746 :真夏のガイト序:2013/03/10(日) 16:47:51.66 ID:WVQewuYA
乳がおもちであるならば、ふとももはいったい何なのかと、壮大な哲学的命題に思いを馳せて、
ふと気付けば水ぬるむ候、春の足音が聞こえてきます。どうもこんにちは。ばかです。


お久しぶりでございます。生きてました。よいよい。
アニメ放映直前、昨年3月初頭からの超長期規制に、がっつり巻き込まれておりました。
丸一年、一文字たりとも書き込めず……、ひどい。こんなことってあるんじゃのう。


あ、それより立たん! あわわわ大丈夫なんですか? びっくりですよもー、心配です。
どうかご自愛ください。ゆっくり休んで、しっかり治してくださいな。


あ、超今更ですが、ウィキの更新をしてくださった方、居られますでしょうか。
かっこいいとはあなたのためにある言葉。有志の勇士と呼ぶにふさわしい。
いろいろともう潮時なのかなーと、正直あきらめておりました。心より御礼申し上げます。
気付くのが遅れた上に、人任せでごめんなさい。インターネッツわからんのよー。


さておき、本編もおもち編も、この一年でお話が進んでるわけですが、思うさま感想書いたら
1スレ埋まりそうなので自重。でもちょっとだけ。


てるてる無双と菫ちんシュート、うおおかっけー!ビタンバタンってのたうちまわって喜んでました。
アニメもマンガも。なのにレスできなくて辛かったす。すっす。


咲ちゃんの回想、断片的ですね。宮永のしるし(ツノ)を持つ第三の少女、湖、女性二人?の影、
点滴、業火に包まれる車椅子、家族?の写真、お姉ちゃんの後ろ姿、プリン、咲ちゃんの涙……、
一体何があったのでしょうか。謎は深まるばかりでございます。


智葉さん! かっけー! ついについに、出陣だーっ!
好き勝手な智葉さんSSを投下してから早幾年、まだかまだかと待ちに待って居りました。
名前からして格好いいす。ツジでガイトでサトハですよ? かーっくぃーもー! ハフー
一見地味な戦闘モードだって、目力はてるてるや菫ちんに負けてません。ギラリ。


はっ! て、て、てるてると、ガイトさんの、直接対決とか! 真の! 頂・上・決・戦とか!
激しく競い合う二人に、何時しか特別な感情が芽生えたりとかしちゃったりとか! うわあ!
あわわわどうする菫ちんっ! かか考えただけで、わしはもう、もうもうもーーーっ! ヒャッハー


あかん、鼻血出る。冷静になろう。 ふぅ


叱られたい人ナンバーワンの座を、菫ちんと激しく競い合ってます。わしの脳内でなー。
ちなみに可愛い名前ナンバーワンは、我らが王者、みやながてるてる。照さまー。


にしても、もう24局とは。アニメ化すごかねー。
うーん、前の通りにしていいものかどうか悩ましいところですが、またいつ規制されるか
分かったもんじゃないし、いいややったれ! ってなわけで、はい、SS投下でございます。


規制中に溜まったSSは全部ぼーつ! 気持ちも新たに、相変わらずの好き勝手しました。
連投規制よけ5分間隔投下。5~6レスれす。  どぞ


747 :真夏のガイト?@:2013/03/10(日) 16:52:15.58 ID:WVQewuYA
出 演:辻垣内智葉、ダヴァン、ネリー、その他エキストラの皆さん
百合分:ゆるり エロ:さっぱり ばか:たっぷり
覚えている方はおられるでしょうか、明日のガイトの続き、というか全国大会の少し前、
サトハさんの、なんてことない休日のお話しです。

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「 真夏のガイト 」



東京臨海副都心――。
およそ400年前には海の底だったこの街は、その土台の成り立ちからして人の手による造成だ。
歴史的に見れば、幾度かの壊滅的な災厄にも見舞われている。しかしその都度、奇跡と言われる程
の短期間で、復興を成し遂げて来た。タフネスだ。その生命力?の秘密は何なのか。


単に地政学的な優位による選択、などでは済まされない。そこにいた人々の、そこにいる人々の、
思いの力のようなものを感じずにはいられない。……というのは少々、感傷的に過ぎるだろうか。


近代的且つ大規模な港湾設備や商業施設等の建ち並ぶ現代のその景観は、まさに国際都市・東京を
象徴するものである。しかしそんな大都会であるこの街も、大通りからひとつはずれて町中へと
踏み込めば、当然そこで暮らす市井の人々の、日々の生活の場が広がっていたりもする訳で。


