【奥林匹克・足球観戦記@人民国】
第6話)満州事変

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オランダ戦敗戦の翌朝、僕は飛行機で上海に向かった。日本のB組2位通過にヤマを張ってそういう旅程を組んでいたのだが、残念ながら日本代表は僕より一足早く帰国となってしまった。

街からタクシーで瀋陽の飛行場に着く。すると前のバスから巨体の外人集団が降りてきた。なんか見たことあるような、、、おやおやまた「NETHERLAND」のジャージ!なんと昨日日本代表を打ち負かした憎きオランダ代表どもとまた鉢合せではないか!

あっオランダ代表だ!
あっ、またオランダ代表だ!

僕は星取り表を頭の中で計算した。そうかオランダがB組の2位通過だから、やつらは上海に行くんだ。でも、瀋陽から上海への便はいくつもあるから、同じ飛行機ってことはないだろう。

ふん、まったく忌々しいオレンジ軍団よ。インチキくさいPKで勝ったからって偉そうにするんじゃない。お前らの乗る飛行機なんて落ちてしまえ!

やつらは搭乗口の端の選手専用ゾーンに隔離されていった。だが、その入り口はおいらと同じ便のもののようだ。だったら落ちると僕も困るのでので前言撤回としておこう。

オレンジ群団は予選を突破したためかやたら機嫌がいい。時折選手専用ゾーンから離れ一般ゾーンにやって来て買い物やら、人民と談笑などし始める。勝つと負けるとでは天国と地獄だ。3日前の日本代表には笑顔はなかった。予選敗退が決まってたからそんな余裕などないのは分かるが、もう少し気持ちに余裕があったら、昨日の試合結果だって違っていたかもしれない。

それに比べて今日のオランダ代表のオープンなこと。あ、こら、一般人民。選手とツーショットなんか撮ってるんじゃない! こいつらは憎きオランダ代表なんだからな!

そう思っていると、青シャツを着た日本人サポーターが一人やってきた。

 「すいませ~ん。シャッター押していただけませんか?」

なんとこの非国民。貴様、日本人のくせに敵国軍とツーショトを撮りたがるとは!

 「いやー、ありがとうございました。私はこれから帰国するのですが、いい記念になりました。ところであの選手誰ですかね。」

このど素人め!貴様、あやつをオランダ代表キャプテン、ロイ・マカーイと知らずにツーショットしたのか!でも、こういう時は余計な知識などない方が人は大胆な行動を取れるのかも知れない。彼はオリンピック・ボランティアと記念撮影を撮るかのごとく軽~い気持ちで、オランダのスーパースターとツーショットを成功させた。ときに素人の大胆さは大きな成功を生み出す。

いかんいかん、何が成功だ。相手は憎きオランダ代表だぞ。日本サポーターとしては絶対にツーショットなど撮ってはいけない。そんな軽薄な気持ちがサポーターにあるから、日本サッカーは勝てないのだ。サポーターが寝返ったら日本代表はいつまでたっても強くなれない。僕は断固拒否する。オランダ代表とのツーショットなんて。意地を見せろ、己の誇りを失うなぁ!


 その5分後、僕のデジカメにはロイ・マカーイ選手との2ショット写真が記録されていた。

秘密の2ショット

ここ瀋陽は、かつて奉天と呼ばれた旧満州の中心都市であった。この旧満州の空港で勃発した一日本人の恥ずべき行為は、21世紀の満州事変として永久に闇に葬りさらねばならない。

さらに付け加えるなら、僕のサッカーマガジン・オリンピック特集号のオランダ代表のページには4人のオランダ代表選手のサインがある、などという恥辱ににまみれた裏切り行為は、絶対に後世に知られてはならないのだ。

サイン入りサッカーマガジン
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嗚呼、サポーターがこんなだから、、、、

日本代表が強くなる日は遥かに遠い。

(続く)





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最終更新:2016年08月27日 08:37