし僕はここで愉快じゃない事実に気がついた。お金をあまり持っていなかったのだ! 普通カンボジアでは7~8ドルも出せば十分にディナーが楽しめる。「まあ10ドルちょっとあれば大丈夫だろう」と残りの現金は宿のセイフティボックスに置いてきてしまった。だがこの店のメニューの値段から類推すると、これではちょっと心もとない。第一カンボジアに来て冷房の効いた高級店って今日が初めてだしなぁ。

まさか「お金が足りません」などと言ったら、熱烈なる歓迎をもって革命的精神熱い将軍様のお国へ招待されたりはしまいか。ううう、なんか不安だ。

そうこう考えるうちにTさんが、

 「いや~、今夜は楽しかった。アガシーお会計。ん、26ドルか。」

まずい、26÷2=13ドル。さっ、3ドル足りない。まあ共和国送りはないとしてもこれでは帰りのバイタク代は確実にない! いっ、嫌だ~!危険なプノンペンの夜をトボトボ歩いて帰るのは!

 「Tさん、あの~、実は……」
 「あ、あなたはいいよ。」

 (おお、もしかして!)

 「今日は俺が奢るから。」

おおお、助かった!これでプノンペンの暗闇を歩かずに済むし、共和国に招待されることもない。でも一応 「いやー、それはいけませんよ。」などと言ってみたりる。「じゃ割り勘にするか」の一言がホントは怖かったのだが、、、

 「日本からみたら26ドルなんて大した金額じゃないから、気にせんでええよ。」とTさん。たしかにカンボジアの物価からすれば26ドルは大金だが、冷静に考えればたった26ドルである。

  客単価にして13ドル(=26ドル÷2)!

ちょっと待てよ。ここは共和国の期待を一身に背負った国策企業のはず。それが、客単価わずか13ドルでやっていけるのだろうか。これで祖国の深刻な外貨不足を解消するにはあと何万年もかかるに違いない。大丈夫か、北朝鮮!

ともかく、僕のカンボジア最後の夜は、なぜか平壌冷麺をすすって締めくくられた。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

翌朝のプノンペン空港は意外にピカピカなのでちょっとびっくり。D航空カウンターのおじさんもすごくフレンドリーで、香港で乗り継ぐ予定のC航空便を一本早いフライトに変えたいと申し出たところ、「じゃこっちに来なさい」と別室のコンピュータールームに行っていろいろ世話を焼いてくれた。

 「カンボジアはどこに行ったのだ」
 「ココン、コンポンソム、それからプノンペンです。」

 「何!お前、アンコールワットには行っていないのか!」
 「ええ、まあ。」

 「それはいかん!またカンボジアに来るように。」
 「はっ、はい。」

ということで、僕の来年の旅行はアンコールワットに決まってしまった。

と、この時はこう決意したのだが、諸々の事情で、未だにアンコールに行けてません。「カンボジアに行ったのにアンコールに行かなかった愚か者」の称号?は未だに取れてませ~ん。

=FIN=


もどる < 7 > 目次へ


海外格安航空券 ※最高10000ポイントですよ!



最終更新:2016年08月27日 18:17