【タイの真中辺りを行く】
第6話)ピサヌローク名物「空飛ぶ野菜炒め」
《タイ旅行記|ターク|メーソット|スコータイ|ピサヌローク》
スコータイから1時間程ローカルバスに揺られて、ピサヌロークの街に着いた。タイ中部の、電車の駅もあるかなり大きな街だ。
この街の名物に「空飛ぶ野菜炒め」がある。手元の某「C球のAき方」には「夕方になると河原の屋台街に出現する」と小さな囲みで紹介していたが、正確な位置は載っていない。そもそも僕の「Aき方」は5年前の版なので、古くて使えないところがかなりある。「空飛ぶ野菜炒め」情報も結構眉唾ものだ。
そこで観光局で確かめてみることにした。すると、「空飛ぶ野菜炒め」は河原ではなく街の南の屋台街にあることが分かった。
夕方、僕はその屋台街に行ってみた。しばらく通りを歩いて行くと、タイのどこの街でもよく見かける屋台村に出くわした。「空飛ぶ野菜炒め」の店はどこだろう、、と探してみたら、何と日本語でも看板があって、へたくそな字で「空飛ぶ野菜炒め」と書いてある。、、、おおこんなところにあったのか。
では、早速「空飛ぶ野菜炒め」を注文してみよう。
道路に面したオープンエアの調理場では、野菜炒めの達人であろう天才シェフが鍋を振るっていた。ジャーと大きな炎を上げる中華鍋。そしてよく見ると、調理場から10メートルほど離れた道路に、なぜか中古のバスが停車している。
おやっ、
ドンドコ、ドンドコ、ドンドコ、ドンドコ
急に太鼓の音が鳴り響きだした。なっ、なんで、食堂の店員が太鼓を鳴らしてるんだ?
今日はこの屋台食堂にドイツ人の団体客が来ていた。あるドイツ人が席を立ち、太鼓の音に合わせて手をたたきながら、なぜか停車している中古バスの方に歩みよる。よく見ると中古バスには手すり階段が取り付けられていた。、
ドンドコ、ドンドコ、ドンドコ、ドンドコ
太鼓の音に合わせて観客の手拍子も大きくなる。そしてそのリズムに合わせて、ドイツ人は手すり階段を昇り、バスの屋根の上に立ちあがった。そして、彼の手にはお皿が手渡された。なんのことはない、謎の中古バスの屋根上は、「空飛ぶ野菜炒め」のキャッチングステージだったのだ。
ドンドコ、ドンドコ、ドンドコ、ドンドコ
太鼓の音がいやがうえにも緊張感を高めていく。
ジャーーー。
天才シュフは、まるで用意が整った合図のように中華鍋に大きな炎を上げた。さあいよいよ「野菜炒め」が空を飛ぶ瞬間だ。ギャラリーはみな固唾を飲んだ。そして緊張の一瞬を待ち構える。
するとシェフは意外な行動にでた。
シェフは鍋を片手に、キャッチングステージに対して180度背中を向けたのだ。おっ、背面投げである。これで野菜炒めは無事に客の皿に収まることができるというのか?シェフと客の間は、距離にして10m、高さにして5mも離れている。
ドンドコ、ドンドコ、ドン、ドコ、 ドーーン!!
太鼓の合図とともに、シェフは後ろに向かって大きく鍋を振った。すると野菜炒めは夜空に高々と放り投げられ、大きな放物線を描いて落ちてゆく。果たして野菜炒めは、見事ステージ上の客のお皿に納まるのか?
パチパチパチ パチパチパチ パチパチパチ
気づくといつの間にか拍手の嵐。野菜炒めはあっという間に客のお皿に吸い込まれていた。
その後、何人もドイツ人観光客がキャッチングステージに上がったが、天才シェフの投げ技は百発百中。これはすごい。種も仕掛けもない熟練の投げ技だ。
僕もぜひ野菜炒めキャッチに挑戦したかったのだが、この日はドイツ人が殺到してとても僕まで順番が回ってくる気配すらない。でもまあ、これだけすごい技を見せてもらったからもう十分だ。
ともかく、もしあなたがピサヌロークへ行くことがあれば、この「空飛ぶ野菜炒め」必見ですぞ。
「空飛ぶ野菜炒め」のキャッチングステージとして使われる中古バス
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こうして数日間をタイ中央部の田舎街で過ごした後、バンコクに戻った。バンコクは地方と違ってタクシーだって、スーパーだって、何でもある。僕はとあるスーパーでパックのオレンジジュースを買った。
が、なんだこの不味さ。100%果汁のはずなのに味気がない!
これなら田舎の屋台のナムソム(絞りたてのみかん汁)の方が100倍、味が濃くて美味しい。
ああ、何だかまたタイの田舎が恋しくなってしまったよ~ん。
最終更新:2016年08月26日 21:44