編集部主導の質問コーナーは以上。続いて、事前に参加者に配られたQRコードを通じての携帯メール投稿から抜粋し、ゾルゲ氏がファンからの質問に直接答える。司会者が質問を読み上げる。



――では質問です。「セガマークIIIで一番印象に残っているゲームを教えて下さい」



ゾ 面白くなくてもいいんですか? 印象に残ってるのだと『ナスカ'88』かな。あれはいいゲームだよ。やらないほうがいいけどね(笑)。だって世の中ジャンルってあるでしょ。アクションシューティングとか、リアルタイムシミュレーションとかさ。あれは唯一「中南米動物買収ゲーム」っていう。すごいだろ、この組み合わせ。単語ひとつでもかぶっているゲームってあんまりないよ。わけのわかんないシステムと、それを取り巻く不思議な世界観。あれが海外版になると『Aztec Adventure』っていうんだけど、ナスカって全然アステカじゃないのな。作るほうもどっちでもいいんだろうなってのがよくわかるいいゲームでした。ただ音楽はいいよ。



――ありがとうございます。では次の質問です。「ゲームミュージックについていろいろお聞きしたいです。好きなタイトル、音源、思い出など。あと、海外バフォメットツアー(海外のゲーム購入旅行記)の続編もお願いします」。



ゾ ゲームミュージックでいうと、PSG3音にノイズ1音という組み合わせが私は一番好きです。もちろんFM音源も好きなんですけれども、あんまり入るとシンセの音になっちゃうんで、ゲームの音っていうとPSG3音とノイズ1音かなあと。何がいいかっていうのはその日の気分によるんですけど、今すごくグッと来てるのがMSX2の『ストラテジックマース』。デービーソフトね。あれはね、いいのよ! デービーソフトって大体手を抜かないでしょ。普段『フラッピー』とか作ってるところなんだけれども、とっても一生懸命シューティング作ったりしてて、デービーらしいちょっとシミュレーションっぽい要素があるんだけども、とにかくね、オープニングの音楽がものすごくいい。あれは泣ける。T&Eソフトの『アシュギーネ』と同じくらい泣ける。T&Eの『アシュギーネ』は浅倉大介さんだから、それとタメ張るぐらいっていうのは結構たいしたもんだと思う。ぜひ買ってみてください。

あとおんなじ感じでカシオの『エグゾイドZ エリア5』。あれのオープニングもいいよ。すごくいい。MSX好きだった人はわかると思うけれども、『MIDIサウルス』買うとさ、おまけになぜか『エグゾイドZ エリア5』の曲が入ってるんだよね。『エグゾイドZ』とその続編の『エグゾイドZ エリア5』はとっても出来がいいシューティングなんですよ。カシオにしては珍しくって、あの頃ゲーム音楽を書く人っていうのは本当にアカデミズムから遠いところにいるから、音楽っていっても和声とか結構デタラメなのよね。でもその中ですごく頑張っていて、『エリア5』の音楽はね、サビで拍子が変わるの。3拍子になるんだけどあれがカッコよくってねえ! でもみんなカシオのゲーム嫌いだったみたいだから、全然気が付かなかったみたいだけど、あれは割とオススメ。



――バフォメットツアーの続編については。



ゾ 旅行自体は相変わらず行ってるんですけれども、最近海外でゲーム関係が元気ないのよ。向こうの人は商売に聡いので、ゲームが商売になると思えば夜店でバーっとゲームが並ぶけど、ちょっと元気がなくなってくるとあっという間に、今は携帯電話とかですね。

ですから、昔ほどすっげー怪しいゲーム関係のものは、ちょっと難しくなってます。ネタ自体はまだ書いてないのが幾つかあるんですけど、それだけでまとめるにはどうかなというのがありますね。思うに、昔はすごくゲームに元気があったんだと思う。東南アジアのとんでもない僻地の屋台にもゲームがゾロゾロ売ってるという、それぐらい需要があったんだと思います。



――では次の質問です。すごいシンプルですね。「ドグマって何ですか?」



編 「横綱大社長」でも出てきたし、「超ゲーム少女ユーゲ」にも出てきた企業の名前ですね。


ゾ そんなに面白い話ではないですけれども、あれはネームの時は「メギド」という名前でした。聖書に出てくるメギドですな。これが当時の編集的に「宗教がらみのはヤバイから変えてくれ」と言われまして「じゃあドグマだろう」ということでドグマにしたのが最初です。



――では次の質問です。「お料理好きなゾルゲさん、何にもしたくないときに作る一番の手抜き料理は何ですか?」



ゾ これはチャーハンです。専用の中華鍋とかありますから。絶対に失敗しない素晴らしい料理です。しかもチャーハンっていうのは、ご飯を冷凍とか冷蔵してると、それが明らかにおいしさにつながるんですよね。あったかいご飯だとベチャベチャになるんだけれども、冷蔵庫とかに入れといたのだとパラパラに仕上がる。あとは伝家の宝刀で、中華屋さんもよく使ってる「味覇」(ウェイパー)を一さじ入れて、卵を2個入れるだけでプロの味。


編 というか、これ何のトークショーなんでしょう。


ゾ や、わかりませんけど(笑)。あと暇な時はマーボー豆腐。ちなみにマーボー豆腐は花椒(ホアジャオ)をその場ですると絶対失敗しないです。買い置きの花椒だと風味が出ないんだけども、粒のを買ってゴリゴリってやるとそれだけでプロの味っぽくなるので割とオススメ。あと豆鼓(トウチ)を忘れない。何の話か分かんないけど(笑)。



――では次の質問です。「ゾルゲ先生は非常に執筆期間が長いのですが、編集長がどんどんかわってゆくことについてはどう思われますか?」



編 ちょっと待って、それは僕が豹変してゆくってこと?