天頂に太陽がまぶしく輝く正午の少し前、海風の吹き抜ける運河沿いの道を、白いワンピースを
着た少女が歩いていた。長い黒髪を後ろでざっくりと一つに束ね、袖を通さずに肩に薄手のサマー
カーディガンを掛けている。足下はサンダルをつっかけているだけで、手には、白いビニール袋と
もう一つ、網袋に入った大きな西瓜を提げている。


少女の後ろにもう一人、小さな女の子が歩いていた。一見妹のようにも見えるが、その髪や瞳の色
から、いや、そのまとう服装や雰囲気からして、異国の出身であると見て取れた。


「あらー、お嬢ー、ネリーちゃんも。おめかししちゃって、どこ行くんだい?」
運河から貯木場へと続く水門脇の日陰に、作業の休憩中とおぼしき数名の壮年男性が座っており、
その傍らに立つ恰幅のいいおばちゃんが、笑いながら年長の少女に声を掛けた。


「フフッ、てやんでぃ、普段着だよ」
足を止めて腰に手を当て、臨海女子3年・辻垣内智葉が、静かに笑って啖呵を切った。渋い。
恥ずかしそうに智葉の後ろに隠れながら、同校1年・ネリー・ヴィルサラーゼがお辞儀した。
「何だ皆、サボってんじゃないよ、お天道サン見てるよ」 智葉ちょっと苦笑い。


「うへぇ、手厳しいや」 うははっと、職人風の男達が、少しばつが悪そうにして笑った。
「ほれみな怒られた。お嬢、もっと言ってやっとくれ」 おばちゃんが、ため息混じりに言った。
「でもなぁお嬢、こう暑いってぇとなー」 初老の職人が、愚痴をこぼす。


「なんだい、木場の職人は何時からそんな腑抜けになっちまったのさ」 言いつつ智葉がポイッと
西瓜を職人達に向かって投げた。「おわっ、と」 一番手前にいたおっさんが慌てて受け止めた。


「それ、食いな。しっかり水取んなよ。運河の上で熱中症なんざぁ、洒落にもなんねぇからさ」
「おお、ありがてぇ」 「あざっす!」 ざっと一斉に、おっさんたちが頭を下げた。
「いいってことよ」 すぱっと言い放つと、ネリーと共に、颯爽とその場から立ち去っていった。


「はー、鯔背だよねぇ。品があるってぇかさ」 惚れ惚れ、といった様子で、おばちゃんが呟く。
「あれで麻雀は鬼みてぇに強ぇえってんだから、てぇしたもんだよなあ」 うんうん。
「でも西瓜、冷えてねぇっす」 「タコ! 野暮なこと言うない」 皆わははっと笑顔になった。




狭い路地裏を抜けると、近年の再開発の波に取り残されたかのような、古びた商店街の端に出た。
この辺りは、昭和の頃の風景が未だ手つかずで残されている……のだそうだが、その時代に生まれ
ていない智葉には、幼い頃からの馴染みの光景のひとつでしかない。でも少し、懐かしい、という
感覚を覚えてしまうのは、何故なんだろう。


「来来軒」 という、ありきたり過ぎて今や珍しい屋号を暖簾に染め抜いたラーメン屋の裏手に、
智葉は迷わず入っていく。木造二階建ての、所々錆び付いた外階段を、カンカンと上った。
薄っぺらなドアの前に立つ。その横の、おそらく元は蒲鉾板と思われる表札には、へたくそな字で、
「だぶぁん めがん」 と書かれていた。


ノックしようとしたそのとき、カチャッとドアが開いて、智葉は軽く身を引いた。
「ああやっぱり、サトハ! ウェルカム!」 満面の笑顔で、メガン・ダヴァンが出迎えた。
「生きてたか。邪魔するぞ」 ニッと笑った智葉の後ろから、ネリーがひょっこりと顔を出した。
「メガーン、私も来ターッ」 「ネリー! ヘイらっしゃーい!」


六畳一間の狭い部屋に、二人を招き入れた。開け放たれた窓には簾が掲げられていて、日光は遮ら
れているが、蒸し暑い。エアコンの類はないらしく、かなり年代物の扇風機がうなりをあげて首を
振っていた。玄関の脇には、小さな台所が設えてある。その奥の壁面には、これまた年代物で小振
りな冷蔵庫が置いてあり、その脇に段ボール箱が二つ積んである。


