不適正処理を防止する仕組みづくり

作成:足立(06.05.23

更新:足立(06.06.06) 

 

 毎年のように、不法投棄等の不適正処理が後をたたない。そういった現状を解決するため、国や自治体及び産廃業界など各方面から、不適正処理を防止するための様々な取組が行われている。

●国・地方自治体による取組

(1)法律・制度による取組 

国や自治体による不適正処理を防止するための主な取組として、法律や条令により、規制や罰則などを強化していく方向がある。国によるものとしては廃棄物処理法が挙げられ、地方自治体においては京都府の不法投棄防止条例がある。同様の条例は京都市、千葉県八千代市、、茨城県牛久市など多くの自治体で導入されており、廃棄物処理法の規制を逃れようとする処理業者への対応を強化する内容となっている。また1997年の廃棄物処理法の改正では、すべての産業廃棄物に産業廃棄物管理票(マニフェスト)制度を適用し、廃棄物処理の流れを確認できるようにし、不法投棄の防止を強化している。しかし法律や条令をいくら強化しても、その規制を逃れ不適正処理を行う業者は後を絶たず、法律強化と業者の規制逃れのいたちごっこの状況が続いている。

 そこで、近年では200510月にスタートした「優良性評価制度」に見られるように、優良業者を育て、根本から不適正処理をなくしていく取組も見られる。

●排出事業者の取組

廃棄物の不適正処理の責任は、直接処理を行っている処理業者のみにあるのではなく、廃棄物の排出業者も当然、関っている責任である。しかし、廃棄物処理に関して、排出事業者の関心は高いとはいえず、そいったことも、不法投棄等の不適正処理の問題がなくならない原因の一つになっている。そういった背景から、廃棄物処理法が強化され、排出事業者の責任が厳しく問われるようになってきた。

青森・岩手県境不法投棄では、青森・岩手両県が排出事業者に報告・徴収を行い、法律違反が確認された排出事業者に対して、社名を公表の上、不法投棄現場から廃棄物を撤去する措置命令を出したケースもあった。不法投棄事案に巻き込まれ、社名の公表に至った場合、企業のブランドイメージには大きな傷が付く。廃棄物の適正処理は、企業経営にも大きな影響を及ぼしかねない問題となっており、排出事業者が自主的取組を行われるよになってきている。経済産業省では、排出事業者の取組のための手引きになることを目的に、「排出事業者のための廃棄物リサイクルガバナンスガイドライン」を作成し排出業者の取組を支援している。

1)見学とチェック

 委託をしている処理業者が適切に処理を行っているかどうかを、実際に処理施設を見学してチェックすることが行われるようになってきている。特別管理廃棄物については、排出事業者がきちんと処理されるまでプロセスをチェックすることはこれまでも行われてきたが、それが一般的な廃棄物にも広がりをみせている。

 また、排出事業者の見学担当者、が必ずしも廃棄物処理に関して高度な知識を持っているとはいえず見学が形式的なものにすぎず、十分なチェックが働かないことも考え得る。そこで、処理業者を見学したときに、どの点をチェックすればよいのかについてのチェックリストを作成し、利用されている事例もある。

2)廃棄物管理の取り組み

企業名(業種)

取り組み

概要

資料

国土環境株式会社(環境分析、コンサルティング)

ISO14001による廃棄物管理

保管・管理の手順書を作成している。

2001年環境報告書

田辺製薬株式会社(製薬)

廃棄物処理業者適正管理システムの構築

委託処理業者について、質問票に対する回答や現地調査結果等を点数化することにより総合評価。契約後も定期的に現地視察等を実施することにより、双方の信頼関係を高める。

環境・社会活動報告書2005

廃棄物リスク研修会の実施

廃棄物管理担当者を対象に、廃棄物処理法の理解・委託業者への現地視察時のポイントなどについて研修。

藤倉化成株式会社(化学)

委託先の調査、チェックリストによる確認

毎年~3年の期間で委託先における処理状況を調査。現地視察では、なお独自のチェックリストを用い、教育を兼ねて新人が同行し、排出者として自らの要改善点を見つけることもチェック項目としている。

環境・社会報告書2005

資料:各社ホームページ、環境報告書

(3)廃棄物管理システムの開発・導入

マニフェストの弱点を補う形で、廃棄物管理システムの開発・導入が進められている。GPSと電子タグを利用した廃棄物の追跡・監視システムは、リアルタイムでの把握を可能にしているが、導入コストが高いことが課題となっている。廃棄物管理システムには、電子マニフェストの改良版の他、環境負荷情報の集約や管理・報告の効率化を目的としたものなど様々なものが開発され、各社で導入が進められている。

 また、三菱電機株式会社では、社内での廃棄物処理業者についての情報を統一的に管理するデータベース・システムを開発し、この廃棄物業者データベース・システムでは、廃棄物処理委託先の基本情報を各現場で登録・検索可能にし、処理委託について全社での一元管理を実現する。データベースには、画像を含む現地視察情報、処理業者の許可証、契約書、廃棄物処理委託先の取引状況や信用情報などが含まれる。事業所を多数持つ会社においては、事業所ごとの委託処理業者の現地視察が重複することを回避するなど、管理を効率化するための情報共有手段となる。

●廃棄物処理業関係団体(全国の産業廃棄物協会など)の取組

 廃棄物処理業者には零細な業者が多いこと、業界の創成期の頃は特に資格や訓練も必要なく誰でも参入できたことなど、廃棄物処理業界における古くからの体質から、処理業者には企業としての組織の管理体制や、従業員の教育・管理に課題を持つところが少なくない。そのため、経営者の指導が行き届かず、従業員が不正に処理を請け負う場合もある。

 全国の産業廃棄物協会では、そのような状況に対処するため、講習会・研修会を行い、従業員のレベルアップに努めている。

 

1)不適正処理防止のための取組具体例

・適正処理推進ステッカーの販売(京都府産業廃棄物協会

適正処理のより一層の推進を図るために、適正処理推進ステッカーを全会員に配付し、又、希望会員に販売し、車輌及びコンテナ等に貼付することにより環境の保全に努める自覚と誇りを保持するとともに、排出事業者及び一般府民に対し、環境保全思想の普及啓蒙を図り環境保全に努めた。また、不適正処理防止パトロール実施時に参加した各行政機関にも配布し啓蒙に努める。

・不法投棄撲滅県民大会の開催(奈良県産業廃棄物協会

200511月に環境保全を目的に、不法投棄の撲滅と県民一人一人が自らの地域環境を自ら守る意識を高めるため、県民、事業者、NPO、行政及び警察が一体となって、不法投棄の撲滅に向けた全県民的なキャンペーンを実施。

最終更新:2006年06月15日 12:35