【初めてのアフリカ-セネガルの旅】
第1話)アフリカ、それはパリから始まった
《セネガル旅行記|ダカール|チエス|エールアフリック》
20世紀も終わりの2000年12月30日、僕はダカール(西アフリカのセネガル共和国の首都)行のエールアフリックRK303便をパリ・シャルルドゴール空港で待っていた。前日から空港で一泊、14:45発RK303便まで時間を持て余していたので、朝から空港内をぷらぷらしていた。
取りあえずエールアフリックのカウンターに行ってみると、いるいる、アフリカ人たちが大きな荷物を抱えて大集合だ。これは11:00発コートジボワール行のRK101便の乗客だろう。それにしてもなんだか騒がしいな。カウンターで文句を言っている乗客はいるし、ちょっと殺気だっている。。。
もしやと思い案内モニターを見ると、コートジボワール便は「Annule」の表示が。これは仏語でキャンセルの意味だ。哀れなアフリカ人たちよ、多いに騒いでくれたまえ。災難は君たちだけで十分だよ。
<このとき僕は、自分がこれ以上の災難に巻き込まれるなど夢にも思っていなかった。>
念のためカウンターに僕の乗る303便について尋ねてみる。「大丈夫!」と黒人ネーチャンの返事。よしよし、良かった、僕の乗る飛行機はチャンと飛ぶようだ。日頃の行いがいいもんね、僕は。
そして、しばらくして、もう一度モニターを眺めてみる。
ん? え"~っ!! なぜだ!
僕の乗るダカール便も「Annule」の表示が!!!!
もう一度さっきのカウンターの黒人ネーチャンのところに行ってみる。
僕 :「303便はキャンセルか?」
ネーチャン :(かったるそうに)「そうよ」
僕 :「さっきは時間どおりだって言ったじゃん!」
ネーチャン :(いかにも事務的に)「でもキャンセルなの」
ネーチャン :(よくある事という感じで)「2番のカウンターに行きなさい」
哀れ、僕の便もキャンセルになってしまったのだ。2番の窓口には今度はダカール行きの乗客が溢れかえっていた。9割以上は出稼ぎ里帰りのアフリカ人だ。みんな山のような荷物を抱えている。
隅の方で待っていると、どう見ても体重100kgはこえている黒人のおばちゃんがやってきた。
おばちゃん :「あんた荷物はそれだけかい?」
僕 :「えー、そうですよ」
おばちゃん :「悪いけど、あたしの荷物、一部あんたの物ってことにしてくれない。
超過料金取られちゃうのよ。」
おばちゃんの名前はバ。バおばちゃんだ。なるほど、バおばちゃんの荷物はカートに山と詰まれていた。「何か麻薬とか入っていたら嫌だな」と思ったけれど、この巨漢のおばちゃんに抵抗したら何されるかわからない。思わず「ウィ、マダム」と言ってしまったのは言うまでもない。
2番カウンターで受付けが始まった。まあ他社便に振り替えてくれるのだろう。何やら発券が始まったようだ。当然、受付けではバおばちゃんの連れということで、荷物を預ける。
ところが、渡されたチケットが変だ、飛行機の便名も何も印刷されていない。よく見ると汚い手書きで「FRENCH RIVIERA」と書いてある。ど、どーしてアフリカがフレンチリビエラ行きになるんだ!!
僕 :「マダム、フレンチリビエラって書いてあるよ?」
バおばちゃん:「あんたそれは昼食券だよ」
僕 :「えっ、でもフレンチリビエラって。。。」
バおばちゃん:「それは空港レストランの名前さ。とりあえず昼を食べてからまたおいで
だとさ、全くエールアフリックときたら。。。。」
と言うわけで、僕はバおばちゃんとフレンチリビエラでランデブーとなってしまった。驚いたことにここフレンチリビエラには、大きな看板で「遅延ランチはこちら」と広告されていた。よほど遅延ランチの出番が多いのだろう。でも、さすがグルメの国フランス。遅延ランチでも内容は充実していた。
昼食を済ませ、また2番のカウンターに行く。係員がやってきて、何やら説明をし始めた。
「みな様にホテルを提供いたします。夕食朝食込みです。明日のあさ10:00にこちらにまた来てください」
絶句! と言うことは、僕はこの空港で2泊目に突入することになる。
アフリカの混沌は既にパリから始まっていたのだった。
最終更新:2016年08月27日 16:21