編集:足立(07/02/09)


1)背景

 エコロジカル・フットプリントとは、人間活動により消費される資源量を分析・評価する手法のひとつで、人間1人が持続可能な生活を送るのに必要な土地面積で表わされる。地球は無限の広がりをもっているわけではないため、資源の加工・消費過程での排出物を受容する能力(環境容量)は有限である。したがって、「持続可能な発展」を達成するには、環境容量の範囲内での資源の加工・消費が必要となる。現実的には、環境収容力を超える量の資源・サービスの消費が継続し、さらに増大している状態は「オーバーシュート」と呼ばれる。生態系はある程度までこうした状態に耐えられるが、一定以上続いて限界点に達すると回復力が突如として失われ、新たな均衡状態へと遷移する。この新たな均衡状態は、それまで生存してきた種が生存できないほど厳しい環境である可能性が高く、生態系全体が崩壊することもあり得る。オーバーシュートを引き起こすと持続可能性が保証されないことから、エコロジカル・フットプリントを使った分析手法は、その発生の有無や程度の定量的把握を目的に開発された。

2)分析の考え方

 エコロジカルフット・プリント分析(指標)は、1990 年代初頭にカナダのブリティッシュ・コロンビア大学のウィリアム・リース氏と当時同大学院生で現在はEcological Footprint Networkのマティース・ワケナゲル氏を中心に開発・改良された。この指標では、経済活動における生態系への様々な負荷を「面積」という統一単位で表示する。表1には算定に用いられる土地カテゴリを示した。

表1 EF 指標における土地カテゴリの分類

土地カテゴリ

説明

農地

農作物の生産のために必要とされる土地(耕作地フットプリント)

牧草地

牧草、羊毛などの生産のために必要とされる土地(牧草地フットプリント)

森林地

家具、建材や紙製品などの生産のために必要とされる土地(森林フットプリント)

海洋淡水域

海産物を産み出す海洋、河川、湖沼等の水域(漁場フットプリント)

二酸化炭素吸収地

化石燃料燃焼などにより排出される二酸化炭素を吸収するための森林地(エネルギーフットプリント)

生産能力阻害地

道路、建物、廃棄物処理場など生産可能地の生産が阻害されている土地(ビルトアップランド)

資料:国土交通省(2004)。元は和田喜彦(2002

 エコロジカル・フットプリント分析では、次のステップで算定した値を国(地域)における生産可能な土地・水域面積、すなわち自国(地域)の環境収容力と比較することである。この2つの面積を比較することで、経済活動による資源消費と環境収容力とのバランスを判断することができる。

3)エコロジカル・フットプリントの活用

 EUでは第6 次環境行動計画において「7 つの戦略」の中に「都市環境保全」をかかげている。都市環境政策におけるモニタリングツールの開発を目的に「欧州共通指標プロジェクト」という分科会が立ち上げられた。当初は、「欧州共通指標」に10種類の指標が提示されていたが、新たにエコロジカル・フットプリントの導入が検討された。すでにエコロジカル・フットプリントの計算手法は国内外で開発が進められ、国あるいは自治体レベルで比較可能となっている。算定結果の活用先としては様々な国土計画がある。各種の計画は、計画の理念(最終目的)を最上位とする目的と手段との階層構造として整理できる(図:省略)。この場合、最終目的以外の「要素」には、さらに上位の目的に対する手段の側面と、下位にある手段に対する目的の側面がある。指標は、「要素」の進展度合いを測るための道具として用いられ、目指す水準を設定したのが目標(通常は達成時期とのセット)である。何らかのモデルによって指標と個別の対策がリンクすれば、対策の実施により指標がどの程度改善されるかというシミュレーションや複数の対策の中でどの効果が大きいかといった対策の評価が可能になる。

最終更新:2007年02月09日 09:43