「昼まだだろ? どれ……やっぱり」 入ってすぐ冷蔵庫の扉を開けて、智葉がため息をついた。
縦長のガラス瓶に八分目程の麦茶、あとは中身が半分ほど減っているモヤシの袋があるだけだ。
「今からラーメン作ろうと思ってたんデス。二人もドーデス?」 段ボールに手をかける。
その中身は全部、袋入りのインスタントラーメンなのである。


「……おまえね、そんなんじゃ今に身体こわすぞ」 あきれた様子で、智葉がため息をついた。
「イエイエ、これでもちゃんと、バランスを考えてますですネ。しょうゆ、みそ、しお、とんこつ
の、カンペキなローテーションで回してマース」 何か根本的に間違っている。


「あはは、メガン、サトハがね、ごはんツクってくれるって」 
「! おぅっ、久しぶりデース、サトハの愛妻べんとーウ! イェアーッ!」 ダヴァン小躍り。
「やかましい。愛妻でも弁当でもないよ。大人しく座って待ってな」
カーディガンを段ボールの上に軽く放り投げ、ビニール袋を流しに置いて、食材を取り出す。
蛇口をひねって、流水で野菜を洗い出す。


手慣れた様子でテキパキと動く智葉の腰にまとわりついて、ネリーがのぞき込む。
「サトハー、なにツクるー?」 目がキラキラ輝いている。
「ん? フフ、あとのお楽しみだ。ほらネリー、あっちでメガ子と遊んで待ってな」
「私すいか食べたかったヨー」 「ああ、すまん、ついな。帰り掛けにまた買ってこう」
なんかもう、端から見たら、仲良し姉妹か親子のようである。


「サトハさっきムツカシイ言葉使ってた。アレもニホン語? えと……ヤンデー」
「ん? ああ、あれはネリーは覚えなくてもいいんだ」 まな板を置いて、包丁を洗う。 
「えーヤダー、サトハの言葉、ネリーもしゃべるー!」 ぎゅっと抱きつく。
「ほら、危ないって」 なんかもう、いちゃいちゃと言ってもいいレベルである。


「江戸ッコ言葉ですネ、てやんディべらぼうメー、って」 ちょっと得意げにダヴァンが言った。
「メガン、しゃべれるの?」 智葉の背中に抱きつきながら、ネリーが訊いた。
「ええ少し……って、ネリー、さっきからちょっと、くっつきすぎデスヨ?」
「ウフフ、いいんだもーん」 ぎゅっ。「ああっ、ズルいデス!」
狭い部屋の更に狭い台所に3人である。ぎゅうぎゅうである。おまけにきゃいきゃいかしましい。


「だから、二人とも、あっちで大人しく座ってろっての」 手を止めずに智葉が言った。
「ダッテずるいデスよ! サトハ私がハグすると逃げるのニー!」 ダヴァンぷんすか。
「しかたないだろ、ネリーはちっちゃいんだから」 めんどくさそうに智葉が答えた。
「ネリーは15歳デスヨッ!?」 つい忘れがちだが、そうなのだ。


「んなことより、米櫃、空だぞ」
「Oh、いけない、切らしてたんデシタ! ちょいと下の店で借りてきマース!」
「ラーメン屋サン! ネリーも行くヨー!」 ドアを開け放ち、二人で部屋を飛び出していった。
「……まったく」 ちょっとだけため息をついて、智葉が小さく笑った。


少し風に煽られて、窓に吊された江戸風鈴が、コロロンッと涼しげな音を立てた。




「ワ・レ・ワ・レ・ハ、チキュウジン、ダ~」 扇風機の前にぺたりと座って、ネリーが呟く。
「ネリー、そこは、”うちゅうじんだ~” デス」 まじめな顔して、ダヴァンが言った。
「お前ね、あんま変なこと教えんなよ。ほら、そこかたせ」 料理の盛られた皿を持って、智葉が
台所から居間に入ってきた。ちゃぶ台の上に置かれた団扇を、ダヴァンが脇によけた。
智葉特製スタミナ肉野菜炒めとナスの生姜焼きが、ちゃぶ台に並べられた。おいしそうである。
「「いっただっきまース!!」」


「うまーーー! デース!」 「ウマーーーッ!」 フガフガと、がっつく二人。
「あわてなさんな、ちゃんと噛むんだ」 智葉が微笑む。少し嬉しそうだ。


「モグモグ、ゴックン……ああ、サトハの愛を、ヒシヒシと感じマース」 ダヴァンちょっと涙目。
「ここに来て夏バテにでもなられたら、たまらんからな。しかたなく、だ」
「おぅ、ツンデレですネー? ぁ痛っ、アタタタ」 きゅっと智葉がダヴァンの頬をつねった。 


