*1 ここでいう「社会構築主義的アプローチ」とは、スペクター&キッセ『社会問題の構築―ラベリング理論をこえて』(マルジュ社、1990)において提示された「想定された状態について苦情を述べ、クレイムを申し立てる個人やグループの活動」によって構築された「社会問題」について、「クレイム申し立て活動とそれに反応する活動の発生や性質、持続」を観察し、その機能を明らかにするという分析スタイルを意味する。すなわち、本質主義(essentialism)に対する「構成主義」ではなく、客観主義(objectivism)に対する「構築主義」として用いる。本稿において重要なのは、クレイム申し立て活動は「社会問題」を構築するという機能ばかりでなく、そのクレイム申し立て活動=コミュニケーションそれ自体(運動や流言飛語の生成過程)が何かしらの効果と社会的機能を持ちうること、あるいは「クレイム申し立て」の動機や意図とは別にその「申し立て」の際の「表現」が別のコミュニケーションから創出されたり、別のコミュニケーションへと接続されることが常にあり、むしろ別のコミュニケーション=「擬似問題」へのコミットメントが「社会問題」の推進力として必須であるという面があるという観点である。