【寒いぞ!冬のモロッコ旅】
第3話)ワンデイツアーは惑星旅行?

《モロッコ旅行記|マラケッシュ|ワルザザード|ラバト》

集合時間を1時間間違えた僕だったが、ワンデイツアーは無事開催された。参加者は僕の他に、アイルランド人の太ったネーちゃん二人組とニュジーランド人のカップル、それと日本人がもう一人。

僕らはワゴン車に積み込まれ、一路砂漠の街ワルザザードを目指す。今朝のマラケッシュは曇り。気温は低い。が無謀にもニュジーランド人の男が「窓ガラスが曇って外が見えない」と、ワゴン車の窓を開けやがった。勘弁してくれ!後ろの僕は冷気が直撃だ。さすがに文句を言って閉めてもらった。

車はのんびり羊が草を食む平野部から、やがて急峻なアトラス山脈へと向かって走っていった。道が右に左に大きく曲がり、高度がぐんぐん上がってゆく。いつしかあたりは荒涼とした岩肌の台地が広がる。天気は晴天に変わり抜けるような青空だが、空気はますます寒い。山岳路の峠の茶店で休憩と相成った。

車を降りると乾いた冷たい風が容赦なく吹きかかる。よく見ると雲ははるか下の方。格安ツアーに参加の僕だが、この瞬間だけは「雲上人」である。 でも、寒いわけだ。遠くの山頂には雪が見える。ここは本当にアフリカなのか?

峠を下ると、視界が一気に開けてきた。真っ青な空に、茶色くごつごつした岩の大地。土壁の小さな集落が点在するまったく幻想的な風景だ。やがて、世界遺産アイント・ベンハットゥの入り口にたどり着いた。ここは小高い丘の斜面に造られた土壁の城塞・カスバだ。廃墟のようなこのカスバに今でも数家族が住んでいる。

世界遺産アイント・ベンハットゥ-モロッコ
世界遺産アイント・ベンハットゥ-モロッコ

さあ、むこうの城塞に登ってみよう。僕らはやや駐車場からアイント・ベンハットゥへ向かうと思われる小道を下っていった。すると、ありゃ。小川が流れている。むろん橋など架かっていない。どうやって向こう岸に渡ればよいのか。おやおやなんだか田舎の匂いが漂ってきた。「ヒヒーン!」 ロバである。よくできたものだ。世界遺産を拝むには、業者に金を払ってロバで川を渡る仕組みになっていた。

アイント・ベンハットゥを始めとするこその周りの景色は、なんだか他の惑星の大地にいるような錯覚に陥ってしまう。そういえば星の王子様を書いたサン・テグジュペリの本業は、ここモロッコで航空郵便のパイロットをしていたことを思い出した。この荒涼たる大地の自然は、いやがうえにも人に宇宙の神秘をイメージさせる。ただ不思議なことに、初めて見る光景にもかかわらず、何故かどこかで見たような気もする。

荒涼とした大地を進む-モロッコ
荒涼としたモロッコの大地

アイント・ベンハットゥからワルザザードの街は近い。途中ワゴン車が街の入り口で止まった。荒れ果てた台地に、変に人工的に仕切られた巨大な敷地がある。これは何だ。

 運転手:「 アトラス フィルム スタジオ!」

おお、何とこんなところに巨大な映画スタジオがあった。聞くところによると数多くのSF映画がこのあたりで撮影されたという。そうか!どこかで見たようなシーンの謎が解けた。

惑星旅行は日帰りで行ける身近なところにあった。

(続く)


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最終更新:2016年08月24日 10:39