産業廃棄物処理業者の優良性の判断に係る評価制度
作成:山本・足立(2006.01.?)



環境省は、排出事業者による廃棄物処理業者の優良性の判断を支援することなどをねらいとして、平成17年3月の廃棄物処理法施行規則の改正により、「産業廃棄物処理業者の優良性の判断に係る評価制度」(以下、優良性評価制度と記述する)を創設した。同制度は、平成17年4月1日から施行され、同年10月1日からは自治体による適合認定が開始されている。


1.制度導入の背景

規制強化によるだけでは限界があることが認識されてきたこと。一方、不良な業者は淘汰されていくという、本来の市場の仕組みを回復することが求められていることなどを背景として、環境省では、平成15年度から産業廃棄物処理業優良化推進事業に取り組んできた。行政・処理業者・排出事業者の連携により、廃棄物処理業の優良化を進めることをねらいとしている。
 同事業のもとで、財団法人産業廃棄物処理事業振興財団が事務局となり、処理業実態調査、委託実態調査、産廃情報ネットでの情報公開支援システム構築、電子マニフェスト普及策の策定、公開フォーラムの開催などに取り組んできた。処理業者の優良性評価制度の創設は、これらの事業と合わせて検討・実施された。

図1 産業廃棄物処理業優良化推進事業の概要

出典:財団法人産業廃棄物処理事業振興財団ホームページ「産廃情報ネット」
http://www3.sanpainet.or.jp/other/yuryo01.php


2.優良性評価制度の検討経緯

平成17年以降の一連の廃棄物処理法改正を方向付けた、中央環境審議会の意見具申(平成16年2月)においても、排出事業者が自ら優良な処理業者を選択できるよう国により評価基準が設定されるべきであることが提言された。同意見具申では、この評価基準に適合する業者に対して許可手続き簡素化などの優遇措置などにより優良化へのインセンティブを与えることや、公表された情報が委託業者の選定や金融機関による融資などの様々な市場活動の場面で活用されることを期待することも提言されている。
 平成16年3月末には、産業廃棄物処理業優良化推進委員会が設置され、同年8月に評価基準をまとめるまで検討が行われた。
 検討においては、処理業者を評価していく上で、処理業者の情報が不足していることが大きな課題として挙げられた。また、処理業に関わる業種・業態の違いから、評価を一般化し難く、一律評価を行うことによる危険もあることが指摘され、排出事業者による判断を助ける趣旨の制度とされた。処理業者の情報を出す責任、排出事業者の情報を探り出す責任の最低限の条件を示した制度と言える。結果として、優良性評価制度は、評価・格付けよりも情報公開を重視した制度となった。
 また優良性評価制度のもとでは、処理業者の処理料金についても開示が求められるようになった。処理料金の開示については、賛否両論があった。反対する立場からは、他の処理業者によってデータが使われ、価格競争が激化するという懸念も示されていた。また、一律の料金表示が困難であるという意見もあった。一方、排出事業者にとって料金の相場を判断基準として知る必要があることや、料金算定式の確立はが処理業者のマネジメントの高度化を求めることになることなどから、見積もり請求の様式を公開するなどの多様な形式で料金が開示されることとなった。
 一方、大手の排出事業者は、優良性評価制度に頼らずとも、自前で委託先選定のための評価のしくみを作ってきている。また、大手の処理業者においても、自前で情報公開・PRの体制を作ってきている。そのため、優良性評価制度は特に中小の排出事業者・処理業者による利用を想定したものであると言える。専任の廃棄物管理担当を置くことが困難な、中小の排出事業者が委託先選定にあたっての正当性を確保する、悪徳業者を避けるなどをねらいとしている。


3.評価制度の目的

環境省の優良性評価制度は以下を目的にしている。

①一定のレベルを満たす処理業者を社会的に明らかにする
②排出事業者が委託業者を選定する際の参考となる重要な情報とする
③優良化を目指す処理業者の取組に具体的な目標を与える
④基本的な判断基準が各都道府県等でまちまちとなり、処理業者に混乱と過重な負担をもたらす事態を避けること


4.基準適合審査

基準適合の審査については、許可の更新・変更の手続き時に申請を行い、
①遵法性、②情報公開、③環境保全の取組の各項目について都道府県による審査を受ける。
 適合した処理業者は許認可の際に一部の手続きを省略できる、適合業者を広くホームページなどで公表するなどの優遇措置を受けることができる。また、許可証に適合した旨を記載できる。
図2 優良性評価制度における審査等のフロー
資料:「産業廃棄物処理業者の優良性の判断に係る評価制度の解説」(環境省、平成17年4月)


5.評価基準項目 

評価基準項目は、大きく①遵法性、②情報公開、③環境保全の取組の3項目からなる。

①遵法性
 申請の直前の5年間にわたり、収集運搬業・処分業等の区分の許可のもとで的確に処理業を行っており、法令の規定による不利益処分を受けていないことが求められる。ここでいう法令とは、浄化槽法・大気汚染防止法・騒音規制法・海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律・水質汚濁防止法・悪臭防止法・振動規制法・特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律、ダイオキシン類対策特別措置法・PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する法律である。また、不利益処分には、改善命令・措置命令・事業停止命令等がこれにあたり、行政指導は含まれない。

②情報公開
 表9に示す項目についてホームページで公開することが求められる。
 申請の直前5年間にわたる公開が原則として求められるが、経過措置として一定の間、公開期間の短縮が認められており、平成18年9月30日までの間は6ヶ月の公開でよい等とされている。

表9 環境省優良性評価制度における情報公開項目
(表省略)



③環境保全
 環境配慮の取り組みが標準的な規格等に適合していることについて、環境大臣が定める認証制度により認められていることを求めている。環境大臣が定める認証制度には、ISO14001規格、エコアクション21ガイドライン及びこれと相互認証された規格が該当するとされている。また今後、環境省では、適当と認めた規格を追加していくとしている。
 なお、中小・零細の処理業者の負担に鑑みて、過重な負担無く取得できる環境マネジメントシステムの認証制度が十分普及しているとは言えない状況から、経過措置としてこの項目の適用は平成18年10月1日からとされている。


6.都道府県による優良性評価制度の導入状況

前述のように、優良性評価制度における適合審査は処理業の許可の更新手続き時に、都道府県等が実施することになった。また、平成17年10月から審査が開始されたが、実際に審査制度を導入するかどうか、あるいはいつ導入するかは、自治体の判断にゆだねられることとなった。そのため、表10に示すように、17年11月末時点では、4分の1弱の都道府県が導入しているに留まっている。なお、導入予定のない岩手県東京都においては、すでに独自の制度を導入しているため環境省の優良性評価制度の導入を見合わせている。
 このように導入済みの都道府県が少ないことに加えて、処理業の許可更新手続きは5年おきとなっているため、すぐには適合審査を申請することができない状況である。そのため、評価制度の効果などが評価できるようになるには、しばらくの年月が必要となると考えられる。
 一方自治体からは、自治体の負担や審査能力に対する心配、許可権者である都道府県が審査を行うことに対する是非の意見も出されている。また、処理業の許可制度と評価制度のダブルスタンダードを問題視する声もある。

表 10 環境省優良性評価制度導入状況
(表省略)




<参考資料>
1)環境新聞編集部編(2006)産廃処理業の優良化を考える.環境新聞社,114p.
2)財団法人産業廃棄物処理業振興財団編(2005)産業廃棄物処理業者優良性評価制度の解説-そのしくみと活用マニュアル.環境産業新聞社,100p.

最終更新:2006年05月26日 14:35