【寒いぞ!冬のモロッコ旅】
第1話)COMPLET!(コンプレ!満室です)

《モロッコ旅行記|マラケッシュ|ワルザザード|ラバト》

飛行機のタラップを降り、小さなマラケッシュ空港の入国ゲートへ徒歩で向かう。2003年の年末、初めてのアラブの国・モロッコに僕は降り立った。「モロッコ人はウンコだ」とある人は言った。それほどまでにしつこく旅行者にまとわり付く輩が多いのであろう。「モロッコ人には負けないぞ!」と僕は小さな闘志を奮い立たせ、入国審査に備える。初めての国での入国審査はいつも緊張感を覚えるものだ。変な言いがかりをつけられやしまいか。わずかな不安とともにゲートをくぐる。

すると、 「BIENVENUE!(ビアンヴニュ ようこそ~)」

モロッコ美女のお迎え-マラケッシュ空港
モロッコ美女のお迎え-マラケッシュ空港

ををを、何と粋なはからい!入国ゲートに入るやいなや、モロッコ美女が入国審査で列をなす観光客に向かって、笑顔でお菓子を配ってくれてるではないか! 多分彼女たちは政府観光局あたりで雇われたコンパニオンであろうが、美女の生ウエルカムサービスなんて生まれて初めてだ。すばらしいぞ、モロッコ政府! 誰だ「モロッコ人はウンコだ」などと言ったやつは。やはり国のイメージを高めるのに美女軍団に勝るものはない。日本も小泉首相を起用したCMで「ようこそ日本キャンペーン」を海外で展開しているらしいが、戦術を誤ったようだな。

僕はにやけた顔を必死で引き締め、入国審査のオッサンからスタンプをもらった。

空港の外に出て気付いたのだが、マラケッシュの12月は意外に寒い。道行くモロッコ人たちはセーターやジャンバーを着込んでいる。モロッコはアフリカなんだから冬でも半そで短パンでOKだろうと思っていた僕は、上着は薄手のフリースしか持っていなかった。

冬のモロッコは意外に寒い-マラケッシュ
冬のモロッコは意外に寒い

さて、今日はどこに泊まろうか。マラケッシュはモロッコ随一の観光地なので安宿は山ほどあると人から聞いていた。どうせなら某●球の歩き方に「女主人が美人」と書かれていたSホテルを第一候補としよう。僕はタクシーを捕まえ安宿街に近いジャマ広場へ向かった。

ジャマ広場の裏手は狭い路地が迷路のように入り組んだ旧市街。安宿はそこに点在している。僕は相場感覚を確かめようとまず手近なAホテルで、部屋は空いているかと聞いてみた。すると、

 「NON, COMPLET!(ノン コンプレ!満室です。)」

おお、ここはバックパッカーに有名な安宿らしいので人気があるか。じゃちょっと先のEホテルはどうかな、こんにちわ~。誰かいませんか? ん、受付に人の気配を感じない。おかしい。おやナンダこの張り紙は。 えっ、え”~。

 「COMPLET!( コンプレ!満室です。)」

僕がホテルを探し回っているとモロッコ人たちが集まってきた。

 モロッコ人A:「お前さん、今日はどこも満室だよ。」

 モロッコ人B:「もうすぐ新年だからツーリストでいっぱいさ。」

あわわ、年末年始のモロッコは観光シーズンだったのか。まあ確かにマラケッシュ行きの飛行機はフランス人観光客でいっぱいだったよな。ううー知らなかった。

 モロッコ人C:「おいらが新しい宿を紹介してやるよ。」

でたな。この手について行くとロクなことはない。僕は安宿を片っ端からあたってみることにした。が、ここも 「COMPLET!」 隣も 「COMPLET!」 。何軒もあたるが一向に空室がない。そして僕のローラー作戦に例のモロッコ人が付きまとって離れず、うっとおしい。「モロッコ人はウンコだ」と言った人の気持ちが解ってきた。

十軒目ぐらいであろうか、やっと空室のあるホテルが見つかった。ホテルの名前はオテル・アドラル。シャワートイレ共同で1泊80ディラーム(約1,040円)也。このクラスなら60ディラームが妥当な気がするが、もう選択の余地はない。早くうっとおしいモロッコ人から開放されたくて泊まることにした。

美人の女主人の宿はもうどうでもよくなっていた。

泊まったオテル・アドラルの屋上
泊まったオテル・アドラルの屋上

(続く)


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最終更新:2016年08月24日 10:37