電気用品安全法

作成:足立(2006.04.11

修正:野瀬(6月19日)


1.これまでの流れと法改正の背景

 電気製品の安全性確保は逓信省(現在の経済産業省と総務省の前身)時代から取り組まれており、制度としては昭和10年に「電気用品取締規則」が定められ、電線や配線器具などに加え、家庭用の電熱器具なども含めた電気製品の取り締まりが始まった。この規則により、製造事業者や輸入事業者は電気試験所で安全性の試験を受けることなどが義務づけられ、承認品にはマークが表示された。戦後になって同規則が実状に合わなくなり、昭和36年に「電気用品取締法」が制定された。この法律では、政府が決めた安全基準や、製品に表示しなくてはいけない内容を行政機関が確認していた。

 こうした様々な経緯をたどりながら、平成118月に「通商産業省関係の基準・認証制度等の整理及び合理化に関する法律」(法律第121号)が公布され、電気用品取締法が改正されて電気用品安全法となり、平成1341日施行された。

 改正の背景として、近年では電気製品を生産する技術レベルが飛躍的に向上し、設計・製造が原因で発生した事故が減少していること、海外との安全規制の違いによる貿易障壁があるため、電気製品を海外から日本へ輸出することの妨げになっていることがあげられる。これらの背景の下、政府は、法改正の考え方として、電気製品が市場に出回る前に政府が事前に安全チェックをする制度を廃止し、今後は「自己責任原則」による、つまり製造事業者、輸入事業者、販売事業者、そして消費者の電気製品に対する安全意識を活用するということとしている。


2.電気用品安全法の概要

 電気製品安全法では、電気用品による危険及び障害の発生を防止することを目的とし、製造・輸入事業者には、法律対象になっている製品を製造・輸入するときは、安全を確保するために必要な技術基準に適合する必要があり、特定電気用品においては、登録検査機関の技術基準適合性の検査を受け認証されなくてはならない。基準に適合した製品にはPSEマークを付すことができ、販売事業者においては、マークが付されていない製品の販売を禁止する等の様々な措置を規定している(1)。法律の効力は平成13331日の法律施行以前に製造又は輸入された製品にも遡及する。旧法に基づく表示のある電気用品の販売については、当該電気用品の品目ごとに、それぞれ、5年間、7年間、10年間の経過措置期間(販売猶予期間)が設けられている。

 経過措置期間内の電気用品については、当該期間内であれば自由に販売することができる。経過措置期間をすぎた電気用品においては事業者が自主検査等を行いその安全性を確認した上で新たにPSEマークを付すことにより販売が可能となる。

 また法律対象電気用品で技術基準に適合しないものを製造し・輸入・販売し事業者やマークが付されていない製品を販売した事業者に対しては、政府が強制的に回収命令(リコール)などを発動し、さらにそれらの命令に違反した場合には、1億円以下の罰金を科すなどの罰則が盛り込まれている。


表1 対象電機製品に付される表示

特定電気用品

特定電気用品以外の電気用品

構造又は使用方法その他の使用状況からみて特に危険又は障害の発生するおそれが多い電気用品、全112品目

特定電気用品以外で法律対象となっている電気用品、全338品目

適合マーク

※加えて、認定・承認検査機関のマーク、製造事業者等の名称(略称、登録商標を含む)、定格電圧、定格消費電力等が表示される

※加えて、製造事業者等の名称(略称、登録商標を含む)、定格電圧、定格消費電力等が表示される

対象商品例

電気温水器

電熱式・電動式おもちゃ

電気温蔵庫

電気マッサージ器

自動販売機

直流電源装置

電気こたつ

電気カーペット

電気冷蔵庫

電気かみそり

電気たこ焼き器

音響機器

※PSE:P及びSはProduct Safety、EはElectricalAppliance&Materialsの略


3.法改正への対応

(1)自主検査

 PSE法に基づく届出を行った事業者は、旧法に基づく表示が付された電気用品について、自主検査等を行って技術基準に適合していることを確認した上で、新たにPSEマークを付けることが可能となる。この場合には以下のような取り組みが必要となる。

