21 清澄照① [sage] 2010/01/12(火) 02:51:47  ID:dwQv08+B Be:

つSS 前スレ744の続き 5レスほど 出演:照和(壊れ気味)、咲衣久まこ優希
百合分:すみません エロ:ごめんなさい ばか度:すごいぞ if話。いろいろスルー願います。

≪前回までのあらすじ≫
咲と衣が二人きりのお茶会!!
久から驚愕の事実を告げられた、”咲大好き”照と和は、急ぎ現場へと向かう。
この事態を予測していた久は、事前に斥候として優希を投入していた。
全てを見届けるべく、久はまことともに、照と和の後を追う。
何も知らない咲と衣。しかし咲は己に向けられた何かを感じ取る。
迫り来るのは果たして、守護の女神か愛憎の鬼か…って感じで、
↓スタート
**********************************
「if 照 in 清澄 ~妄想姉妹~2」

駅から少し離れた喫茶店に、こそこそと入っていく二つの影が…久とまこである。
「遅いじょー。こっちこっちー」 気づいた優希が、小声で呼び掛けた。
「ごめんごめん、ご苦労様。で、どう?様子は?…あれ?咲と天江さんだけ?」
奥の窓際の席に、咲と衣が座っていた。楽しそうに談笑しているようだ。
こちら側は、丁度観葉植物が遮蔽物となっているため、見つかる心配はなさそうだ。

「てる姉ちゃんとのどちゃんなら、まだ来てないじょ」
「どしたんじゃ、あの二人は。うちらよりも前に出よったのに」

* * *
「…お義姉さん……」 「………」
「てるお義姉さん…」 「………」
「道、間違えましたね?」

「…私に義理の妹などいない」 ぷいっ
「誤魔化さないでください!」 ポヨンッ
「だ、だって仕方ないだろう!そんな店、知らないもんっ!」 ぷいっ
「もんっ!じゃないですよまったくもう」 はぁっとため息をつくのどか。

「のどかだって何も言わずについてきたじゃないか!」
「自信満々で走ってくから、てっきり知っているものだと思ったんです!」
ここは、今、咲たちがいる店から見ると、丁度駅をはさんで反対側である。
住宅街の途切れるあたりで、目前にはのどかな田園風景が広がっていた。

(ふぅ、こういうところは姉妹そっくりですね。麻雀のときは怖いくらいクールなのに…)
「…何か言ったか?」 「な、何でもありません。さ、早く行きますよ!」
照は立ち止まったままである。下を向いてムスっとしている。妙に子供っぽい。

「? どうしたんですか?」 「…のどかは最近、すみれに似てきた。すぐ怒る」 ムスッ
「すみれって、弘世菫さんですか?」 弘世菫。風越女子の麻雀部3年生である。
福路美穂子と並び、伝統の風越の双璧と呼ばれ、県内では知らぬ者のない全国区の超強豪だ。
照とは中学時代の同級生であり、ライバルであり、大親友でもある。

…っていうか、菫が照に恋してるのは、周囲の人間にはバレバレなのだ。
気付いてないのは、当の本人、照くらいだろう。

(お義姉さんの清澄進学で一悶着あったとか聞いたけど、やっぱり仲がいいんですね…。
菫さんご苦労なさってるんですね…お察しします。でもそれがまた良かったりするんですよね
…はっ!菫さんがお義姉さんをしっかりつかまえていれば、私と咲さんは次の高みへと…)

「何をブツブツ言っているんだ?」 「はっ、い、いえ何でも!さ、行きましょう!」
和が照の手を取って、駆け出した。 「急がなくては、咲さんの唇が危険です!」
移動中も妄想していたのか、いつの間にかほっぺたの危機が唇の危機に昇格していた。
「おおっ、そうだった!咲っ!お姉ちゃんが行くまで、がんばるんだよ!!」
こっちもいろいろ脳内ストーリーが進展しているらしかった…。

* * *
「来たじぇ」 「おっ、真打登場ね」 「うう、わしゃ心臓が痛い」ついに照と和が来た。
すばやく店内を見回すと、咲と衣を見つけ、衝立越しにすぐ隣の席へ座った。
咲は二人に背を向けた状態で、衣も話に夢中で、照たちに気付いた様子はない。

「へぇ、意外ねー。まっすぐ突っ込むかと思いきや…」
「きっと様子見だじょ。何話してるのか気になるんだじぇ」
「しかし隣の席とは。十分大胆じゃのう…」

「いらっしゃいませー。ご注文は?」 「「しーーーっ」」 人差し指を口に当てて諌める。
「へ?」 キョトンとするウェイトレスのお姉さん。
「ああいや、その、私はアールグレイ」 「ええと、オレンジペコ、お願いします」

「? かしこまりました。少々お待ちください」 二人につられて小声で言い、テーブルに
突っ伏すように身をかがめる照と和を不思議そうに眺めながら、お姉さんは厨房へ向かった。

