【黒いフランスの旅:グアドゥループ/マルチニック島】
第7話)サバンナ広場

《フランス領カリブ旅行記|グアドゥループ島|マルチニック島》

ドミニカに立ち寄って2時間後の昼過ぎ、船はマルチニック島の首都フォール・ドゥ・フランスの港に到着した。花の島とうたわれるマルチニックは、港に面したサバンナと呼ばれる大きな公園を中心にコロニアルな建物が立ち並ぶ美しい街だ。僕はロンリープラネットに載っていた一番安いホテルを目指した。とはいえ安いといっても、ここは物価の高いフランス領。一泊50ユーロ(約8千円)もする!

今日は火曜だからお店が閉まってるということもなかろうと街なかをうろつくが、むむむ。街中の様子が変だ。まるで日曜のように人っ子一人歩いていない。どーしたというのだろう。あっ今日は5月1日、労働者の国フランスの休日ではないか、イテテテ。またまたレストランもカフェも閉まっちゃっている。まったくこのあたりの島々のサービス産業はのん気である。

フォール・ドゥ・フランス
人気のないフォール・ドゥ・フランス

休日は地元の人も行くところがないようで、みんな港に出て涼んでいる。露天のジュース屋台だけが商売に熱心であった。

早々と宿に戻り汗を流すと辺りはもう暗くなっていた。さて、今日の夕食はどうしようか?一体開いているレストランなんかあるのだろうか?むろんスーパーだって閉まってるし、ましてやコンビニなんて気の利いた商売、あと100年経ったって存在しないだろう。

ともかく外に出て開いてる店を探すほかはないが、ここマルチニックの夜もグアドゥループ同様、夜は怪しい人しか出歩いていないと言うので緊張する。こういうときは旅行者っぽい匂いを出来るだけ消すことだ大事だ。僕は必要なものをスーパーの袋に入れ、買い物帰りの地元民を装った。グアドゥループやマルチニックにも少数ながら華僑が住んでいるので、なんとなく地元民に見えないこともないだろう、と根拠のない理由で自分に勇気を与えて夜の街に出た。

ジョセフィーヌ像
昼のサバンナ広場。そにあるナポレオンの妻ジョセフィーヌの像は、
白人に媚びた者として顔が壊されたままになっている。

レストランのありそうなところはサバンナ広場に面しているのだが、このサバンナ広場、昼間は綺麗な公園なのだが、実は夜になると浮浪者の溜まり場になり大変危険だと言われている。あまり近寄りたくはないのだが、かといってその辺りに行かなければ今日の食事にありつけない。虎穴に入らずんば虎子を得ずである。

とぼとぼ夜道を歩いていくと、所在なげに佇んでいる男がいた。少し距離を置いてその男の前を足早に通りすぎる。ほっ、こいつは何もしてこない。よかった。あら、また変なヤツがいる。あ、よし、反対側に行ったぞ。今のうちに進め。。。こんな調子でおっかなびっくり進むうちに50mほど先に明かりの着いているレストランを見つけた。よかった、メシにありつける!と気を抜いたその瞬間だった。

 「ムッシュー!」

暗闇からおどろおどろしい声で、一人の男が僕の背後に現れた。

 「ドネ モワ モネー(金をくれ)!」

やばい、変な男が僕に近づいてくる。僕は全速力でレストランへとダッシュした。50mがまるで500mのように長く感じられた。レストランの扉を千切れんばかりに引き空け、やっとの思いで駆け込んだ。

まったくサバンナ広場とはよく名づけたものだ。そこは夜になると弱肉強食のサバイバルなところだった。

(続く)


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最終更新:2016年08月27日 17:13