産業廃棄物の定義と廃棄物処理法

作成:足立(2006.5.19)

●廃棄物の定義と分類

(1)廃棄物の定義

「廃棄物」とは、1970年に制定された「廃棄物の処理と清掃に関する法律」(廃棄物処理法)で規定されており、その分類や処理制度が定められている。法律では、不要物であること、気体ではなく固形状又は液状であること、そして放射性汚染物でないことが条件として示されている。

ただし法律の定義だけでは、対象物が廃棄物であるかどうかについては、明確な線引きができない。1977年には厚生省からの通知において、物の性状や占有者の意志等を総合的に判断して決めるという「総合判断説」が示され、その後の判断基準とされている。

なお2000年には「循環型社会形成推進基本法」が制定され、「廃棄物等」および「循環資源」という言葉も用いられるようになった。総合判断説が用いられた例としては、「おから」が挙げられる。19993月最高裁において、処理業者の意思(おからは、食料・飼料・肥料等として有益・有用な資源であり大半を再生利用しているから不要物ではない)のみならず、おからが非常に腐敗しやすいという性状、大部分が無償で牧畜業者等に引き渡されているという通常の取扱形態等を総合的に勘案し、産業廃棄物に該当するされた。

上記の廃棄物に加えて、使用済み物品や副産物などを加えたものを「廃棄物等」とし、「廃棄物等」のうち有用なものを「循環資源」としている。

廃棄物処理法での定義(第2条抜粋)

 ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによって汚染された物を除く。)


2)廃棄物の分類

廃棄物は、廃棄物処理法において一般廃棄物と産業廃棄物にわけられる。厳密には、定められた事業から排出される20種類の廃棄物について産業廃棄物が定義され、それ以外の廃棄物は一般廃棄物となっている。いずれにしても廃棄物の処理責任は第一義的には排出者が負うものとされている。

一般廃棄物処理は市町村の固有事務とされているが、産業廃棄物に関しては排出者責任の原則に則り、排出者自らが処理責任を持つ。事業から排出される廃棄物であっても、産業廃棄物の範囲に入らないものについては、事業系一般廃棄物として市町村が処理計画を立てる責任があり、処理が行われている。ただし、区分の判断や、受入の有無、費用負担などは各自治体に任されているのが実情となっている。

1991年の法改正では、有害性を伴う廃棄物について特別管理廃棄物が指定され、特別管理一般廃棄物(充電式電池など)や、特別管理産業廃棄物(感染性廃棄物など)の取扱について、その他の廃棄物と違った安全処理が求められるようになった。

中央環境審議会 廃棄物・リサイクル部会資料 200221

 

●廃棄物処理法について

(1)廃棄物処理法制定の背景

廃棄物処理法は、1970年の第64回臨時国会(通称:公害国会)において、清掃法を全部改正する形で制定された。日本は1960年代から続く高度経済成長時代のもと、大量消費・大量廃棄がおこなわれ、産業廃棄物の排出量が膨大な量にのぼっており、既存の清掃法の体系の下では到底処理できない状況であったことなどに防戦的に対応するため制定された。


(2)廃棄物処理法の改正の流れ

 廃棄物の処理は、従来清掃法により、汚物の処理として実施されてきたが、廃棄物処理法の制定によって、PPP(汚染者負担の原則)に基づき、初めて「一般廃棄物」と「産業廃棄物」という廃棄物の区分が示された。その後、廃棄物を取り巻く状況の変化に対応するため、たびたびの改正が行われてきた。

 排出事業者の責任を明確にすることが、同法の目的であったが、廃棄物の排出量の増大や質的変化とともに、最終処分場等の処理施設の確保が困難となり、不法投棄等の不適正処理の問題が生ずる等の諸課題への対応策として、主に廃棄物処理業者に対する規制的措置など不法投棄・不適正処理の対策が改正の大部分を占めてきた。

 しかし、近年不法投棄や不適正処理の防止に向けて事業者責任を明確にしていく方向、およびリサイクルを視野に入れ、手続きを簡略化するなど規制緩和していく方向などの改正がなされてきている。

