見学記録
作成:野瀬光弘(6月12日)

〒627-0143 京都府京丹後市弥栄町船木小字キコリ谷301-1
京丹後循環資源製造所

1.NEDOの委託事業(ホームページより)
 太陽光、風力といった自然エネルギーを利用した分散型電源では、発電量が安定しないため、系統側に影響を与える可能性があり、本格的な導入には、この課題の克服が必要となる。そこで、新エネルギーの導入拡大とともに、高品質な新エネルギー導入に有効な知見を得るために、本実証研究では、変動電源である太陽光発電や風力発電設備とその他の新エネルギー等を適正に組み合わせ、これらを制御するシステムを作ることにより、実証研究地域内で安定した電力・熱供給を行うと同時に連系する電力系統へ極力影響を与えず、かつコスト的にも適正な「分散型エネルギー供給システム」を構築し、供給電力等の品質、コスト、その他のデータを収集・分析を行う。
 この実証研究では青森県八戸市の「水の流れを電気で返すプロジェクト」、愛知県瀬戸市・常滑市の「2005年日本国際博覧会・中部臨空都市における新エネルギー等地域集中実証」、京丹後市の「京都エコエネルギープロジェクト」の3件を採択しており、平成15~19年度にかけて事業は進められる。

2.京都エコエネルギープロジェクト
(1)実証研究の目的(パンフレットより)
 風力や太陽光など環境への負荷が少ない自然エネルギーの普及に大きな期待が寄せられている。ところが、風力・太陽光発電は気象条件によって発電量が不安定になるなどの課題があり、本格的な普及には需要に応じた電力供給システムの構築が不可欠といえる。このプロジェクトでは、気象条件に左右される風力・太陽光発電と制御可能なバイオガス発電(ガスエンジン、燃料電池)による新エネルギーを組み合わせ、需要に応じて安定的に電力・熱供給を行う。

(2)プロジェクトの概要
 京都府、京丹後市、アミタ、富士電機システムズ、大林組、日新電機、野村総合研究所が共同で実施するプロジェクトで、研究対象とする地域の需要家の電力消費量に追従する制御可能なガスエンジン、所内負荷への一定の電源供給と熱供給をする燃料電池からなるバイオガス発電と気象条件に左右される太陽光発電や風力発電の変動分を補償する二次電池を組み合わせ、連系する電力系統にできるだけ影響を与えずに安定的に電力や熱を供給する実証研究。プロジェクトの全体像と各主体の役割は以下のとおり(図は省略)。

(3)太陽光発電システム
 公共施設2か所に、計50kwの太陽光発電設備を設置している。平成19年度までかけて天候、気温、時間帯によって変動する電力需要を予測する手法を研究する。

(4)風力発電システム
 京都府の太鼓山風力発電所に隣接した森林公園スイス村に設置している。ここは良好な風況が期待される場所だが、乱れの強い風が吹くことから、プロペラ型風車ではなく、無指向性で山岳地域における大きな風エネルギーを高効率で電気に変換できる50kwの「直線翼垂直軸型風車」を導入した。

3.京丹後循環資源製造所
(1)システムの概要
 バイオガス発電システムは、食品廃棄物からメタンガスを取り出し、それを使ってガスエンジン発電機、燃料電池を運転する。施設の概要は下図(省略)のとおりとなっている。食品工場残渣は水分によって量が変動することから幅が大きい。

(2)設備の特徴(パンフレットより)
①バイオガス発生設備
 前処理設備、メタン発酵設備、ガス貯留設備、残渣処理設備、廃水処理設備に大別される。このうち、前処理設備では、原料となる食品廃棄物を破砕し、メタン発酵設備でガスの生産が行われる。ガスは、空気を遮断すること、有機物と嫌気性細菌が混じり合うこと、適度な温度を保つことという条件を整えれば発酵する。ここで発生したメタンガスは、ガスホルダーと呼ばれる貯留設備に貯められ、ガスエンジン発電機、燃料電池に供給される。
 一方、メタン発酵処理された食品廃棄物は、残渣処理設備において、脱水機で固形分が分離され、乾燥機を通した後で場外に搬出される。また、脱水機で分離された脱離液は廃水処理設備へ送られ、有機物、窒素、リン、色等が処理され、河川に放流される。脱離液など124トン/日を処理して、75トン/日を河川に放流しているが、厳格に管理することで規制値はクリアしている。

②ガスエンジン発電機
 80kwの発電機5台を導入しており、メタンガスを燃料として、自然エネルギー発電電力の変動と需要変動を吸収し、需給調整を行うために、台数制御及び出力設定値制御で運転されている。発電効率は単独で28~29%だが、熱利用も含めると約60%に達する。

③燃料電池
 導入したのは、溶融炭酸塩形燃料電池で、250kwの発電容量を持っている。特徴としては、発電効率が45~60%と高いこと、運転温度が600~700℃と高く、熱利用の幅が広いこと等があげられる。排ガス中の窒素酸化物は1ppm以下、硫黄酸化物はほぼゼロで、騒音や振動が少ないといった面で優れている。ところが、出力を簡単に制御できない、コストが高くつくという欠点もある。

(3)有機性廃棄物
 食品工場残渣は京都府北部(舞鶴、福知山など)、兵庫県北部(和田山など)、京都市伏見区の7~8社からコーヒーかす、おから、油揚げ、緑茶の絞りかす、ジャガイモの皮などを入荷している。将来的には京丹後市内の一般家庭から厨芥ごみを集めて投入するプランがある。メタン発酵後の残渣は、バイオガスボイラーで乾燥し、脱水ケーキを加えて水分調整してから2ヶ月かけて堆肥に加工する。農業試験場に依頼して1ヶ月に1回は成分分析を行っており、京丹後市内の農家で土壌改良材として実験的に投入してもらっている。

4.見学者への対応
 操業を開始した平成17年11月から18年5月までで約1,000人が訪れたが、業界関係者が最も多く、環境学習の一環で京丹後市の小学生がやってきたこともあった。単なる施設見学にとどまらず、周辺のレジャースポットを楽しんでもらうことも合わせて、観光の一環というとらえ方をしている。見学に当たり、市の担当者からは観光パンフレットを受け取った。なお、今後は地元の老人会、婦人会といった様々な団体の来訪が予想される。

5.感想
 風力や太陽光は自然エネルギーとして有用だが、出力が天候に左右されるために安定しないという問題があった。今回の施設は、バイオガス発電と組み合わせて需要を予測しながら安定的に供給しようという趣旨で作られており、目的意識が明確でわかりやすく感じた。これまでのところ大きな事故もないようで、実証実験が終わった後も運用を継続できる仕組みは整っている。あとは、施設の規模が大きいだけに運転コストをどのようにまかなうかが課題となるだろう。京都府北部から、福井県、兵庫県まで幅広く食品廃棄物を集めるとともに、京丹後市の厨芥ごみもメタンガス発酵に投入できれば、安定的に運用できると考えられる。

<参考ホームページ>
(1)http://www.pv-kansai.com/topics/003.html(PVかんさい)
(2)http://www.nedo.go.jp/informations/press/171118_1/171118_1.html(新エネルギー・産業技術総合開発機構)