583 名前:名無しさん@秘密の花園 本日のレス 投稿日:2009/07/14(火) 16:41:56 OjCNeEB5

「モモ! 居るのか!」
私は辺りをぐるりと見回す。
「はい、ここに居るっス」
すると背後から聞こえる声。
「モモ、居たか……」
モモの能力――ステルスは毎回心臓に悪い、と思う。
背後を取られる驚きもあるが、それ以上に。
――いつモモが居なくなってしまうのでは無いか、という不安。
「居なくなったと思ったっスか?」
まるで心を見透かされたかのようなその問い掛けに。
「ああ、心配した」
私は包み隠さず本心からそう答える。
「えへへ……」
それが嬉しかったのか、はにかんだ笑顔を浮かべるモモ。
「先輩に心配されるならまた消えてみてもいいっスね」
なんて、そんなこと。
「冗談でも止めてくれ。 モモに消えられたら、私はどうしたらいいのか分からなくなる……」
せっかく見つけた君なのに……。
「……そんな泣きそうな顔をしないで下さい、先輩……」
気が付けば俯いていた私を、下から覗き込むモモ。
その表情はきっと私より泣きそうな顔をしていて。
「私は先輩の前では消えないっスよ。 第一……」
泣きそうな顔から、決意の籠もった顔へ。
その頬は若干紅潮していて。
「私の方が先輩から離れられないっス!」
なんて嬉しい事を言ってくれた。
「そうか……」
私はモモの頭を撫でてやる。
目を細くして気持ち良さそうにする。 猫みたいだ。
「それにですね」
「ん?」
「先輩のネット麻雀のハンドルネーム、覚えてるっスか?」
ハンドルネーム? ああ……。
「……かじゅ?」
「それっス。 『かじゅ』って果物の木みたいじゃないっスか?」
果物の木?
「つまりこういう事っス」
そう言うとモモは何処からか紙とペンを出して『果樹』と私に書いて見せてくれた。
「先輩は『果樹』、私は『桃』。 離れられるワケが無いっス。
先輩から離れたら、きっと私は腐っちゃうから……」
モモの顔が近い。 吐息まで感じてしまいそうだ。
全く……いつからこの実はこんなに熟してしまったのだろうか。
「モモ」
「はい、先輩」
ここなら誰もいないから……。
「その美味しそうな『桃』を、味わってみてもいいかい?」
そう言ったら、モモは真っ赤に染まって。
「め……召し上がれ、っス……///」
――ひと皮剥けば……ほら、甘そうだ。





 

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2009年07月14日 20:07