「私ね、こないだママンにネ、手紙ね、サトハはニッポンのママだヨって書いタヨー」
ぺかーっと笑って、ネリーが言った。 「ネリー、うら若きサトハにソレはどうなんでしょウ」
「ネリーのママ、か……ん、そっか」 智葉がにっこりと笑う。現地ママ。なんちて。
「ノン! サトハは私の嫁なのデスっぁ痛った、タタタタ」 ほっぺきゅーっ。 


「あはは、メガンはパパみたいだヨって書いたヨ」 無邪気に笑う。
「はは、さすがにそれはどう……って、どした? メガ子?」 智葉がダヴァンをのぞき込む。
俯いて、少しプルプル震えているように見える。ショックだったのだろうか。
「おい、そんな怒んなよ? 確かにお前、たまに助平なおっさんくさいし」


「……ってコトは! 私タチは家族っ! That is! 私とサトハは、フーフッ!!」
「ああ、ちょっとでも心配した私が馬鹿だった」 智葉ジト目。


「メガン……ううん、ダディ」 「Oh、ネリー……」 見つめ合う二人。
「ダディーー!」 「ネリーー! マイサンッ!」 がしーっと抱き合う二人。
「あのな……君らは一応、女子だからな?」 しかもすこぶるカワイイからな?


ダヴァンがきゅっと智葉の方を振り向いた。「な、なんだ?」 ちょっと警戒する智葉。
「ネリーの公認を得ましタ! さあサトハ、いやさマイハニーッ! 熱いベーゼをーーっ!」
がばーっと、智葉に襲いかかった。「おぅわっ! ちょ、暑い! ばかっやめ、ネリーが見て」
「ネリー、見てないヨー」 ネリーが手で顔を覆った。指の隙間から見てるけど。


「イーじゃないデスカ! さぁネリーの妹をツクりましょオァウチッ、痛いイタフガガガ」
ダヴァンの彫像のように整った綺麗な鼻を、きゅーっと摘んで智葉が押しのけた。
「まったく、お前と言い監督と言い、どうしてこう……」


「! カントク? あの女タラシ、性懲りもなくサトハに言い寄りやがってマスカ!?」
むむっと真剣な表情になって、智葉の両肩を掴み、ダヴァンが言った。
「サトハ、アノ人はいけまセン! そりゃ美人デスけど、きっと浮気しマース! あたっ」
団扇でぺんっと、智葉がダヴァンのおでこを叩いた。


「あほう、色ぼけしてんじゃないよ。来週にはもう全国大会だぞ、気合い入れろ」
「ウウウ、大まじめデスのニ~」


これまでも何回か、智葉に愛を打ち明けたことがある。陽気なキャラクターが災いしてか、冗談だ
と思われたのか、いずれもケンもホロロにはぐらかされた。そんなあるとき、少し困ったような顔
をして笑いながら、智葉はこう言った。「……恋だの愛だの、よくわからん」


智葉は、学業以外、その情熱の大半を麻雀に注ぎ込んでいる。日々直向きに努力するその姿勢は、
ある意味峻烈なものと言ってもいいくらいだ。智葉から距離を置く位置にいる者たちから見れば、
そうした面が冷淡な態度に写ったりするのか、“アイスドール” などと陰口をたたかれることも
あるようだ。大きな誤解だ。真実は寧ろ逆だ。サトハはあったかい。包み込む様な優しさを持つ。
彼女が厳しいのは、専ら勝負に対して、そして己自身に対して、だ。


戦いに臨むとき、智葉は髪をまとめ眼鏡を掛ける。カチッとしたその姿と精緻を極めたかのような
その打ち筋からか、“教授(プロフェッサー)”なんて二つ名で呼ばれることもあるらしい。
相手が誰であろうと全力で叩き潰すその闘牌は、眉一つ動かさずに躊躇なく敵を斬り伏せる武芸者
に例えられたりもする。いずれにしろそのイメージは、峻厳且つ冷徹、ときに冷酷、だ。


そんな声を耳にしたときダヴァンは、近所の子を集めてたまに開く、麻雀教室でのサトハの笑顔を
皆に見せてやりたいような、自分だけの秘密にしておきたいような、妙な感覚を覚えてしまう。
まあ何にせよ、天性の優しさの上に、己を律しコツコツと積み上げてきた智葉の強さは、盤石だ。
(私こそが、サトハをイチバン知ってマス。アイノウ、イチバン! ……デモ)


