【黒いフランスの旅:グアドゥループ/マルチニック島】
第4話)葬式と誕生日と

《フランス領カリブ旅行記|グアドゥループ島|マルチニック島》

ゴジールの街は大きく2つに分かれる。東のビーチに沿ってリゾートホテルやカジノが立ち並ぶツーリストエリアと、西の地元民居住区とにだ。今日は土曜日。青く透明なビーチでは観光客も地元民もたくさんの人が海水浴を楽しんでいて活気がある。

仏領カリブ・グアドゥループのアイス屋さんb
島のアイス屋さん。冷えた樽にココナツミルクを入れてかき混ぜると出来上がり。原始的だぁ。
仏領カリブ・グアドゥループのアイス屋さんb

ビーチでボーとしているのにも飽きて居住区の方を探索に行くが、フランス領カリブの島々の休日はお店もしっかりと休んでしまう。カフェもレストランもシャッターが降りて、歩いている人すら見かけるのも稀だ。タダでさえ鄙びた居住区は眠ったように静かである。

居住区のコロニアルな街並みはカラフルでそれなりに雰囲気はあるのだが、ちょっとカフェに寄って一休みしたくてもそれがままならない。おや!あそこのカフェだけ黒い肌の人がたくさん集まっているゾ。一軒ぐらいは休日営業の店があるようだ。

でも何か様子が変だ。お店の人が出てくる気配がない。それでも僕の顔があまりに物欲しげだったのか、誰かが声をかけてきた。

 「何か飲みたいのかい?」
 「ええ、何かありますか?」
 「じゃこれでも飲めや」

とプラスチックのコップに入ったラムコークを差し出された。うむむ、でも営業って感じではないなぁ。

 「あのう、お幾らでしょうか?」
 「ああ、お金はいらないよ。」

 「えっ、どういうこと」
 「今日はお葬式なのよ」
 「葬式!!」

そこは葬儀で人々で集まった人々の集団だった。あわてた僕は急に帽子を脱いで周りに挨拶をすると「まあ、お菓子でもどう?」とさらにもてなされ本当に恐縮モノである。

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夜になって、唯一開いているレストランで食事を済せ宿に戻った。疲れたせいか早々と床に着き、すぐにうとうとし始めた。丘の上の宿からは南国の夜の鳥たちの鳴き声が聞こえ、子守唄となって心地よい。、、

まどろみ始めたそのころ、急に丘の中腹の方が騒がしくなってきた。

 チャッカチャッカ♪ チャッカチャッカ♪ 

大音量で島のダンス音楽が流れてきたのだ。時刻は夜中の12時を過ぎているというのに、いったい何事だろう。そして音楽は30分たっても1時間たっても終わらない。なにやら楽しげな人々の騒ぎ声も聞こえてくる。

「夜は出歩くな」と宿のオヤジに忠告されていたが、もう気になって仕方がない。だって大好きな島の音楽がバンバンかかっているのだから。

僕は意を決して、音のする方へと夜道を歩いていった。音の先は道路からやや離れた一軒屋からであった。その家の前の空き地には褐色の肌の一群が集まり、なにやらパーティが始まっているようだ。音楽にあわせバルコニーで踊り狂っている人もいれば、屋外のテーブルで飲食を楽しんでいる人もいる。

 「何があったのですか?」
 「今日は娘の誕生日なんだよ」

とオヤジが楽しげに答える。

 「お前も何か飲むか、ワイン? ラム?」

またもやドリンクをご馳走してもらってしまった。しかし、この大音量で夜中にドンパチやっても文句を言う周辺住民は誰もいないようだ。これも島の風習なのだろうか。

踊る島民
夜中でも大騒ぎ

ともかく一日で島の葬式と誕生日を経験してしまったのだが、そのいずれでも、ちゃっかり奢ってもらってる僕だった?

(続く)


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最終更新:2016年08月27日 17:19