* *
「…でもよく見つけたね、この本。ありがとう」 「なあに、龍門渕の書庫にあったんだ」
衣がふふんっと得意げに笑った。でもちんまい。

「ああ、『龍門文庫』!凄いねえ。いいなあ」
「そう良くもないぞ。埃っぽくてかび臭い。昼なお暗い巨大な洞穴って感じだな。で、そこに
こう、書架がずらーっと。奥のほうなど書画がぎっしりで、まさに盤根錯節って有り様だ」

「ふわー。ホントにすごいねえ」 「見てみたいか?来るがいいぞ。透華に頼んでおこう」
「いいの?嬉しい!」 ぱぁっと笑顔になる咲。
「ふふっ。もちろんだ。でもそんなに面白いものでもないがな。…出るっていう噂もある」
「えっ…で、出るってまさか…」 一転さーっと青ざめる。

「そう、ゆーれーだ。誰もいないはずなのに、蝋燭のような明かりが灯る。足音が響く。
暗闇の奥に佇む鎧武者、書架の間を滑る様に移動する謎の貴婦人…異界の住人たちが!」

「ひゃあっ!やだヤダやめてっ!」
「あはははは、すまぬ許せ。さきは怖がりだなー」
「もーっ、ころもちゃんのいじわる!…で、でもホントなの?」
「そういう噂があるのは本当だ。それらしき気配を感じることもある。が、見たことはない。
何、そう気にするほどのものでもあるまい」

「そ、それって要するに何かいるのはホントってこと?」
「だいじょぶだ!このお姉さんであるころもがついているのだ!安心立命、間違いなし!」
衣がふんぞり返って薄い胸をぽんっと叩いた。

(くっ、咲のお姉ちゃんは、私だけだぞ!…しかしこの流れは…) …妄想、開始ー。
「お姉ちゃん…」 「ん…。どうした咲。こんな夜中に」
「えとね、えっと…い、一緒に寝ていい?」 「ん?どうした、怖い夢でも見たのか?」
「昼間にちょっと、怖い話聞いちゃって…だめ?」 「ダメなものか。さ、おいで」
嬉しそうに布団に潜り込む咲。ぎゅっと抱きついてくる。
「えへへ、こうするの、なんだか久しぶりだね」 「そうだな。さ、安心しておやすみ」
「…お姉ちゃん、あったかい…」 ぎゅっ。
…妄想、終了ー。(よーし、よしっ!これだ!この流れだ!!ころも、グッジョブ!)

(そそそんなオカルト、ありえません!…だけど、この流れは…) …妄想、開始ー。
「うわ、すっかり遅くなっちゃったね…外真っ暗」 「そうですね。帰りましょうか」
「うー。のどかちゃんと別れたあとの帰り道が憂鬱だよ…」
「私も…。そうだ、咲さん、今日、家へ泊まりに来ませんか?」 「へ?いいの?」
「もちろんですよ。一緒にいて、たくさんおしゃべりしてれば怖くありません」
「うん、そうだね!じゃお言葉に甘えちゃおうかな、えへへ」 腕を組んでぎゅっ。
「はい。夜更かししちゃいましょ、うふふ」 あははははうふふふふ…
…妄想、終了ー。(これです、いけます!この流れに持っていく!!ころもさん、ナイス!)

「ときに、ノノカはどうしてる?息災か?」
「うん。元気だよ。のどかちゃんは人気者だから、最近は委員会とか忙しいみたい…」

ふっと目線を下げ、俯く咲。その様子を見て衣が訊いた。
「? どうした、何か気になることでもあるのか?ころもお姉さんに言ってみるがいい」
「でも…いいの?こんな話…」 「水臭い。何でも話せ。このお姉さんであるころもに!」

「うん、ありがと。それじゃあ…あのね、お姉ちゃんと、のどかちゃんなんだけど…」

「「!!」」 すわっ、衝立にへばり付くようにして、照と和が聞き耳を立てる。
「お待たせしま…あ、あのー、お客様…」 紅茶を運んできたお姉さんが固まる。
「「しーーーっ!」」 「……ご、ごゆっくりどうぞー」

「あーあー、なにやっとんじゃありゃ」 「ヤモリみたいだじぇー」
「ぷぷー、っく、くくくくっひー、く、苦しい、おなか痛いーまこー」
涙目になって笑いを堪える久が、まこの肩をぺちぺち叩く。
「ああもう、こらえんさい!…しかし、この状況…、あの二人が暴走したらすぐ出るけぇね、
出撃準備じゃ!」

「…あのね、二人とも凄く優しくて、私、一杯いっぱい甘えちゃってて…
でも最近こんなでいいのかなって。のどかちゃんは全中覇者、お姉ちゃんはミスインターハイ
なんて呼ばれてて。そんな凄い人たちが、私なんかをあんなに構ってくれて、…もしかしたら
わたし、二人の負担になってるんじゃないかなって…」

