処理業者の取組
作成中:足立(06.05.25)
廃棄物処理業が悪いイメージをもたれている理由の一つとして、一部の不適正な処理をした業者が、新聞やテレビなどで報道され、地域住民が一部の業者としてではなく、廃棄物業界全体のイメージとして捉えしまうということがある。
そのように地域住民が捉えてしまう背景には、廃棄物処理業が開かれた業界ではなく、身近にある処理業者についても、どのような人が、どのようなことをしているのかなど知らないし、また知るための手段も少ないという理由がある。以下それらの状況を改善すべく、廃棄物処理業者が取り組んでいる内容について述べる。
地域住民と密なコミュニケーションをとり、処理業者と住民の双方が理解を深めることは、廃棄物処理業の信頼回復に向けて大きな一歩となる。 廃棄物処理業者は、地域住民と直接交流の場を設ける、地域の清掃活動を行い地域に貢献など多様なかたちで地域融和を図っている。以下では、廃棄物処理業者の地域融和の取組を具体例を挙げてみていく。
ホームページ内で自社の地域融和の取組を紹介している。中でも清掃活動については、集めたごみの収集量を月ごとに集計し、公表するなど一歩進んだ取組となっている。また清掃活動以外にも、地域交流会、グランドゴルフ大会など多くの取組を行っている。
自社の最終処分場跡地を和泉リサイクル環境公園として開放している。この公園には多目的グランド、ハーブ園、近隣農家の自作野菜や果物の販売など行われており、近隣の幼稚園・保育所の遠足・イベント、小学校の課外授業や、生徒の総合学習、大学でのゼミなどに利用され年間約210,000人が足を運んでいる。
表 地域融和の取り組み
取り組み |
ねらい |
・協議会の設置・運営 |
環境問題等について地域住民とのコミュニケーションを深める |
・スポーツ等イベントの開催 ・交流会の開催 |
地域社会に参加し、日頃から地域住民とのコミュケーションを図る |
・施設周辺の清掃・美化活動 ・施設周辺の緑化活動 |
周辺環境の整備 |
・リサイクルへの協力 |
地域におけるボランティア活動への参加 |
・環境学習への協力 ・最終処分場の跡地利用 |
施設等を開放して地域への還元を図る |
資料:廃棄物処理業者各社ホームページ、ヒアリングによる
近隣に廃棄物処理施設があることは、住民にとって大きな不安を抱えることとなる。その不安は、廃棄物処理業者の情報公開不足により住民が廃棄物処理業者をよく知らないということも不安の一因となっている。
近年、廃棄物処理業者も自社のホームページなどを持ち、積極的な情報公開を行う業者もみられる。また、環境省の優良性評価制度で、情報公開を優良業者認定の要件となっていたり、全国の産業廃棄物協会の業者リストでも様々な情報が公開されているなど、処理業者の情報公開は進んできている。
表 ホームページに公表された業者の情報
資料:各県の産業廃棄物協会のホームページ、各業者ホームページ
※2005年の調査であるため、現在はより公開が進んでいると思われる。
過去の不法投棄の問題や最終処分場の環境汚染の問題、また処分場からの騒音、悪臭など廃棄物処理業が関って起こっている環境問題があり、そのことが不信をもたれる一つの理由となっている。
廃棄物処理業者も環境マネジメント・システムの国際規格として代表的なISO14001の取得や環境報告書の作成など自社の環境保全の取り組みを対外的に示すなどの取組を行っている。しかし、こういった取組を行っている業者は、必ずしも多いとは言えない。
産業廃棄物処理業者のISO14001取得は年々増加傾向にあり、環境保全への高い意思が感じられる。認証を得ようとしたきっかけは、もちろん環境保全への意識もあるが、そのほかには、取引先の排出業者から認証取得を求められたことや自治体の入札用件に含まれることなどがある。しかし動機がどうであれ、取得に取り組んだことで、地域からの信頼を得ることにもつながるし、社員の環境保全への意識も高まるなど多くの効果を得ている。
表1 ISO14001取得件数
平成12年 |
平成13年 |
平成14年 |
平成15年 |
平成16年 |
平成17年 |
|
廃棄物処理業 |
218 |
361 |
547 |
768 |
1,148 |
1,374 |
全業種合計 |
6,092 |
8,893 |
11,893 |
14,854 |
17,882 |
19,747 |
※平成17年度は12月までの集計
資料:日本規格協会ホームページ
環境報告書とは、企業等の事業者が、経営責任者の緒言、環境保全に関する方針・目標・計画、環境マネジメントに関する状況、環境負荷の低減に向けた取組の状況(等について取りまとめ、一般に公表するものである。
環境報告書を作成・公表することにより、利害関係者による環境コミュニケーションが促進され、事業者の環境保全に向けた取組の自主的改善とともに、社会からの信頼を勝ち得ていくことにつながる。
近畿環境興産株式会社(本社・大阪府岸和田市)
平成12年から環境報告書の発行を開始し、平成17年からは環境・社会活動報告書と名前を変えて社会経済活動も充実させている。最新の報告書には、会社概要や企業理念に続いて、廃棄物処理を中心とした業務内容(受け入れ廃棄物やリサイクル率などの環境パフォーマンスデータを含む)、環境報告(ISO14001の環境方針など)、地域との共栄(清掃活動やボランティア活動など)、経済性報告(財務諸表や損益計算書など)、社会性報告(安全衛生管理方針など)が具体的に書かれている。
大栄サービス株式会社(本社・兵庫県西宮市)
平成14年から環境報告書の発行を始め、17年の環境報告書をホームページ上に公開している。報告書には、環境マネジメント(リサイクル率など実績と目標ほか)、環境パフォーマンス(事業編とオフィス編)、コミュニケーション(環境学習支援など)が実際のデータを元に書かれている。巻末には報告へのアンケート結果も掲載されており、読者の声を聞く体制がある。