産業廃棄物税


作成:足立將之(
4月27日)

修正:野瀬光弘(5月11日)


1.導入状況

 産業廃棄物税(以下では産廃税とする)は自治体が条例に基づいて独自に課税し、税収を環境対策などに使う法定外目的税である。ここでいう法定外目的税は、自主的な権利を尊重する視点から、平成124月に施行された地方分権推進一括法に定められた。平成14年に三重県で最初に導入されたのを皮切りに、平成184月時点では24府県と1市(表1)で導入されており、他にも北海道や四国4県で検討作業が行われている

 産廃税以外の法定外目的税は、東京都の宿泊税、山梨県富士河口湖町の遊魚税、新潟県柏崎市の使用済核燃料税など1自治体に限定されたものである。産廃税がここまで多くの自治体で導入されている理由としては、産業廃棄物行政を行うための財源不足、産業廃棄物の排出に対する課税といえば世論の批判が起こりにくいということがあげられる。また、産業廃棄物は広域にまたがって処理されることが当たり前であり、産廃税を導入していない県に、産廃税を導入している県の産業廃棄物が流れてしまう恐れがあり、それを防ぐためという理由もある。

表1 産廃税を導入した自治体

自治体区分

施行開始

該当

都道府県

平成14

三重県

平成15

岡山県、広島県、鳥取県

平成16

青森県、岩手県、秋田県、新潟県、滋賀県、奈良県、山口県

平成17

宮城県、京都府、島根県、福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、鹿児島県、宮崎県、熊本県

平成18

福島県、愛知県、沖縄県

市町村

平成15

福岡県北九州市

資料:総務省「法定外税の概要」ほか


2.制度の概要

 産廃税創設の目的は概ねどの自治体も共通で、循環型社会形成の促進、産業廃棄物処理の信頼回復と財源の確保、最終処分場の延命等となっている。しかし制度の仕組みにおいては、税金の徴収方法や納税義務者等自治体ごとに相違が見られ、また具体的な税収の使途等も様々なことに当てられている。それらを以下で述べる。

(1)制度の内容

 産廃税は、産業廃棄物を1年間に一定量を超えて搬入した者に1トンあたり1,000円の税金をかけ、その税収を自治体があらかじめ定めた使途(廃棄物減量、不適正処理監視など)に使うという制度である。

 制度の仕組みは事業者申告納付方式、最終処分業者特別徴収方式(最終処分業者が処理料金と併せて税を徴収)、最終処分業者課税方式、焼却処理・最終処分業者特別徴収方式の4つに分けられる(表2・・・表中の概略図は省略)。一般的に、排出事業者に申告納付を求める方式は、減量化に対するインセンティブや意識付けがより働きやすい一方、徴税事務負担の観点から、課税対象を大規模な事業者に限定せざるを得ない。三重県は年間1,000トン、滋賀県は年間500トン未満の排出者は課税免除となる。このような免除点を設ける理由は、設けないと納税義務者が膨大な数にのぼるからである。

 他方、最終処分業者に課税または特別徴収させる方式は、簡素な仕組みで公平に課税でき、かつ広域調整も容易である一方、税負担者として想定されている排出事業者への転嫁が十分になされず所期の減量化効果が得られないおそれがある。例えば、排出事業者に対して最終処分業者や中間処理業者の力が相対的に弱ければ、税額を排出事業者に完全に添加するのは難しい。税負担が事実上、最終処分業者や中間処理業者の負担になると、排出事業者を納税義務者とする制度とは矛盾が生じてしまう。

2 産廃税の類型

区分

事業者申告納付方式

最終処分業者特別徴収方式

最終処分業者課税方式

焼却処理・最終処分業者特別徴収方式

概略図

課税客体

産廃の中間処理施設または最終処分場への搬入

最終処分場への産廃搬入

最終処分場における産廃の埋立処分

焼却施設及び最終処分場への産廃の搬入

課税標準

・最終処分場へ搬入される産業廃棄物の重量

・中間処理施設への搬入される産廃の重量に処理係数を乗じて得た重量

最終処分場へ搬入される産業廃棄物の重量

最終処分場において埋立処分される産廃の重量

焼却施設及び最終処分場へ搬入される産廃の重量

納税義務者

産廃を最終処分場又は中間処理施設へ搬入する事業者

最終処分場に搬入される産廃の排出事業者及び中間処理業者

最終処分業者及び自家処分業者

焼却施設及び最終処分場へ産廃を搬入する排出事業者又は中間処理業者

主な導入自治体

●施行

三重県、滋賀県

●施行

鳥取県、岡山県、広島県、青森県、秋田県、新潟県、奈良県、山口県

施行予定

宮城県、京都府●検討

島根県

●施行

北九州市

●検討

福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、宮崎県、鹿児島県、熊本県、沖縄県

参考:環境省「産廃税の概要」


(2)税収の使途

 産廃税創設の目的はその税収の使途により具体化される。表3に示したように、各自治体では、産業廃棄物の発生抑制、減量化、リサイクル等といった適正な処理の促進に関する施策の費用に充てられることが多い

3 税収の使途

使途の種別

該当団体数

1.民間業者が行う減量化のための技術開発や施設設備への助成

13

2.優良な処理業者の育成

7

3.自治体が行う減量化、リサイクルなどのための技術開発や調査

6

4.処理施設の周辺整備事業(公園等)への助成

5

5.監視体制の強化などの不適正処理未然防止対策

8

6.普及啓発活動

6

7.その他

産業廃棄物処理情報の共有化の促進

2

リサイクル関連情報の提供

1

再生製品市場の形成

1

環境リサイクル産業の育成・復興

1

不法投棄された産業廃棄物の撤去

1

資料:環境省(2004

注:環境省のアンケート調査により回答のあった14府県市


(3)効果

 税の効果については、導入後の経過期間が短いため、明確な結論を得ることは困難であるが、最も早く平成14年に産廃税を導入した三重県の調査結果によると、産業廃棄物の排出量はほとんど変化がないが、再生利用量及び減量化量がともに増加(それぞれ対2001年度比で約5%及び約9%の増)した結果、最終処分量は対13年度比約24%の減となった。また、排出量に占める最終処分量の割合は、平成12年度の約20%から14年度には約12%と急速に減少している。

 三重県が多量排出事業者に対して実施したヒアリングの結果によると、大部分の事業者においては、産業廃棄物税の導入とは別に、最終処分場のひっ迫を背景として、生産工程の改善等による排出削減やセメント原料化等のリサイクルの取組を継続的に進めているが、税導入や税収による補助事業の活用をこのような取組の推進の一要因としてあげる事業者も見られることから、最終処分量の減少に税導入の効果もある程度寄与しているいえる。

 図1には三重県内の最終処分場における県外廃棄物の処分状況を示した。三重県内では、最終処分場の残余容量のひっ迫等もあり、排出事業者による減量化への取組が促進されてきているため、県内の最終処分場への搬入量が急速に減少してきている。こうした中で、県外分の処分量も急速に減少してきているが、

最終更新:2006年05月11日 17:24