「ふむ、さきも十分凄いと思うがな。しかし、負担か…どうしてそう思う?」
「えっとね、たまに二人が言い争いみたいになったりするの。それってもしかして、私のせい
なのかなって思うの。私がいつもぐずぐずしてるから…」

「あはは、心配ない。二人とも咲が大好きなだけだ。各々が情緒纏綿といったところか」
「でも、二人がけんかとか、仲が悪くなったりしたら私…」

「言い争いなど、じゃれてるだけのこと。放っておけばよい。虚心坦懐」
「そう、かな…」
「そうだとも。それでも不安なら、素直な自分の気持ちを伝える努力をしてみればよいのだ。
けんかをやめてと一言言えば良い。独りで勝手に悩んでいても、何も変わらぬ」
「そっか…うん、そうだね。ありがところもちゃん。なんかすっきりしたよ。」

「…偉そうに言ったがな、ころもも同じなのだ。素直になれなくてうちの皆に迷惑を掛けた。
すぐそこに出口はあったのに、長くそれに気付けなかった。今は違う。もう壁は、ない」
「そうなんだ…でも、凄いなころもちゃん…。
今日はホントに、ころもお姉ちゃんって感じだよ。ありがとう」

「へっ!い、いや、そそそんな礼には及ばぬぞ。(ふぁーお姉ちゃんって呼ばれたー♪)」
照れる衣。年上として扱われることには全く慣れていないから、とても嬉しかったのだ。

衝立の向こうで、照と和が会話を交わす。
「…のどか、帰ろう」 「え?いいんですか、てるお義姉さん…」
「咲があんなふうに悩んでいたなんて…私は悪いお姉ちゃんだ…」
「そんな…私こそ…自分の気持ちばかり優先してました…」
そっと席を立つ二人。

「あらら~。無事収まりそうね」 「痴話喧嘩なし?出番なしでつまんないじぇ」
「何言うとるんじゃ。やれやれ、一安心じゃのう」

そのとき、衣の楽しそうな声が響いた。
「そうだ、さき、そっちのケーキ、一口もらっていいか?」
「え、うん、もちろん!……はい、あーん」 フォークに一切れケーキを刺して、差し出す。
「えへへ、あ~ん」 ぱくっ。

「「こらーーーーっ!!」」
「ひゃっ!えっ?お、お姉ちゃん?のどかちゃんも?どうしてここに?」
「はっはー、ようやく出てきたな。こそこそしおって。そっちの連中も出てきたらどうだ?」

「あちゃー。ばれてたかー」 「ぶ、部長!染谷先輩とゆーきちゃんも!」
「へへー。咲ちゃーん、ちーっす」 「いや、その、何かすまんのう」

「咲と間接キッス…衣、やってくれたな…」 「衣さん。それは、見逃せません…」
「ふふんっ。気に食わぬか?ならばどうする!」 

「「いざっ、尋常に!麻雀勝負!!」」

「えええっ?ちょっ待って、や、やめてみんな!」
咲は勇気を出して、止めようとした。やめてって、言えた。
そんな咲を後ろからそっと抱えて、久が言った。

「大丈夫よ、咲。ほら、よく見て御覧なさい。3人ともちょっと笑ってるように見えない?」
「え、…あ」 真剣な眼差し、煌々と光る双眸…。でもその口元は微かに笑みを湛えている。

「ね?これは遊びよ。純粋に真剣勝負という遊び。だったら」 咲の顔を見てニッと笑う久。
「思いっきり、楽しまなきゃ!」 ぽんっと強めに咲の肩をたたいた。

「さてどうする?部室に戻ろっか?
そうだ、まこ、部費で落とすから、ここのケーキ、ホールで買っといて!」

「戻るに及ばぬ。ハギヨシ!いるか?」 「はっ」 いきなり黒衣の執事が現れた。
「なななんじゃあ、どっから出た?!」 「うおっ!?び、びっくりだじぇ!!」

「ハギヨシ、聞いてのとおりだ。このものたちを招待する。透華に連絡と、手配を。
今日は夜通し龍門渕と清澄の対抗戦だ!」
「かしこまりました」 そう言うと執事は、残像を残しつつシュッと消えた。

「ええええええ?何じゃ?今のひと」 「透華の執事だ」 「ああ、あれが10日の羊さん」
「さきっ、書庫も見せてやる。後で探検と洒落込もう!」 「ええ!いやだってそこって…」

「さあ、面白くなってきた!みんな!気合入れていくわよ!」

突発的に麻雀大会、そして書庫探検…賑やかしく長い夜が始まろうとしていた。

でも、それはまた別のお話…。語るのは、別の機会に。

*****************
以上 読了感謝

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最終更新:2010年02月23日 06:57