プラスチック選別・リサイクル技術
作成:野瀬光弘(6月14日)
プラスチックは、主として炭素と水素からなる高分子化合物で、石油や天然ガスなどからつくられる。日本では、原油を精製してできる「ナフサ(粗製ガソリン)」を原料にしている。製造方法は、ナフサを加熱分解してエチレンやプロピレン等の低分子化合物を取り出し、それを重合させてポリエチレンやポリプロピレンなどの合成樹脂や重合体(ポリマー)を作り出す。ポリエチレン等は、いったん溶かして、加工しやすくする添加剤などを加えてペレット状に形を整える。なお、日本では平成16年に2億3,524万klの原油から1,991万klのナフサが製造され、輸入ナフサと合わせて4,937万klのナフサがエチレンなど石油化学基礎製品の原料となった。これは、年間に使用される原油と輸入ナフサを合計した量の約16%に相当する。
プラスチックは大別して熱可塑性と熱硬化性とに分類されるが、その他に合成ゴムや合成繊維がある。熱可塑性プラスチックは加熱すると熔融し、冷却すると硬化する性質を持っており、リサイクルには便利といえる。一方、熱硬化性プラスチックは加熱して硬化するので成型できるが、再度加熱しても軟化したり熔融したりしないので、リサイクルには適していない。
図1(省略)には年次別のプラスチック生産量と廃棄物発生量の推移を示した。生産量は平成2年から9年にかけて少しずつ増えていったが、それ以降は横ばい傾向が続いている。廃棄物量は、平成2年に557万トンだったが、16年には1,013万トンにまで増加した。平成16年は一般廃棄物519万トン、産業廃棄物494万トンとほぼ同量であった。
プラスチック廃棄物の総廃棄物量に占める比率は、一般廃棄物の総量約5,000万トンの10%、産業廃棄物の総量約4億トンの1%に相当する。容器包装リサイクル法の施行とあいまって、プラスチックの分別収集は加速され、焼却をせずにマテリアルリサイクル等の道に進みつつあるが、都市によってはコストとエネルギーを検討した結果、混合収集して焼却し、エネルギー回収に踏み切っている。
一般廃棄物に占める廃プラスチックの比率は、増加の一途をたどり、一部の都市では20%に達している。従来の厨芥ごみなどとは異なり、発熱量が高く、有害ガスの発生も考えられる。このため、自治体では焼却炉以外で処分する必要性が出てきた。焼却上の問題点としては以下の4点があげられる。
①他の廃棄物と比較して発熱量が高いことから燃焼温度が高温となり、焼却炉の火格子の焼損や炉材の損耗が発生し、焼却炉の耐用性の問題が生じた。
②燃焼用空気を多量に必要とするため発生ガス量が増加し、廃プラスチックを想定していない焼却炉では、通風機や排ガス処理機能が不足して焼却容量が低下した。
③廃プラスチック中の塩化ビニールが塩化水素の発生の要因となり、新たに規制値が設定されて除去装置を設置していない施設では改善を必要とした。
④ごみ発電をしている施設のボイラーの加熱器が塩化水素の含有率の上昇などで腐食が生じ、耐用性が問題となって発電効率上昇の阻害要素となった。
産業廃棄物では、石油製品生産工場等でエチレン等の石油基礎製品を作る際に排出するほか、樹脂を用いて成型加工して各種製品を作る際に発生する端材や不良成型品等がある。性状や形状が多岐にわたるが、生活系から排出する一般廃棄物と比べれば、どちらかというと分別されて安定した形状が多い。
いずれも灰分が少なく焼却処理が有効との考え方から、多量排出工場では焼却炉を自己管理するか、ボイラー施設を設置して発電しているケースもある。ごみ発電は、昭和50年頃から始まり平成15年には全国で稼働中あるいは建設中のごみ焼却施設のうち、ごみ発電をしているところは271施設、合計144万kWにのぼった。1世帯の年間電力消費量を5,000kWhとすると、約280万世帯をまかなえる計算になる。なお、一般廃棄物発電を含めた平成21年度における廃棄物発電及びバイオマス発電の導入(見込み)は、450万kWとなっている。
廃プラスチックのリサイクルについては、長年の技術開発によって、現在では多くの手法が実用化されている。これらの手法を大きく分けると以下の3つとなる。
①マテリアルリサイクル(再生利用)
②ケミカルリサイクル(モノマー・原料化、高炉還元剤、コークス炉原料化、ガス化、油化など)
③サーマルリサイクル(セメントキルン、ごみ発電、RDF、RPF)
なお、容器包装リサイクル法が再商品化(リサイクル手法)として認めているのは、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル(モノマー・原料化、油化、高炉還元剤としての利用、コークス炉化学原料化、ガス化による化学原料化)、サーマルリサイクル(油化、ガス化)となっており、ごみ発電などは含まれていない。
