編集:足立(07/02/09)


人間開発指数(HDI: Human Development Index)は、人間開発の持つ3つの基本的側面(寿命、知識、生活水準)を通して各国の平均的達成度を測定したもので、パキスタンの経済学者マブーブル・ハックによって1990年に作られ、1993年以来国連年次報告の中で国連開発計画(UNDP)により「人間開発報告書」として毎年発表されている。3つの側面は、平均寿命、教育水準(成人識字率と初等・中等・高等教育就学率を加えたもの)、1人当たりの国内総生産(GDP)が使われている。同報告書には他にも人間開発指数の他にも、ジェンダー開発指数、ジェンダー・エンパワーメント指数、人間貧困指数が紹介されている。

 指数の計算方法は、①人間開発の局面を複数選択し、それを測定するための指標を1ないし2選択する、②当該国が、当該指標の世界最高基準値と世界最低基準値の間でどこに位置するかを、世界最高基準値と世界最低基準値値の差に対する当該国の値と世界最低基準値値の差の割合で算出する、③これにそれぞれの指標のウェイトをかけて合計し、0以上1以下の指数を算出する、というものである。従来の経済指数で、国民の実態を知ることができるのは平均所得のみであったが、人間開発指数では「健康、教育、所得」の状況をも測定するので、一国の社会的な実態をより具体的に映し出している。

 HDIの構成は以下の表1のとおりで、日本は2006年版で公表されたHDI0.949で世界第7位となり、2005年の0.94311位)より順位と数値を上げた。2004年の人間開発指数をみると、上位国は欧米諸国やオセアニア諸国で占められているが、アジアでは、日本の他に、香港、シンガポール、韓国などが入っている。逆に、下位国にはニジェール、シエラレオネ、マリ、ブルキナファソといったサハラ以南のアフリカ諸国が多い。

表1 HDIの構成要素

局面

長く健康な人生

知識

それなりの生活水準

指標

平均寿命

成人識字率(15歳以上)

総就学率(第1次~第3次教育)

1人当たりGDP(指数化する際には対数化して計算)

ウェイト

1/3

2/9

1/9

1/3

世界最高基準値

85

100

100

40,000

世界最低基準値

25

0

0

100

資料:国連開発計画のホームページ

注:成人識字率はほぼ100%を達成した先進国では調査されていない。この場合は99%で計算される。

 人間開発指数は、1人当たりGDPの欠点を補う指標であるとはいえ、幸福度とは必ずしも一致していないとの指摘がある。世界数10ヶ国の大学・研究機関の研究グループが参加し、共通の調査票で各国国民の意識を調べ相互に比較する「世界価値観調査」が1990年からは5年ごとに行われている。この調査では、各国ごとに全国の18歳以上の男女1,000サンプル程度の回収を基本とした意識を尋ねており、幸福度の設問が含まれている。2000年のデータをみると、幸福度(「非常に幸せ」と「幸せ」の回答率の合計)の世界一は、アイスランドで、アイルランド、カナダが続いている。逆に幸福度が最も低いのは、ウクライナで、ブルガリア、ロシアが続いている。日本の幸福度は、60ヶ国中25位(86.5%)と半分よりやや上の水準に過ぎない。2005年は87.2%とわずかに数値は上がったものの、幸せではないとする人が約10%にのぼり、平均寿命が長く、教育水準が高いといっても必ずしも国民のメンタル面で満足しているわけではないことを表していると考えられる。


最終更新:2007年02月09日 10:04