一般廃棄物処理の現状
作成:鈴木
編集:足立(06.06.01)


●一般廃棄物処理をめぐる環境

 一般廃棄物については市町村の固有の事務であり、自区内処理が原則とされてきた。しかし、ダイオキシン類対策をきっかけとして大規模施設が一時推奨されるなど、広域での処理が進みつつある。これには、都市部などを中心に新たな施設建設が困難となっている事情もある。特に最終処分場については、処分に適した場所の確保が難しく、最終処分量の削減など延命策の推進が急務となっている。
 廃棄物の削減施策として、容器包装リサイクル法が活用され、多くの自治体で分別回収が進められている。中国の経済発展に伴い、故プラスチックや故紙類の輸出が増加して、引き取り価格が上昇していることも追い風となっている。
 なお2005年度より、焼却施設等の建設にあたっての国からの補助金制度が廃止され、新たに循環型社会形成推進交付金制度に移行した。施設整備にあたって、国や都道府県が加わった協議会を開催し、広域的な整合性や循環型社会の視点を考慮しながら、検討をすることが必要となった。しかし、現実的な運用としては、以前とほぼ同様に施設建設が進められている。

●2003年度の一般廃棄物処理の実態

 環境省が毎年公表している一般廃棄物の処理の実態について整理した。
 1人1日当たりのごみ排出量は1108グラム、ごみ排出総量は5161万トンで前年度と同じとなっている(図1)。近年ごみの減量が叫ばれているが、その成果は統計としてはまだ出ていない。なお、このうち32.8%は事業系一般廃棄物であり、生活系の分は1人1日あたり745グラム、排出総量で3466万トンとなる。
 収集された廃棄物の処理としては、直接埋立てられるものは3.6%(186万トン)にすぎず、中間処理施設において92.0%(4,740万トン)が処理されている(図2)。中間処理の大部分が焼却処理となっており、焼却率は78.1%になっている。
 処理方法の変遷をみると、直接最終処分が大幅に減少する一方、資源化処理や焼却処理が増加してきている(図3)。
 市町村などによる資源化と住民団体などによる資源回収とを合わせた総資源化量は916万トン、リサイクル率は16.8%であり、資源化量、リサイクル率ともに着実に上昇を続けている(図4)。この10年間でリサイクル率は倍増しており、容器包装リサイクル法の後押しもあってリサイクルが進展したことが伺える。なお一般廃棄物のリサイクルは市町村の収集と、住民団体による収集に分けられるが、市町村の資源回収品目としては、紙・金属・ガラス類が多いのに対し、住民団体では圧倒的に古紙回収が中心となっている(図5)。



●一般廃棄物の焼却施設の動向

 日本の廃棄物処理の中で中心的役割を担っている焼却施設であるが、施設数をみると減少傾向にあり、2003年度末には1,396施設と、1年間で100近く減少している。ダイオキシン対策における規制が2002年12月にかけられたこともあり、小規模施設を中心に統合が進み、大型施設の割合も上昇している(図6)。ただし小型炉が新規に作られていないわけではなく、新規建設も進められている(図7)。
 焼却施設での処理能力は合計で日量19万3,856トンとなっており、さきほどの焼却処理量を日量換算した11万400トンに比べて、単純計算で1.8倍の能力があることになる。
 近年焼却の方法として溶融処理が拡大をしており、新規建設された67施設のうち4割に相当する26施設が直接溶融炉もしくはガス化溶融炉となっている。施設数の推移をみると、直接溶融炉は2001年の13施設から20施設へ増加、ガス化溶融炉は同じく15施設から34施設へと急激に普及している。
 地球温暖化対策としてもエネルギー回収が注目されているが、2002年末時点で余熱利用ができる施設は全体の7割にあたる1035施設あり、263施設では発電施設も保有している。
 なお、上記の集計は、市町村や一部事務組合が保有する施設であり、このほかにも民間施設であって、一般廃棄物処理の許可を受けて処理をしている施設もある。焼却施設は257施設で、受け入れ可能な一般廃棄物処理能力としては、市町村・一部事務組合が保有する施設能力の15%に相当する、日量2万9849トンとなっている。



●一般廃棄物最終処分場の動向

 2002年度末現在、一般廃棄物最終処分場は2,039 施設(2002年度2,047 施設)、残余容量は13,708 万m3(2001年度14,477万m3)であり、残余施設、残余容量とも減少が続いている。しかし、残余年数は全国平均で13.2 年分であり近年増加傾向がみられる。これは中間処理やリサイクル処理が進むことにより、最終処分量が減少しているためである(図8)。



●ごみ処理経費の動向

 2003年度のごみ処理事業経費については、年間1兆9,800億円であり、2年連続で減少を続けている。処理及び維持管理費(人件費や委託費を含んでいる)は減少しておらず、処理施設建設に関する費用が大幅に下がった結果となっている。国民1人当たりに換算すると1万5,400円、ごみ1tあたり3万8,360円に達する。一袋4kgのごみ袋では150円ほどになる。
 処理および維持管理に関する費目では、人件費と委託費が大きくなっているが、いずれも収集運搬に関わるものが多くを占めている。



●都道府県別の状況

 都道府県別の処理状況について、集計表を示す。
 1人1日あたり排出量が多いのは、大阪府の1,308g、最も少ないのは佐賀県の877gとなっている。ただしこれには事業系一般廃棄物も含まれているため、昼間人口の多い都市ほど多い傾向にある。
 リサイクル率が高いのは、三重県28.4%、宮城県26.6%などとなっている。一方リサイクル率が低いのは、京都府7.4%、大阪府9.5%と近畿圏に多くなっている。


<参考資料>
環境省:一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成15年度実績)について 2005年11月
http://www.env.go.jp/recycle/waste/ippan/ippan_h15.pdf
環境省:日本の廃棄物処理 平成15年度版 2005年11月





一般廃棄物処理の現状


環境省2005年11月4日発表「一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成15年度実績)について」
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=6512(プレスリリース)
http://www.env.go.jp/recycle/waste/ippan/ippan_h15.pdf(詳細版)
最終更新:2006年06月02日 15:55