図2(省略)には、廃プラスチックの一般廃棄物519万トン、産業廃棄物494万トンのそれぞれについて、マテリアルリサイクル、サーマルリサイクル、ケミカルリサイクルのほか、未利用の単純焼却、埋立の流れが示されている。
一般廃棄物では、都市ごみ焼却率と比例して、排出量の約67%が焼却処理されている。焼却処理のうち約53%は廃棄物発電の原料となっており、単純焼却より比率が高く、熱源として有効利用されている。しかし、依然として再生利用の比率は約9%と低位にとどまっており、埋立処分は次第に少なくなっているとはいえ約17%を占めている。産業廃棄物は、性状が比較的安定していることから再生利用が約27%で、一般廃棄物より大きい。焼却処理は約38%だが、単純焼却はごく少ないため直接、あるいは固形化の後に燃料として使われている。
有効利用量は表1に示したように平成7年の221万トンから次第に増加し、16年には611万トンにまで達した。有効利用率も同じ期間に25%から60%へと大幅に増えており、廃棄物発電や固形燃料利用の進んだことがうかがえる。
表1 廃プラスチックの有効利用量と利用率
年 |
平成7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
利用量(万トン) |
221 |
358 |
399 |
435 |
452 |
494 |
535 |
542 |
575 |
611 |
利用率(%) |
25 |
39 |
42 |
44 |
46 |
50 |
53 |
55 |
58 |
60 |
資料:プラスチック処理促進協会のホームページ
容器包装リサイクル法の施行により、再商品化が国民、自治体、事業者に義務づけられたが、その際に品質保持を目的とした選別は重要な作業となる。この作業は自治体の責務によるリサイクルプラザ等における基準に従った分別と、再商品化工場でのさらなる精度の高い分別に分けられる。全者は手選別が中心となるが、後者は廃プラスチック品質が持つ特性を利用した選別技術が採用されており、その基礎となる性状は表2に示した。原材料ごとに熱変形温度や比重に差があることを利用して選別を行っている。
表2 プラスチック製容器包装の原材料の割合及び物理特性
原材料 |
フィルム類(%) |
ボトル類(%) |
熱変形温度(℃) |
比重 |
ポリエチレン |
37 |
25 |
41~82 |
0.91~0.96 |
ポリプロピレン |
24 |
18 |
99~116 |
0.90~0.91 |
ポリスチレン |
13 |
4 |
66~91 |
1.04~1.10 |
塩化ビニール樹脂 |
10 |
1 |
57~82 |
1.30~1.58 |
その他 |
16 |
52 |
- |
- |
資料:杉島(2004)
容器包装リサイクル法の対象となるペットボトルやフィルム状のラインのある施設のフロー例を図3(省略)に示した。一般に袋で収集されているものを破袋機で切り裂き、廃プラスチックを取り出して、ペットボトル、フィルム状のものを回収し、異物などを粗選別する。その後、手選別コンベアで分けられ、磁選機で磁性物を除去した上で圧縮梱包機に送られ、加工業者へと運ばれる。
製鉄所では、高炉に鉄鉱石を送り込み、高温にして溶かす燃料、主成分である酸化鉄から酸素を除去するための還元剤として、両者の機能を有するコークスを副資材として利用している。コークスは石炭を熱分解して製造されるが、省エネルギーと廃プラスチックの再利用の観点から、還元剤の代替として利用する技術開発が進められてきた。
図4(省略)に示したように、前処理施設で破砕して目的外の夾雑物を除去し、高炉に悪影響のある塩化ビニルを無酸素の状態で約350℃に加熱して除去する。その後、塩化ビニルを除去した廃プラスチックと、脱塩した廃プラスチックを造粒し、高炉の羽口からコークスとともに送り込む。
コークス製造装置であるコークス炉に廃プラスチックを混入して利用するもので、新日本製鐵によって開発された。図5(省略)したように、他の技術と同様に前処理で破砕して異物を除去した後、25mm程度に造粒し、コークス炉に石炭とともに送り込み、約1,200℃の無酸素状態で乾留する。炭化水素油はプラスチック原料、コークスは高炉の還元剤、コークス炉ガスは発電に利用される。
<参考文献・ホームページ>
(1) http://www.pwmi.or.jp/home.htm(プラスチック処理促進協会)
(2) http://www.jpif.gr.jp/(日本プラスチック工業連盟)
(3)杉島和三郎(2004)廃プラスチックの処理と資源化-1.いんだすと19(2),68-71.
(4)杉島和三郎(2004 「プラスチック選別・リサイクル技術」をウィキ内検索