①氏名・住所、取り扱う電気用品の型式等について届出を行う。

②取り扱う電気用品について自主検査を行い技術基準に適合しているかを確認する。

③自主検査の検査記録を作成し保存する。

④技術基準に適合した電気用品についてPSEマークを付す。

 中小事業者による自主検査等の取組に対しては、検査機器の無料貸し出し、無料の出張検査サービスなど、経済産業省が中心となって支援することとしている。電気用品安全法の経過措置の一部終了に伴う対策の一環として、3月末から4月上旬にかけて、中小販売事業者向けに講習会を開催し、PSEマークを表示するために必要な法的手続きや検査の方法等について説明会を全国各地で行った。


(2)特別承認制度

 いわゆるビンテージものと呼ばれる電気楽器等(電気楽器、電子楽器、音響機器、写真焼付器、写真引伸機、写真引伸機用ランプハウス及び映写機をいう)について、経済産業大臣に申請をして承認を受ければ、PSEマークなしでも販売することができるようになった。ただし、販売に際しては下記の事項を実施する必要がある。

①経済産業省から承認を受けた事業者であることを顧客からわかるようにする(当省からの承認書(店舗が複数ある場合にはコピーでもかまわない)を店頭に掲げるなど)。

②製品を販売する際には、「PSEマークが付されていない電気用品であり、取り扱いに慣れた者に販売する」旨を顧客が理解できるように説明し、その顧客が「取り扱いに慣れた者」であることを確認する。

③製品の販売実績(②の確認の有無を含む)を記録に残す。

 この制度の創設の背景には、日本シンセサイザー・プログラマー協会が主導し電気用品安全法に反対した音楽家などの多数の有名人などとともに要望書とともに集めた74,987人分の署名を提出したことなどの動きなどがあげられる


4.法律の影響

(1)中古販売店

 電気回路の換装のノウハウ、技術、設備直があり製造業者の届出を出すことができる店舗は、現在の中古販売店の中でもそれほど多くはない。届出の出せない店舗は中古販売業務を停止もしくは縮小せざるをえなくなる。店頭に在庫として残ったPSEマークのない中古商品は、そのままでは販売ができないため41日以降はすべて資産価値0の廃棄物となる。その結果、廃業、倒産に追い込まれる中古販売店も出てくると考えられる。結果としてPSE法の影響で、現在のリサイクル(リユース)や環境保護、ごみ減量、もったいないの思想等と逆行するような結果につながりかねない。


(2)ユーザー

 ここからは一部の限られたユーザーに関する問題を展開する。中古機器が重要かつ高価な、オーディオ、楽器、録音機器などの流通には、特別承認制度によって完全に販売が禁止されるというわけではなくなったが、相変わらず予断を許さない状況にある。独自に製造業者として届出を出し、41日以降も変わりなく買い取り・販売を続ける業者がある一方で、多くの中古販売店はそういったノウハウ、設備等がないためにPSEマークのない中古商品を販売できなくなる。そういった中古商品の購入を考えるユーザーにはPSEの取得を行うことができる販売店がどこにどのくらあるのかわからない。

 もしもそういった対応のできる店舗が非常に少なく、多くの中古販売店は中古販売業務を停止もしくは縮小するとなると、ユーザーがほしがる商品がごく少数の業者に集中する。それによって寡占状態となり、中古価格は高騰する可能性が否定できない。一方、それほどコストをかける価値のない中古商品は投売りされるか、4月以降はオークションなどで個人取引がおこなわれるのみとなる。こうして、中古機器の二極化が進むのではないかと危惧される。


参考文献・ホームページ

(1)http://www.jet.or.jp/index.html(財団法人電気安全環境研究所)

(2)http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/outline/hou_outline.htm(経済産業省「電気用品安全法の概要」)

(3) http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/tetsuduki_annai/vintage/vintage.htm(経済産業省「特別承認制度(いわゆるビンテージものの特別承認)について」)

(4)http://www.jspa.gr.jp/pse/petition.html(日本シンセサイザー・プログラマー協会)

(5)http://www8.atwiki.jp/denkianzen/pages/19.html(電気用品安全法@2chまとめ)

最終更新:2006年06月19日 17:23