一緒に過ごしているうちに、自ずと気付いたことがある。メガン・ダヴァンは確信している。


…… I know 辻垣内智葉は 宮永照に 恋してる。




日が沈んだ直後の運河沿いの道に、風が吹いている。気温はそれほど低くはないが、昼の暑さに疲
弊した身には、心地よく涼しい。「ビューンッ、あははは」 両手を広げてネリーが駆けて行く。


蒼く染まった景色の中、ネリーに少し遅れて、智葉とダヴァンが歩いていた。
「ネリー、走ると危ないぞ」 解いた髪が風に煽られて、智葉の細く白いうなじが覗く。
(オゥ、美しい……) 智葉の横顔に見とれるダヴァン。


「寮に入れば冷暖房完備で、食事の心配もないのに、お前は変な奴だよ」 智葉が呟く。
「イイエ、ココがいいんデス。皆サン親切ですし、セントーも楽しい」 ダヴァンが答える。
「第一、アノ寮には、畳がありまセン」 まじめな表情で、うんうんと頷いた。


「本当、変な奴だな」 くすっと笑う。
「……サトハ、今日はよく笑いマス。何かとても嬉しそウ」
「ん? そうか? ……いや、うん。柄にもなく、はしゃいでいるのかもな」
二三歩トトッと前に出て、くるっと回って、智葉がダヴァンの方を向いた。


「団体戦って、いいもんなんだな」 ふわりと笑った。 (ああ……ああサトハ)


「卒業したら、国へ帰るんだろ? ……絶対、勝たなきゃな、っぅわっ」
ダヴァンがぎゅっと智葉を抱きしめた。「こら、苦しっ、だから暑いって言って、」
「私タチは勝ちマス。勝てマス! 今のサトハなら、アノ宮永照だって倒せマス!」
抵抗していた智葉の両腕から、フッと力が抜けた。「……もとより、そのつもりだ」


世界レベルの実力を持ちながら、大人の事情に翻弄されて、団体戦には出場すら出来なかった。
正しく評価されずとも、折れず腐らず黙々と、ただひたすら己の道を追い求めてきた。
この不遇な孤高の英傑に、華奢な偉大な才媛に、必ず、必ず勝利の栄光を!
「及ばずながらこのワタシ、サトハのために、サトハの力に! きっとなってみせマショウ!」


「……ばか、チームのため、だろ?」 智葉がその頭を、軽くダヴァンの胸にあずけた。
「ん……頼りに、してる」 爽やかな芳香が、微かにダヴァンの鼻腔をくすぐった。智葉の香り。
(!? こ、コレは……サトハのこんなリアクションは、初めてデス! こ、コノ流れは……)


メガン・ダヴァンの脳内ブロードウェイ、イッツショーターイムー。


「決ィ~まったー! インハイ優勝は、臨海女子っ! 先鋒・辻垣内の作った大量リードをさらに
広げて、大将戦を待たずにメガン・ダヴァンが決めましたーーーっ!!」 こーこちゃん叫ぶ。


「フッ、良い対局でしタ……」 静かに席を立つ。そのとき、対局場に駆け込む一人の少女が!
「ハァハァ、メガ子っ!」 「Oh、サトハ! やりましたよ私タチ! 優勝デス!!」
吸い寄せられるように近づき、しっかりと抱き合う二人。(※感動的なBGMスタート♪)


「サトハのおかげ、デス」 「……違う。決めたのはメガ子、ううん、マイ……ダーリン」
「! さ、サトハ! ワタシを選んでくれるのデスネ?」 ダヴァン歓喜の涙目。


「まいったネ、私の負けだヨ。……二人とも、幸せにな」 監督がフゥ、とため息。
「はっ、カ、監督!」


「……おめでとう」 微笑みながら、宮永照が小さく拍手をしている。
「宮永サンもッ! お二人とも、私タチを祝福してくだサルのデスネー!」


「ダーリンはもう、私や宮永照より強いね」
潤んだ瞳をそっと閉じて、智葉、ちゅースタンバイ! シグナルオールグリーン!


