【光州の熱い1日-韓国W杯観戦記】
後半:光州の熱い1日
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◆キックオフ。そして奇跡は起こった
昼過ぎ、僕らはステジアムへ向かった。もうここではどこを見ても赤、赤、赤、赤、赤、赤、赤、赤、赤である。5万人収容のスタジアムはびっしりと赤い韓国サポーターで埋め尽くされ、これ以上ない異様なパワーを発していた。
自然に沸きあがる大応援歌。『オ~、ピッスン(必勝)コリア♪、オ~、ピッスン(必勝)コリア♪』 気温もどんどん上昇し、スタジアムの熱気は収まることを知らない。
やがて選手が入場してくるころ、南側のゴール裏席に巨大なマスゲームの人文字が現れた。赤地に白く『Pride of ASIA(アジアの誇り)』と浮かびあがり壮観!
ofの字が崩れてるのは、座席販売のバイロム社のせい?
そして、割れんばかりの声援とともに試合が始まった。
だが、これまでスピードを武器に強豪チームをなぎ倒してきた韓国チームであるが、相手のスペインより休養日が一日少ないせいか、今日はなかなか思うようにゲームが運べない。前半は完全にゲームを支配されていた。
しかし観衆の大声援はひとときも途切れることはない。『テーハミング(大韓民国)!』の大合唱は敵にプレッシャーを与え続け、味方の勇気を奮い立たせる。
後半も、地力に勝るスペインはあわやという場面を何度か作った。正直「今度はやられたか!」と思う瞬間もあった。
しかし、奇跡は起こった。
延長に入って絶対絶命の韓国チームのピンチを救ったもの。それはあの勝利を信じて疑わないスタジアムの巨大なエネルギーに他ならない。
サッカーに不条理は付き物である。マラドーナだって手を使ってゴールを決めた。ならばラインを割ってないボールだって割れるのである。あの時あの場所に限っていえば、サポーターの得体の知れない魔力が審判の視力に異変を起こさせたとしてもなんら不思議ではない。それほどの大声援であった。
試合はPK戦にもつれ込んだ。最後のホンミョンボ選手がゴールを決めたその瞬間、スタジアム中が沸きかえった。
だれかれ構わず抱き合い、飛び跳ねる。『テーハミング(大韓民国)!!』の大合唱。いつしか僕らも叫んでいた。『テーハミング(大韓民国)!!』
これ以上の歓喜など、僕はこの先一生、味わえないかもしれない。
ともかく韓国チームは勝った、いや韓国国民の勝利への意欲にスペインチームは勝てなかったという方が正しいのかも知れない。。。
◆宴の続く光州の夜
夕方、試合が終わっても勝利の興奮は終わるどころかますます加速度的に増幅していった。窓から身を乗り出し国旗を振る車が行き交う。繁華街には後から後から市民が繰り出し勝利を祝いあう。街の通りは赤いシャツでどこもかしこも埋め尽くされた。
スタジアムに出かけた観客も、街頭で応援したその何倍もの市民も、見知らぬ人が見知らぬ人と抱き合い、手をつなぎ、雄たけびを上げる。夜空には何千発もの花火が打ち上げられ、『オ~、ピッスン(必勝)コリア♪、オ~、ピッスン(必勝)コリア♪』と勝利の宴に、大人も子供も男も女も、韓国中が酔いしれている。
熱気、興奮、歓喜、情熱、執念、陶酔。そのすべてが一晩中韓国全土を覆っていた。そしてその輪の中に僕らもほんの少し混ぜてもらえた。この幸福な一日を僕は一生忘れることができないであろう。
最終更新:2016年08月26日 23:53