構造計算書偽装問題

作成:足立(06.05.15

修正:鈴木(06.05.17)、野瀬(06.6.26)

 構造計算書偽装問題は、個人にとって大きな買い物であるマンションや、都市活動の場であるホテルの安全性が確保されていなかったという点で、きわめて大きな衝撃であった。建築士という業務独占が認められた専門家によって悪質な偽装が行われ、それを建築確認という建物の性能を確保するための公の事務で見抜くことができなかった。また、消費者保護のための様々な制度が機能せず、被害を受けたマンション居住者に過重な負担を強いることになったため、国民に深刻な不安と動揺を与え大きな社会問題となった。


1.事件の概要

 一連の構造計算書偽造問題は、20051117日に千葉県市川市の「姉歯建築設計事務所」の元一級建築士が構造計算書を偽造していたと国土交通省が発表したことに始まる(表1)。20065月時点で、姉歯元一級建築士が関与した物件のうち205件のうち、偽造された物件は98件ある(表2)。また姉歯物件以外でも偽造があったことが確認されており、被害は18府県へと広がりを見せている。


表1 事件の経緯(敬称略)

月日

事柄

2005

1018

某設計事務所社長が民間確認検査機関イーホームズに構造計算書の偽造を伝える

1025

イーホームズで行われた協議にヒューザー常務が出席、偽装について伝えられる

1027

ヒューザーで行われた協議で、イーホームズ藤田社長からヒューザー小嶋社長に直接偽装の件が伝えられる。藤田は小嶋が偽装の公表を抑えようとしたと主張。小嶋はそれを否定

1028

「グランドステージ藤沢」の17戸を引き渡す。これは宅地建物取引業法違反の疑いがある。小嶋は「違法性の認識はなかった」

1214

事件関係者(姉歯元一級建築士、木村建設の代表取締役社長・元東京支店長、総合経営研究所の所長)の証人喚問

2006

117

ヒューザー小嶋社長を証人喚問。弁護士と相談して証言を拒絶したため議事が再三中断

130

ヒューザーは首都圏の18自治体に構造計算書の偽装を見逃したとして約139億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こす

131

ヒューザーは民間指定確認検査機関イーホームズと藤田社長に名誉毀損で5億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こす

418

小嶋社長「耐震強度偽装を知りつつマンションを引き渡した」という詐欺の容疑で、警視庁からの任意聴取を受ける

426

事件の関係者を一斉に逮捕。姉歯元一級建築士らは建築士法違反(名義貸し)、木村建設(代表取締役社長、元東京支店長、取締役2人)は建設業法違反(粉飾決算)、イーホームズ(代表取締役社長、元監査の司法書士)は電磁的公正証書原本不実記録(架空増資)

622

姉歯元一級建築士を議院証言法違反(偽証)の疑いで再逮捕

資料:日経住宅サーチのホームページより作成


2 姉歯元一級建築士関与の偽装物件件数(件)

都道府県

マンション

ホテル

一戸建住宅

合計

群馬県

3

3

埼玉県

121戸)

1

千葉県

10423戸)

3

13

東京都

30824戸)

4

34

神奈川県

15365戸)

2

17

長野県

3

3

岐阜県

1

1

静岡県

4

4

愛知県

7

7

三重県

1

1

京都府

2

2

大阪府

1

1

兵庫県

2

2

奈良県

2

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最終更新:2006年06月26日 16:48