不法投棄の動向
作成:山本・足立(2006.05.12)
環境省の統計によると、平成16年度中に都道府県等により把握された不法投棄件数は、673件となっており、平成13年度以降減少傾向にあるものの、近年は年間1,000件程度を推移してきた。投棄量についても、事件発覚の年度の集計・表示によるため増減はあるものの、近年は年間40万トン前後を推移している。ただし、このうち20.4万トン(49.7%)は平成15年度以前から不法投棄が行われていると考えられる静岡県沼津市の事案によるもので、同事案を除くと20.7万トンとなる(循環経済新聞・平成18年1月23日号)。
投棄量5,000トン以上の大規模事案は7件で、件数ベースでは全体の1%に過ぎないが投棄量の合計は30.5万トンで、全体の74.4%を占める。
図1 不法投棄等の件数・投棄量の推移
資料:「産業廃棄物の不法投棄等の状況(平成16年度)について」(環境省、平成17年11月)
注1)件数及び投棄量は都道府県及び保健所設置市が把握した産業廃棄物の不法投棄のうち、1件あたりの投棄量が10t以上の事案について集計している。
注2)岐阜市事案は平成15年度、沼津市事案は平成16年度に発覚したが、不適正処理はそれ以前から数年にわたって行われている。しかし、それぞれ発覚した年度に集計して示している。
不法投棄の実行者の内訳についてみると、図2のようになっている。
投棄件数では、排出事業者によるものが43.2%と最多となっている。次いで、投棄者が不明(38.9%)、無許可業者(9.7%)、許可業者(6.3%)の順となっている。
投棄量では、無許可業者によるものが41.9%を占め最大である。次いで、許可業者(19.8%)、排出事業者(15.6%)の順となっている。
ただし上記には、平成16年度に発覚した沼津市の事案が含まれていない。これを含めると許可業者の投棄量に占める割合が大幅に増える結果となり、59.6%に及ぶ。結果として、許可業者による不法投棄量が最も多いことがわかる。
図2 不法投棄等の実行者の内訳
資料:「産業廃棄物の不法投棄等の状況(平成16年度)について」(環境省、平成17年11月)
注)平成16年度に発覚した沼津市の事案は含まれていない。
次の表に示すように、平成2年11月に摘発された香川県豊島における当時国内最大規模の不法投棄事件以降も、大規模な不法投棄事件が起こっている。いずれも、摘発にいたるまで、数年に及ぶ不適正処理が続けられた結果となっている。また、このような一連の事件が、近年廃棄物処理法の改正が重ねられ、規制が強化されてきた背景となっている。大規模不法投棄等の原状回復の推進を目的とし、事業の方針・計画策定や国庫補助等の措置について定めた「特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法」が平成15年に制定されたり、5年以内に5,000トン以上の規模の不法投棄をゼロとすることを目標として地域の意識向上や人材育成を行う「不法投棄撲滅アクションプラン」が平成16年6月に環境省により策定されている。
表1 近年の主要な大規模不法投棄事件
摘発された年月 |
事件のあった場所 |
規模 |
事件の概要 |
平成2年11月 |
香川県豊島 |
47万m3 51万トン |
昭和50年代後半から平成2年にかけて、中間処理業者である豊島総合観光開発(株)がシュレッダーダストや廃油、汚泥等の産業廃棄物を有価物と称して同社が管理する処分地に大量に持込み、野焼きや埋立てを繰り返し、不法投棄を行った |
平成5年注1) |
三重県四日市市 |
159万4千m3 |
最終処分業者である川越建材興業が最終処分場周辺の許可外区域の田畑や山林に認められた容量以上の埋立を行っていた。処分場の地下水から環境基準の約3~4倍のベンゼンとヒ素が確認されている |
平成9年10月 |
三重県桑名市 |
3万m3 |
収集運搬業及び中間処理業者である七和工業が、解体工事に伴う建設廃棄物の自社処分場として同県桑名市五反田に設置した安定型処分場(いわゆるミニ処分場2,906m2)にベンゼン等を投棄したことにより、処分地周辺において地下水汚染が生じた。隣接する建設工事現場において、廃油の浸出が見られたことから発覚。 |
平成11年11月 |
青森・岩手県境 |
80万m3 87万6千トン |
青森県の中間処理業者である三栄化学工業(株)が埼玉県の中間処理業者である縣南衛生(株)と共謀し、青森県田子町及び岩手県二戸市にまたがる同社事業場敷地内に、ごみ固形化物、たい肥様物、鶏糞、燃え殻、セメント固形物、有機溶剤入りドラム缶、医療廃棄物などを不法投棄した |
平成11年11月 |
山梨県須玉町 |
約13万m3 |
解体業及び収集運搬業者である(有)坂下工業が自己所有地を自社処分場(安定型ミニ処分場2,997m2)として埋立開始。当初から処理基準違反の処分(廃プラスチック類の未破砕埋立)を行うほか、後には他社からの廃棄物を埋め立て、知事から最終処分場の設置許可を受けることなく、産業廃棄物を投棄していた |
平成13年9月 注2) |
福井県敦賀市 |
120万m3 |
最終処分業者であるキンキクリーンセンターは、処分場が満杯になった後も無許可で営業を続けた。その結果、増設許可の約13倍にあたる廃棄物が埋立てられた。この処分場には62市町村・一部事務組合からの廃棄物も処分されていた。 |
平成16年3月 |
岐阜県岐阜市椿洞 |
52万m3 75万3千トン |
収集運搬及び中間処理業者である善商が、同社所有の処理施設に隣接する谷地に、廃プラスチックや木くず等の建設廃材を大量に不法投棄した。 |
平成16年11月 |
静岡県沼津市 |
36万5千m3 20万4千トン |
中間処理業者及び無許可業者により許可業者の敷地に隣接する山中に廃プラスチックや木くず等の産業廃棄物が不法に投棄されていた。 |
注1)許可地域外の埋立を県が把握した年
注2)許可取り消し年
資料:環境省報道資料「三重県桑名市事案に係る『特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法第4条の規定に基づく実施計画(案)』に対する環境大臣の同意について」(平成17年4月、http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=5870)
環境省報道資料「山梨県『須玉町日向処分場の支障の除去等の実施に関する計画書』(案)に対する産廃特措法第4条第4項の規定に基づく環境大臣同意について」(平成16年8月、http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=5299)
平成17年度環境白書(環境省)
http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h17/html/kh0502040400.html)
岩手日報(平成17年11月8日)
http://www.iwate-np.co.jp/newspack/cgi-bin/newspack.cgi?national+CN2005110801002524_1)
環境省ホームページ「環境政策最前線2 廃棄物の不適正処理の撲滅に向けて」(http://www.env.go.jp/guide/saiyo/pamph/html/saiyo07.html)
京都政経調査会ホームページ
http://tyousakai.hp.infoseek.co.jp/05-0618-1.htm)
環境gooホームページ「敦賀市不法投棄事件詳細解説」
(http://eco.goo.ne.jp/word/ecoword/E00557.html)
日本共産党嶺南地区委員会ホームページ
(http://www.hokuriku.ne.jp/communeR/gomi/gomi-index.html)