「サ、サトハ、マイスウィートハニー……」


そして二人は……、  アハンウフン ビビクン  ヒャッハー


……インターナショナルすっとこ脳内劇場、閉幕ー。


「サトハ、ジュッテ~……ムぐぐっ、むー!」
ちゅーっと迫るダヴァンの唇を、うにゅーっ、と摘んで、智葉が笑った。
「調子のんな、えろメガ子」


「モーおしまいー?」 いつの間にかネリーが傍に来て、じーっと二人を見つめていた。
「ネリー、ちょっとあっち向いててくだサ……オゥ」 智葉がダヴァンをぐいっと押しのけた。


「夏の終わりに、ここで花火大会がある。ネリーは初めてだな」 「! ハナビッ!」
「ああ、そうデスネ。キレイですヨー。皆で見に来まショー! 勝利の祝砲とするのデス!」
「オー! ガンバルヨー!」 ネリーがくるっと回って、ぴょこんっと跳ねた。


運河の向こうの街灯りが、歩く三人を淡く照らす。
港の遙か沖合に浮かぶ大型船からか、遠い汽笛が、風に乗って届いてきた。




各々の夏の物語が、幕を開ける。思い描くその筋書きは、それぞれ違うものだろう。
でもそれは、心の深いところで、空の高いところで、きっと一つにつながっている。


敵も味方も個にして全部――。
頂上の雀卓、小さな台座の上に集うのは多分、全国の、全ての選手の、想いの結晶だ。


例年、大会は大きな盛り上がりを見せるが、今年は特に何かが違う、と誰しもが感じていた。
しかし具体的にそれを説明できる者はいない。
ただ巨大な運命の輪が、重い地響きと共にゆっくりと廻り始めている、
そんな得体の知れない空気が、世に満ちているかのような雰囲気なのだ。


辻垣内智葉と宮永照の激突は、実現すれば、苛烈なものとなるだろう。
荒川憩、神代小蒔、愛宕祥榎……他にも錚々たる強敵が、智葉たちを待ち受けている。


そしておそらく臨海女子の面々は、未だかつてない強大な敵と邂逅することとなる。


そう……もう一人の、“宮永”と。



熱い熱い智葉の夏が、今、はじまる。



*****************

以上 読了感謝  デスネー


753 :真夏のガイト後書:2013/03/10(日) 17:16:17.90 ID:WVQewuYA
はい、お疲れさまでした。ありがとうございました。
ふははは捏造てんこ盛りですな。キャラが魅力的だから止まらんのよー。
立たん早くよくなりますように。はっ、そうだ憩ちゃんが看護すればいいのでは!
はっ、でも手違いでモコちゃんが来ちゃったら、なんか大変なコトになるのでは!


我らが咲ちゃんを強大な敵呼ばわりしてもーて、何か心が痛みます。でもあんな可愛いのに、
涙目でプルプルしてたりするのに、ものっそい強いんだから、致し方あるまいて。
ヘイヘイ、咲ちゃん可愛いよー、プロもびびってんぞー、ヘイヘーイ。


ダヴァ子ちゃんの脳内劇場のBGMはアレです多分、ほらあの船のやつ。
エンダァーーーイァアーー…ハ、 ハンハフンフンフーン…ゥオーイヤァアーーーってやつ。なんだっけ。
何にせよ、あほの子パゥワーは国境の壁を越えるのです。きっと世界を救うのです。知らんけど。


ばってんA○-Xってなんね。ほかのアニメばあんまし見よらんけ契約ばする気んならん。
青光盤待ちじゃのー。SSでも書いてしのぐとするばい。


さて、そろそろ時間となりました。本日お別れの曲は、とびきりスタイリッシュなナンバーです。
作詞作曲・園城寺怜さん、歌うはスタイ○ップスの皆さんで、『ふなきゅー音頭』 どぞ


 ♪きゅきゅきゅのきゅ きゅっきゅきゅーのきゅ ふなきゅー音頭できゅっきゅっきゅー


♪名門~校のメガネ枠~♪(ア サテ) ♪知的や素敵やヘイふなきゅー♪(ドッコイ)
♪今だ勝負だ負けへんぞ~(アソーレ) ♪千里のお山も一歩から!(アラヨット)


 ♪きゅきゅきゅのきゅ きゅっきゅきゅーのきゅ ふなきゅー音頭できゅっきゅっきゅー


♪分析作戦まかしとき~♪(デモ) ♪セーラが気になるお年頃~♪(キャー)
♪今だ勝負だわるい顔~♪(ホイサット) ♪ニヤリと笑ってハイ、リーチ!(ア ソーレ)


 きゅきゅきゅのきゅ、きゅっきゅきゅーのきゅ ふなきゅー音頭できゅっ、きゅっ、きゅー♪


…… オケーセンキュー シーユーネクスターイ ではまたー

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最終更新:2013年04月03日 00:19