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0-2 バックラッシュの定義について

 このwiki(以下、本稿に統一)で取り扱う「バックラッシュ」について、まずは定義する。

 バックラッシュとは通常、あるコミュニケーション の指向性にとって逆流として働く現象を総称して用いられる。『Longman Web Dictionary』 、『Oxford Advanced Learner's Dictionary』 、『Cambridge Dictionaries Online』 、『Encarta® World English Dictionary, North American Edition』 において、「backlash」はそれぞれ次のように定義されている。

a strong negative reaction by a number of people against recent events, especially against political or social developments.

a strong negative reaction by a large number of people, for example to sth that has recently changed in society: The government is facing an angry backlash from voters over the new tax.

a strong feeling among a group of people in reaction to a tendency or recent events in society or politics:
the Sixties backlash against bourgeois materialism
the backlash against feminism

1. strong reaction: a strong adverse reaction among a group of people to an event, development, or trend, especially one that benefits another group
2. violent backward movement: a sudden violent backward jerking movement, e.g. when a cable breaks under strain
3. mechanical engineering recoil between machine parts: a jarring recoil that sometimes occurs when worn or badly fitting parts of a mechanism come together
4. mechanical engineering play between machine parts: excessive play between adjacent parts in a mechanism such as a set of gears, usually as a result of the parts  being worn or badly fitted
5. fishing twisted fishing line: a tangle in a fishing line wound on a reel

 辞書ごとに説明が異なる部分もあるが、概ね「政治、社会、文化の進展を進めるような出来事やモードに対する、集団的で大きな反発の現象」というような意味で用いられている。日本語では、似たような言葉に「反動」(保守-反動)があるが、「反動」は、『広辞苑 第五版(電子辞書版)』(岩波書店、1998)において次のように解説されている。

はん-どう【反動】(reaction)
1.一つの物体が他の物体に作用を及ぼすとき、反作用をうけてその物体自身の運動状態が変化すること。ゆりかえし。
2.ある動きに対して生じる反対の動き。「好景気の―がこわい」
3.歴史の潮流に逆行して、進歩をはばもうとすること。

 特に政治をめぐる言説実践においては、「革新」に対する「反動」として、「3」の意味で否定的なニュアンスと共に用いられることが多い。「バックラッシュ」という言葉もまた、「3」の意味でラベリング的に用いられることも多いため、本稿では「バックラッシュ」を「反動」とは差異化し、(1)(「ジェンダーフリー」と、それに対する批判や反発という)異なるコミュニケーションが交錯することで生じる、(2)(内面や政治的スタンスではなく)集団的な分極化によってもたらされる「現象」を指す言葉として用いる 。

 「バックラッシュ」は政治的な「揺り戻し現象」一般を指して用いる事が多いが、類似の言葉「スウィングバック」(振り子現象)が二元論的な政治的選択対象の(例えば米政治における共和党と民主党の間のような)往復運動を指して用いられるのに対し、バックラッシュはある思想や運動、文化、コミュニケーションの指向性に対する「反(アンチ)」のリアクションの総体――そのうちの観察、記述可能なもの――を指して用いられるため、「揺り戻し」や「スウィングバック」とも差異化して用いる。

 「バックラッシュ」という呼び方自体は、ある特定のコミュニケーションを進めようとする立場から一元的に観察したものである。バックラッシュを受けたシステムは、その反応について吟味・言及・レスポンスしながら、自らのコミュニケーションをさらに駆動させるための動機付けとして組み込んでいく。その仕方は、コミュニケーションのタイプによって異なるため、「保守」言説の推進から観察して「革新」言説の高まりがバックラッシュとして機能することもありうる。

 ある「抵抗」が「バックラッシュ」として観察されるには、そのコミュニケーションにとって観察可能、記述可能な状態でなければならない。また、仮にバックラッシュを起こした要因が複合的なものであったとしても、そのコミュニケーションにとって「バックラッシュ」として認識されない場合は、その他の「要因」は「バックラッシュ」として扱われない。「バックラッシュ」として観察された現象の要因自体は複雑で多元的であったとしても(例えば経済、文化、政治、法、外交など、様々な問題含んでいたとしても)、コミュニケーションは観察としての「バックラッシュ」を独自の仕方でコミュニケーションへと導入していく。

 このような理由により、「現象としてのバックラッシュ(バックラッシュ一般)」(本稿では括弧なしのバックラッシュ)と「観察としてのバックラッシュ(フェミニズムへにより観察される批判言説への瞬間的な高まり)」(本稿では括弧のついたバックラッシュ)とは区別する。


続き:0-3 研究の背景