市町村合併による一部事務組合の民営化
作成:野瀬光弘(6月23日)
市町村はこれまでも業務の効率化などを目的に何度か行われてきた経緯がある。例えば、明治21年の市制町村制公布に伴って内務大臣訓令を発し、全国一斉に町村合併を推進した。これが「明治の大合併」と呼ばれており、戸籍管理や小学校事務ができる規模として300~500戸を標準として行われた。その結果、全国の町村数は、明治21年末の71,314から、翌22年末の15,820にまで急減した。明治の大合併より前の町村の多くは、現在の大字や小字の名前として残されている。
昭和28年10月に「町村合併促進法」、昭和31年6月に「新市町村建設促進法」が制定された。これらに基づいて、新制中学が合理的に運営できる人口規模という点を念頭に、全国一律に人口約8,000人を標準とした町村合併が進められた。これは「昭和の大合併」と呼ばれ、市町村数は、昭和28年10月の9,868から31年9月の3,975へ減少した。
平成5年6月に「地方分権の推進に関する決議」がなされ、その後、同年10月の第三次行革審最終答申、平成6年9月の地方六団体(首長の連合組織である全国知事会、全国市長会、全国町村会、議長の連合組織である全国都道府県議会議長会、全国市議会議長会、全国町村議会議長会の合計6団体)による「地方分権の推進に関する意見書-新時代の地方自治」等を受けて、同年12月の「地方分権の推進に関する大綱方針」の閣議決定を経て、平成7年5月に地方分権推進法が制定された。
このような一連の地方分権の流れの中で、分権の担い手である基礎的自治体のあり方も議論の対象となり、市町村合併もクローズアップされてきた。平成6年11月の第24次地方制度調査会では、市町村合併は行財政基盤の強化等を図るための有効で適切な方策であるとの観点から、自主的な合併の推進を答申された。その後、平成9年6月に閣議決定された「財政構造改革の推進について」では、市町村の合併について、改革期間中の実効ある方策と積極的な支援の必要性を明言し、同年7月の地方分権推進委員会第2次勧告では、厳しい財政状況の下で、今後ますます増大する市町村に対する行政需要や住民の日常生活、経済活動の一層の広域化に的確に対応するためには、市町村の行財政能力の向上、効率的な地方行政体制の整備・確立が重要な課題であるとの観点から、市町村合併の推進が勧告されました。具体的な方策としては以下の6項目があげられている。
①市町村合併の推進に当たっての地域の実情に十分配慮した施策
②都道府県による地域の実態を反映した市町村合併のパターンの提示、先進事例の紹介等合併の推進のために必要な助言、調整等と国による指針の策定
③地方交付税等による財政上の支援措置の継続等
④議員の任期・定数の特例等の措置の継続等
⑤旧市町村単位を基礎とする組織又は仕組みの導入等合併対象市町村の活性化方策の検討
⑥合併特例法に基づく住民発議制度の一層の拡充
さらに、平成10年(1998年)の第25次地方制度調査会の「市町村の合併に関する答申」では、分権型社会における市町村の役割について、今後、住民に最も身近な地方公共団体である市町村には、個性豊かで多様な地域づくりを進めることへの期待がますます高まるものとし、市町村が総合的な行政主体として、格段に高まる自立性を発揮しつつ、社会経済情勢の変化に応じ、新たな役割を担うことができるよう、体質の強化を図ることが求められるとしている。その後、平成10年には「地方分権推進計画」が閣議決定され、自主的な市町村合併を一層推進するとともに、都道府県にあっては市町村合併を積極的に支援することが盛り込まれた。平成11年には、自治省行政局長の私的研究会である市町村合併研究会の報告書が公表された。平成12年の第26次地方制度調査会答申では、市町村合併が、まさに地方公共団体の存立そのものに関わる重要な問題であること、また、地域に限定された課題であることから、その地域に住む住民自身の意思を問う住民投票制度の導入を図ることが適当である旨提言されている。同年の地方分権推進委員会の「市町村合併の推進についての意見」では、合併特例法の期限である平成17年(2005年)3月までに市町村合併に十分な成果が上がるよう、住民発議による合併協議会設置の議案が議会で否決された場合に、合併協議会の設置を求める住民投票制度の導入を検討することなどが述べられている。
こうした流れの中で、全国的な合併気運は「平成の大合併」と呼ばれるほどの高まりを見せてきている。平成11年に3,232あった市町村は18年に4割減の1,820まで減った。特に、市町村別にみると、町村数が少なくなった一方で、市はわずかながら増える傾向にある。
市町村合併をスムーズに進めることができるような制度上の特例、合併の機運が高まっている市町村の連携・交流を促進する基盤整備などによって、市町村合併を側面から支援する制度を設定した。平成13年8月には市町村合併支援プラン、14年8月にはその改訂版、17年8月には新市町村合併支援プランが提示された。以下の表1では、最初に出された平成13年のプランの内容を紹介する。なお、廃棄物処理対策としては廃棄物処理施設整備事業とごみ焼却施設解体撤去事業があげられている。前者は、合併によって必要となる100トン/日以上の焼却炉に対し、優先的な実施に配慮するとし、後者は適切な解体工事を円滑に実施し、生活環境の保全を図るため、焼却施設の解体事業に対して優先的な実施に配慮するとしている。
表1 市町村合併支援プランの概略
大区分 |
小区分 |
主な内容 |
地方行財政上の支援策 |
行政支援策 |
○合併協議会に係る住民発議制度の拡充及び住民投票制度の導入 ○支所・出張所、地域審議会及び郵便局の活用 ○政令指定都市の指定の弾力化 |
財政措置等による支援策 |
○税制上の特例措置 ○市町村合併推進体制整備費補助金 ○都道府県が行う合併支援事業に対する財政措置 |
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新たな関係省庁の連携による支援策 |
快適な暮らしを支える社会基盤の整備 |
○道路の整備(4事業) ○交通の利便性確保のための条件整備(2事業) ○市街地の整備(1事業) ○住環境の整備(5事業) ○公園・緑地の整備(1事業) |
豊かな生活環境の創造 |
○廃棄物処理対策の推進(2事業) ○上水道の整備(3事業) ○下水道等の整備(4事業) ○消防・防災・国土保全の推進(4事業) ○情報通信の整備(2事業) |
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生涯にわたる保健・医療・福祉の充実 |
○介護保険への対応(1事業) ○国民健康保険事業の安定的な運営の推進(1事業) ○高齢者の社会参加の促進(1事業) |
資料:首相官邸のホームページ
<参考文献・ホームページ>
(1)http://www.pref.shiga.jp/shichoson/gappei/handbook/(滋賀県市町村合併推進支援本部「市町村合併ハンドブック」)
(2)http://www8.cao.go.jp/bunken/bunken-iinkai/2ji/index.html(地方分権推進委員会「地方分権推進委員会第2次勧告」)
(3)http://www.soumu.go.jp/news/980507a.html(地方制度調査会「市町村の合併に関する答申」)
(4) http://www.soumu.go.jp/gapei/(総務省)
(5)http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sityouson/index.html(首相官邸「市町村合併支援本部」)