表 廃棄物処理法の改正経緯と主な改正内容

時期

内容

1970年制定

●廃棄物を一般廃棄物と産業廃棄物に区別し、それぞれの処理体系を整備

・一般廃棄物の処理責任は市町村

・産業廃棄物の処理責任は事業者

●廃棄物処理基準、維持管理基準等の設定

●廃棄物処理業については許可制、廃棄物処理施設については届出制を設け、必要な指導・監督等の規制を整備

1976年改正

●最終処分場を新たに産業廃棄物処理施設として位置づけ、規制の対象化

●委託処理の適正化を目的に委託基準の設定をするとともに、再委託を禁止

●自社処分場の設置事業者及び処理事業者について、記録の作成及び保存を義務付け

●措置命令規則の創設

1991年改正

●廃棄物の適正処理にむけて

①処理業者についての規制強化

・許可の更新制の導入

・収集運搬と処分業の区別

②廃棄物処理施設についての規制強化

・設置についての届出制から許可制へ移行

・埋立終了後の最終処分場の台帳調整

③市町村において適正な処理が困難な一般廃棄物についての厚生大臣の指定制度と事業者の協力義務

④監督規定の強化

・改善命令の対象を処理業者に拡大

・措置命令の発動要件の緩和

⑤罰則の全体的強化

●特別管理廃棄物の概念の創設

人の健康又は生活環境に被害を生じるおそれのあるものを特別管理廃棄物及び特別管理産業廃棄物に区分して規制強化

①特別な処理基準の設定

②特別管理産業廃棄物票(マニフェスト)の使用義務付け

③特別管理産業廃棄物収集運搬業者及び処分業者の制度化

1997年改正

●廃棄物処理施設の設置に関して

①施設設置申請者による生活環境調査の実地導入

②申請書等の告示・縦覧の導入

③都道府県知事による関係市町村の意見聴取等の導入

④許可要件の追加

・施設設置者に関する計画及び維持管理に関する計画が周辺地域の生活環境の保全につき適正な配慮がなされたものであることを許可要件に追加

⑤都道府県知事による生活環境の保全に対し専門知識を有する物の意見聴取の導入

⑥許可の取り消し要件の追加

●廃棄物処理施設の維持管理に関して

①特別管理義務の設定

・施設設置者は、技術上の基準とともに、申請書記載の特別管理計画に従い、施設の維持管理をすることを義務付け

②施設設置者による施設の維持管理に関する記録の作成及び閲覧

③維持管理積立金

・最終処分場の設置者について、埋立完了後に必要となる維持管理費用をあらかじめ積み立てることを義務付け

④最終処分場の廃止の確認

・最終処分場の設置者は、あらかじめ技術上の基準に適合していることの都道府県知事の確認を受けたときに限り、当該最終処分場を廃止できる

●廃棄物処理業者に関して

①廃棄物処理業の欠落要件の追加

②名義貸しの禁止

●産業廃棄物管理票(マニフェスト)制度について

①廃棄物処理管理票制度の適応範囲の拡大

・適応範囲をすべての産業廃棄物に拡大

●罰則の強化

・産業廃棄物の投棄禁止違反等に対する罰則の強化

●生活環境保全上の支障の除去

①措置命令の対象の拡大

・処分を行った者に産業廃棄物管理票の交付をしなかったもの等を追加

②生活環境保全上の支障の除去の設置

・都道府県知事及び市町村長は、一定の場合に、自ら生活環境保全上の支障の除去等を行うことができ、その費用について、当該処分者等に負担させることが出来るものとする

③産業廃棄物適正処理推進センター

・厚生大臣が指定する法人に基金を設け、産業界に対して基金への拠出を求め、原状回復を行う都道府県等に対して基金からの出損等を行う仕組みを設立

2000年改正

●廃棄物の適正処理のための規制強化

①廃棄物処理業の許可の取り消し等の要件の追加

・この法律もしくはこの法律に基づく処分に違反する行為に関与したとき等を廃棄物処理業の許可の取り消し等の要件に追加

・産業廃棄物処理業の許可の欠落要件を追加

②廃棄物処理施設の設置に係る許可要件の追加

・申請者の能力が、設置計画及び維持管理計画に従って施設の設置及び維持管理を的確に継続して行うに足りるものとして定める基準に適合する物であること等を追加

・都道府県知事は廃棄物焼却施設の過度の集中によって大気環境基準の確保が困難になると認めるときは、設置の許可をしないことが出来る

③廃棄物処理施設の設置の許可にかかる許可の取り消し等の要件の追加

・この法律もしくはこの法律基づく処分に違反する行為をしたとき等を、廃棄物処理施設の設置にかかる許可の取り消し等の要件に追加

④廃棄物処理施設の譲受等に関する許可

・廃棄物処理施設を譲り受け、又は借り受けようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない等

