【奥林匹克・足球観戦記@人民国】
第2話)食品問題

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青年旅舎のドミトリーにはもう一人日本人のKさんが泊まっていた。彼も僕と同じようにサッカーを観戦に来たのだというので、一緒に今日の試合を観に行くことにした。

8月13日の天津スタジアムは、日本vsナイジェリア戦の後、オランダvsUSA戦のダブルヘッダーである。そのため青年旅舎には各国からのサポーターが集結していた。さすがにナイジェリアからの旅行者は居なかったが、オランダ人やアメリカ人、そして試合に全然関係ないドイツ人まで居て賑やかである。

Kさん曰く、「いやー中国って全然英語が通じませんね。国際イベントのホスト都市なのにタクシーの運転手が STATION が分からないのですよ! 電車の切符買いに行くのに苦労しました。アハハ」

「全くですね。日本なら小学生でも知ってそうな英単語ですら通じないですよね。中国に来たら中国語を使えってことですかね。中華思想、未だ健在ってことでしょうかねぇ」

でも中国の人口は13億人。全世界の人口が67億人だから、人類の5人に1人は中国人という計算になる。これだけの人口を抱えていると外人相手に英語を学ぼうなんて気にはならないのも分かる気がする。

昼間は老街(=昔の街並みを再現した地区)やらを訪れて時間をつぶし、夕方のスタジアムへバスで向かった。昨日と同様厳戒態勢が敷かれる中、ダフ屋と交渉する。

治安部隊は暴力騒動には敏感だが、闇チケット業者の取り締まりには一切関知しないようだ。ダフ屋は武装警察のまん前で堂々と営業している。まあ何かトラブったら警察の目の前のほうが、旅行者としては安心感があるので、それはそれでいいのだけれど、、、

定価150元(約2,300円)のA席を250元(約3,800円)でゲットすると、日本代表の青いシャツに着替える。最初からユニフォーム姿だとダフ屋に足元見られるので、これはそのささやかな対抗策である。

天津スタジアムにて
青いシャツに着替えて、さあ応援だ!-天津スタジアムにて

ボディチェックと手荷物のX線検査を受けスタジアムに入る。当然ながら今日は日本の青シャツの観客が多い。地元の中国サポは、第二試合のオランダのオレンジ・シャツ組が多いが、一緒に記念撮影しようと寄ってくる人民も少数だが居る。

昨日の中国女子vsカナダ戦で、第三国の僕は単なるお客さんであったが、自国チームの試合となると自分がまるで主役になったような錯覚が高まってくる。人民の数には負けるが、日本、オランダ、USA、ナイジェリア各国のサポーターが随所で歓声を上げ、試合が始まるまでの数時間はTV観戦では味わえない、ビッグイベントならではの楽しいひと時だ。

観客席に座ると僕は目を疑った、「なんだこの霧は!」。この日の天津スタジアムの湿度は異常であった。フィールドには靄がかかって、反対側の観客席がかすんで見える。

やがてFIFAのテーマソングとともに両国イレブンが現れ、試合が始まった。日本は細かいパスで敵陣にせまるも、屈強なナイジェリアイレブンはそれを跳ね除け、逆に少ないチャンスに見事な集中力で2ゴールをあげられてしまった。それでも日本は敵GKのミスから意地の1点を返す。

「ヤッター!」

この瞬間、僕は見ず知らずの前席の日本人サポーターたちと抱き合っていた。

しかし日本の反撃もこれがやっと。力の差は歴然で2-1の敗戦となり、この時点で日本の予選グループ敗退が決まった。スタジアムの日本サポーターは失意のどん底に落とされた。

だが観客の圧倒的多数を占める人民たちは違った。日本の負け=これすなわち人民の勝利なので、大喜び。ウエーブなんて始めやがる!

前席の日本人がしみじみつぶやいた。彼は現地で日系企業に勤めている。 「会社の中国人は、日系企業だから普段は見せないけど、日本って本当に嫌われてるんだな。。。」

日本と中国の戦争が終わって半世紀、日中国交正常化から30年。それでも未だに根強く残る反日感情。

日本vsナイジェリア

第一試合が終わるとスタジアムは激しい雷雨に包まれた。幸い客席は屋根があるので濡れることはないが、豪雨はあたかも日本サポーターの涙雨のように降りしきる。失意となぜ未だに反日?の複雑な感情が入り乱れる中、第二試合のオランダvsUSA戦のキックオフを待つ。その間に食料を買いに行こう。

大会スポンサー・Cカコーラのブースは長蛇の列だ。辛抱強く並んでメニューを指差し注文する。

 「三明治 (サンドイッチ) 」を指差すと、
 「没有 (ありません) 」

 「熱狗 (ホットドッグ) 」も、
 「没有 (ありません) 」

 ガーン!!

6万大観衆の胃袋を満たすのにコカCーラの売店はあまりに小さすぎた。ああ、お腹が減ったよう!この食品問題を何とかしてくれ~。

すると店員が「これならあるよ」という風に何かスナックっぽいものを取り出した。わけもわからずそれを買ったが、よくみるとそれはインスタントのラーメンだった(カップ・ラーメンではない!)

「こんなもの、お湯もないのにどーやって食うんだ!」と思って辺りを見ると、なんと人民は袋から生のインスタント・ラーメンを取り出し、当たり前のようにポリポリかじっている。恐るべし人民!


日本の敗戦と、情けない夕食?のダブルショックから、第二試合のオランダvsUSA戦はボーっと眺めているだけだった。

試合が終わると、雨は止んでいた。Kさんと一緒に宿に戻るが、二人とも気分はブルーだった。

(続く)


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最終更新:2016年08月27日 08:36