エピローグ

日常へ帰る為のありふれた唄を奏でに乗せて。
あなたの心を形作るあなたの言葉、それこそを叶えられる願いそのものとしよう。
遥か彼方に思えたあのピリオドが、目の前まで来ていることを実感できる幸せ。
ピリオドの中で起きた事を改めてこれ以上語るつもりはない。

ただ、最後に伝えたい言葉があるから、エピローグ。



エピローグ もしもキミがカズキの選択を信じるならば



代わりなどいないから、誰もが前を向いて戦った。
カズキの代わりはいない。
誰もカズキの代わりになれるはずもない。
わかっている。
代わりなどいないから、誰もが大事なものを守るために戦った。
決着とは始まりではない。かといって終わりでもない。
では決着とは一体なんだろう。
死ではない。
なぜならこの物語は全て死から始まっているのだから。
色んな人が死んで、自分が死んで、死なせたくないから戦った。
だから、簡単に命を捨ててはいけないんだ。
たとえそこにどんな意味があったとしても。



あの日、カズキはまひろに言った。
「今度は少し、長いお別れになるけど、必ず帰ってくるから心配するな」
そして、「みんなに、よろしくな」とも。
だから彼女は伝えたんだ、皆を心配させないために。
「今度は少し、長い任務になるけど」って。

だから彼女だけが知っている、あの光が月へと飛んだ兄との、“お別れ”だと。

彼らも武藤カズキを諦めることは無かった。
ただ、信じて待っていた。
必ず帰ってくるという約束を。
そして、武藤カズキを。友達を。先輩を。お兄ちゃんを。
そんな彼らの苦しい戦いを、知る者は多く、苦しんでいない者は少ない。
「まひろちゃん」
「まひろ」
「月を見ろ、あれは!!」

これは太陽が再び昇るまでの、夜が明けるまでの物語。



―――代わりなどいないから、誰もが前を向いて戦った。



わかるさ。
あのアホ面が見えなくたって。
一発でわかる。

あの日、学校で見た山吹色の綺麗な光。
太陽に良く似た山吹色。

わかるさ。
あのアホ面が見えなくたって。
一発でわかる。

わかるから月を仰いで、彼の名を呟き、そして見送ったんだ。
カズキを。
カズキ君を。
カズキを。
武藤先輩を。
カズキ先輩を。
――――お兄ちゃんを。


代わりなどいないから、誰もが大事なものを守るために戦った。
決着とは始まりではない。かといって終わりでもない。
では決着とは一体なんだろう。
死ではない。
なぜならこの物語は全て死から始まっているのだから。
色んな人が死んで、自分が死んで、死なせたくないから戦った。
思うに決着とは、全てを思い出にするということ。
楽しかったことしか思い出せないような日が来るように、心残りにカタをつける。
それは終わりでもない、始まりでもない。
だって物語はまだ続いているのだから。
『物語の中で刻まれたピリオドの数を数えたことがありますか?』
つまりはそういうことなんだ。
この物語の幕となるピリオドだって、終わりを意味してはいない。
日常から非日常の世界へ、そして非日常から日常の世界へ。
そんな繰り返しでみんな大人になっていくんだろう。
だから、これからまたここに、ひとつのピリオドを刻もうじゃないか。
どうか、楽しかったことしか思い出せないような日が来るように、と願いをこめて。
安らかに。


「今度は少し、長いお別れになるけど、必ず帰ってくるから心配するな」
そんな言葉を残して彼が月へ行ってから月が一巡する月日が経過していた。

誰が忘れるだろうか。あの日、学校で見たサンライトイエローの輝きを。
いや、違う。
たとえ顔が見えなくたってわかる。
わかるさ。
あのアホ面が見えなくたって。
一発でわかる。
そんな暖かい光がようやく月から届く。

さあ、空を見上げよう。
皆の笑顔を取り戻すために。
どうか、全ての生きとし生ける者に優しく安らかなる祝福を。
そしてその先に待つひとつの確定した未来がある。
それは間違いなく描かれた、ひとつの幸せな結末。
それがまさにピリオド。


ただ暖かな涙が溢れて、ヴィクトリアの頬を伝うピリオドを。





武装錬金ビフォーピリオド 完





立ち止まる暇なんかないさ。考える余裕なんかないさ。
ありったけの想いを胸に灼熱の戦いの中へ。
あまりにも大きな力の壁、世界の闇。
絶対、負けるもんか。限界超えて。

今はわからないコトばかりだけど。
信じるこの道を進むだけさ。
どんな敵でも味方でも構わない。

この手を放すもんか、真っ赤な誓い。


いつまでも、いつまでも。追い続けるんだ。
どこまでも、どこまでも。明日への勇気を。
どこまでも、どこまでも、燃え滾るハートをおまえと。


いつだって希望にあふれた。その笑顔、子供たちの夢。
どうしても守り抜かなくちゃ、この熱い血が流れ出る限り。
何でもいいから、誰も泣かない世界が欲しい。
絶対見つけるんだ、真実の鍵。

何度ミスして落ち込んだとしても。
あきらめちゃダメだ、前を向こう。
大切なものを守る、この使命を。
思いっきり抱きしめて、真っ赤な誓い。

いつまでも、いつまでも。追い続けるんだ。
どこまでも、どこまでも。明日への勇気を。
どこまでも、どこまでも、燃え滾るハートを。
おまえと!ッ!





お兄ちゃん。

カズキ先輩。
武藤先輩。
カズキ。
カズキ。
カズキ君。
武藤クン。
武藤。
ムトウカズキ。
戦士・武藤。
クソガキ。
武藤サン。
武藤カズキ。
アイツ。
あのコ。
あの男。
カズキン。
カズキクン。
カズキ。



もっと愛を込めて。





武藤カズキィィィッ!!
武藤ォ!
カズキッ!!

もっと愛を込めて。





おかえり。


ヴィクターもね。










ただいま!











名前:
コメント:
最終更新:2010年12月05日 22:57
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。