⑤産業廃棄物管理票(マニフェスト)制度の見直し

・排出事業者は、最終処分までの処理が適性に行われるよう必要な措置を講ずるよう努めるとともに、最終処分の確認が可能となるよう一定の義務を追加

・産業廃棄物処理業者は、産業廃棄物の処理を委託していないにもかかわらず、虚偽の記載をした管理票の交付を禁止

⑥廃棄物の焼却の規制

・産業廃棄物基準に従って行う場合、他の法令による場合又は公益上、社会の慣習上やむをえない等として法令で定める方法による場合を除き、廃棄物の焼却を禁止

⑦不適正処分に関する支障の除去等の措置命令の強化

・管理票の写しの送付を受けない場合に適切な措置を講ずべき義務等の管理票に係る義務に違反した者及び不適正処分に関与した者を措置命令の対象を追加

・府適正処理を行なった者等に資力がない場合で、適正な処理料金を負担していないとき、不適正処理が行われることを知り、又は知ることができたとき等の要件の下で、排出事業者を措置命令の対象に追加

⑧罰則の追加

・産業廃棄物管理票、廃棄物の焼却の禁止等に関する規定等の違反に対する罰則を新たに設けるとともに、所要の罰則を強化 

2002年改正

●廃棄物の適正処理のための規制強化

 ①報告徴収及び立ち入り検査権限の拡充(廃棄物の疑いのあるものについての報告徴収等

②罰則の強化

・不法投棄未遂罪の創設等

③国の責任の明確化

④産業廃棄物処理行頭の許可手続きの明確化(欠落要件該当時の許可取り消しの義務化)

⑤事業者が一般廃棄物の処理を委託する場合の基準の策定等

●効率的な廃棄物処理の確保のための措置

①広域的な処理を行う場合、認定により廃棄物処理業の許可を不要とする等の特例制度

②廃棄物処理施設整備計画の策定

③設置許可を受けている産業廃棄物施設において、同様の性状の一般廃棄物の処理を許可

2003年改正

●廃棄物の適正処理のための規制強化

①処理業者についての規制

・不法投棄及び不法焼却の未遂罪を創設

・一廃の不法投棄についても法人重課の導入

・廃棄物の疑いがあるものに係る立入検査・報告徴収権限の拡充

・産廃について緊急時の国の立入検査・報告徴収権限の創設

・許可の欠格要件に聴聞通知後に廃止の届出をした者を追加

・特に悪質な業者などの業及び許可の取消を義務化

②廃棄物処理施設に係る規制

・産廃処理施設において、処理を行っている参拝と同様の性状を有する一定の一廃を処理する場合に、設置許可を受けないで、届出をもって一廃処理施設の設置を可能とする制度の創設

③排出事業者責任と原状回復措置

・事業者が一廃の処理を他人に委託する場合の基準を創設

2004年改正

●廃棄物の適正処理にむけて

①産業廃棄物の不適処理に係る緊急時における国の関係都道府県への指示権限の創設

②廃棄物処理施設に係る規制

・処分場跡地等で土地の形質変更を行う際の事前届出などの制度の新設

・構造上は適正であるが管理者が不在となった施設が新たな設置許可を取得する際の生活環境影響調査書の提出及び公告縦覧の省略

・廃棄物処理施設で自己が起きた場合の応急措置・届出義務などの創設

③罰則の強化

・不法投棄・不法焼却目的の収集運搬に対する罰則の創設

・不法焼却・受託禁止、不法焼却については法人重課の導入

④指定有害廃棄物(硫酸ピッチ)の不適正処理禁止

2005年改正

●廃棄物の適正処理のための規制強化

①処理業者についての規制

・不正の手段により許可を受けた者を許可取消事由に追加

・欠格要件に該当した許可業者・施設設置者について届出の義務付け

・許可の欠格要件に暴力団員などによって支配されている個人を追加

②産業廃棄物管理票(マニフェスト)制度の見直し

・マニュフェスト制度違反に係る勧告に従わない者について公表・命令措置の導入

・産業廃棄物の運搬又は処分を受託した者に対するマニュフェスト保存の義務付け

・マニュフェスト義務違反:6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に引き上げ

③罰則の強化

・無許可営業・事業範囲変更:法人重課(1億円)の創設

・無確認輸出:未遂罪・予備罪の創設、5年以下の懲役又は千万円以下の罰金に引き上げ、法人重課(1億円以下の罰金)の導入

●廃棄物処理施設に係る規制

最終処分場の維持管理積立金制度の対象をすべての許可処分場に拡大(従来は維持管理積立金制度の施行(平成10年6月)以降に埋立処分が開始されたものに限定)

●その他

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最終更新:2006年05月24日 17:32