ゾ 最初は真面目だったんだけど、だんだんドラッグにはまってとか、やがて女遊びに足しげく通うようになるとか(笑)。


編 いやいやいや。


ゾ わかりますよ。単なるライターだった俺が一番古株になっちゃったってことでしょ? それを言うなら単純に一番最初にあった「ユーズド・ゲームズ」(ゲームサイドの前々身)、あれがまさか3号以上続くとは思ってませんでした。「いつこの雑誌は潰れるんだろう」と思いながらやってたんですけれども、かれこれ10年以上潰れなかったので、ありがたいことです。

編集長の変遷については、その中でも山本編集長は、ゲームが根っから好きで、しかも真面目なのでよかったかなと。歴代の編集長はね、ゲームは好きなんだけど好きすぎて頭が変な人が多かったので、あんまりもたなかったのね。あるでしょ、100%の力を出し尽くしたフリーザみたいな。(山本編集長が)一番真面目に本を出してくれてると思います。



――では最後の質問です。「『謎のゲーム魔境』の新刊はまだですか?」



ゾ あれも発狂漫画と一緒で、昔は好き勝手書いてたんですけれども、今は例えば今回のような本を1冊書くのでも、山本編集長が各メーカーに「こんな変な漫画だけど売らせてくれ」って回ってるわけですよ。「魔境」はこの比じゃないので。書くのはいいけど、果たして売らしてくれるのかっていうのが、大きいんじゃないかな。


編 著者が載せたいという形で載るかというところですよね。


ゾ そうですね。これは結構準備をして書く気マンマンだったんですけれども、チャンスがあればという感じかな。


編 今は「8bit年代記」も連載中ですし、ゾルゲ市蔵とは別名義で「メギ曜日のハルカ」というWeb小説も連載されてますし、そちらで御注力いただいているという感じですね。


ゾ 良かったら読んでね(笑)。



「メギ曜日のハルカ」はこちら



 質問コーナーも終わり、これで約1時間のトークショーが終了。この後、サイン会に移行する。

 一人ひとりにサインしつつ、その間に気さくにトークに応じるゾルゲ氏。


 これがデフォのサインだが、のちにリクエストが多くなるにつれ、次第に一人ひとりまったく別のサインを描いていくゾルゲ氏。トークと、希望者への握手を含め、ひとりのファンに接する時間は、かなりの長時間。

 そのため最後のほうの方々には、かなり待っていただくことになってしまった模様。


「ゾルゲ先生もサインには大変力が入りましたため、皆様に長時間お待ちいただくことになりまして、誠に申し訳ございませんでした」(ゲームサイド編集部)



 それでは、本当はサイン会以降前にあったゾルゲ市蔵氏からの会場の皆さんへのひと言なのだが、その言葉をここに記し、この記事を締めくくろうと思う。



ゾ 今日は本当にありがとうございます。私は漫画家としても、ゲーム屋さんとしても、文章書きとしても、大したことのない、端っこにいる人間なんですけれども、わざわざこんなに集まっていただけるのはちょっと嬉しい反面、もう少しギャルとか来ないのかなと思うのもありますが(笑)、本当にありがとうございます。

今回はこういう本を描いてみて、皆さんにちょっと読んでもらおうかなと思ったのですが、私は別にゲームの語り部の代表でもなんでもないです。たまたま今ここにいるからやってるだけで、どっちかというとこれを見て「こんなもんじゃねえ。俺のほうがもっとすごいのを描ける」という人が出てくることをすごく願ってやみません。キャラの演出的にちょっとふんぞり返ってる部分があるかもしれませんが、ずっとゲームが好きだったところだけはブレずにやってきたつもりでおりますので、そのへんはわかってくれると嬉しいかなと思う次第です。

この連載がどのくらい続くのかわかりませんけれども、とりあえず自分が見てきたゲームの歴史みたいなものを、自分の力の及ぶ限りで出せないかなとか思ってますので、引き続きお付き合いいただければちょっと嬉しいかな。とそんなところかな。でも今日は本当に集まってくれてどうもありがとうです。



 ゾルゲ市蔵氏の想い、「あの頃の感動を、もう一度みんなと感じたい、共有したい」。そんな気持ちがわかるような、そんなイベントだった。会場でも、そのことを感じたファンは多かったのではないだろうか。

 氏は、当然ながら、当時のシーンの、自身の周りで起こった一部分の出来事しか体験していない。われわれ一人ひとりもまたそうである。氏の創作物や、これからの連載が、一人ひとりの体験を大きくつなぐきっかけになれば、またその中から別の誰かの優れた作品が出てきてくれれば、そんな嬉しいことはない。氏のそんな心が、伝わってきた。

 温かく迎えられ、無事終了した今回のイベントは、ゲーム文化の今後につながるものだったかもしれない。ゾルゲ市蔵氏の今後の作品と動向に、これからも注目していきたい。



(編集部)

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最終更新:2012年01月07日 19:39
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