週刊循環経済新聞(2008年6月30日)
木材情報318 遠方ユーザーの営業戦略

 東日本全域で木くずの地場流通が進むなか、需要高騰から発生量が絶対的に不足する地域のユーザーについては、広域的な集荷をせざるを得ない状況が生じている。
 新築、解体材の発生圏=大都市という条件の先にあるのは、東日本では1都3県。原燃料ともにタイトな東北圏からもかなり営業が入り込んでいるようだ。
 生産側も重視したい条件はさまざまある。
 ある大手ユーザーは最近になり、ふすまやビニルなどを含む「くず材」を破砕したチップについても燃料として受け入れることを決めた。
 値段は数十銭程度だが、これまで処理費を払って焼却施設に出していたものをチップとして出荷できる。コスト削減の効果は「近場」のユーザーに持ち込むよりも大きいと口にする業者もいる。また、ヤードが広いため定期補修などの際にも供給できる点もメリットという。
 ボード原料、燃料用ともに生産するある業者は、ユーザー側の施設と自社のチップとの相性を口にする。例えボード原料であっても、ユーザー側で品質を高める工夫がされていれば手間をかけ過ぎずに供給できるという。
 遠方ユーザーの燃料チップの買値は上昇しており、その買い付け価格に「量が積めればマテリアルを抜く」と驚く業者もいる。また最近では、ボード用も上昇傾向にあるほか、東北方面から柱材などを有価で買い取る動きもみられるという。
 老舗のあるチップ業者は「燃料チップは60キロ圏内でないと採算が合わない」としているが、遠方ユーザーは距離で劣る分「付加価値」を付けて補っている。

 

※チップは発生場所、質、量ともかなりバラツキが大きいので、小規模でもルートを確保すれば商売が成り立つようです。需給がタイトなうちは「徹底的に利用する」方向を変えようがありません。


週刊循環経済新聞(2008年6月23日)
木材情報317 建設ラッシュで「地場化」進む

 東日本では今後稼働する燃料利用施設も多いことから、ユーザー各社とも価格や距離、供給体制、他燃料の検討など、水面下の動きを急速に早めている。
 最近では化石燃料の高騰から、集荷エリアの地場化が進む。北関東にこの春、2基目のバイオマスボイラが稼働したA社に燃料チップを持ち込むある業者も、価格に表れない「距離」の重要性を口にする。さらにこの動きは進みそうだ。
 ユーザー側の主だった動きをみると、大型ボイラを複数所有するB社は、原料チップで取り引きのある業者から3割程度のバークを調達。今後の確保対策として、一部で行う工場間の木くずの融通を広げるほか、地場の確保や生木の強化にも努めたいとしている。
 関東で大型バイオマス発電施設の本格稼働を始めたC社。燃料チップを年間20万トン利用することから、供給会社は外部から持ち込む業者に対して値上げを実施。地の利を生かし関東からの安定量確保を目指す。
 来春、発電施設の稼働を控えるD社は、現在、50%程度の確保量としている。現在でも若干の「色付け」を行うというが、年間10~14万トンを確保するため「特別価格」の設定も行っているという。
 北関東でバイオマス発電施設の建設を控えるE社は、地場業者複数社が供給するスキームを構築。年間約14万トンを確保するため、さらに「関越自動車道を利用した近距離の廃材確保を行う」ことを明らかにしている。
 これまで木くずについて処理費を取っていたF社。関係筋によると、7月からチップの有価買い取りを始めるとしている。全国規模で有価の動きが進む中、「チップは儲けるものではなくまさに燃料となった」と語る。

 

※同じ紙面の左側に「6月には行って荷がパタッと止まった」と書いてある部分が気になります。いくら地場でチップを確保しようとしても、肝心の建築廃材の木くずがなければ何もできない現実が待っています。


週刊循環経済新聞(2008年6月9日)
木材情報316 運賃負担額が焦点の木質燃料チップ

 木質チップの売値の上昇が続いている。しかし、最終的な値段の決定は、やはり個々のチップ生産業者と需要家との間でやり取りされる条件交渉による。
 西日本のなかで、他の地域と比べると、地元の木質チップの需要量が一回り小さい近畿圏は、中国・四国地域や中部地域の間に位置し、草刈場の様相を呈している。
 大手製紙工場は、チップ輸送用の船を仕立てて近畿圏の港へ着け、一括して燃料用チップを持ち帰るという動きもある。港近くのチップ生産業者にすれば、余分な運賃をかけずして、正味に近い燃料チップの売値が実入りとなるので、悪い条件ではないと考えられる。ただし、原料木くずの搬入量は相変わらずタイトなため、入口のダンピングは激化し、処理料金の下落に歯止めがかからない状況となりつつある。
 今後は、どの需要家がいくらまでの運賃負担をするのかが、量的に限られる燃料チップの流れを左右することになりそうだ。
 マテリアル利用では、柱材の確保を巡るチップ生産業者のつばぜり合いが激しさを増している。
 製紙原料用チップの買値は、輸入材の高騰などを背景に上昇しており、1キログラム15円前後で推移している。急場しのぎであっても輸入チップを使うと、1キログラム当たり30円以上と製紙工場のコスト負担は大きくなる。
 柱材の切削チップは、ピンチップと適度に混合することにより、サイロからの流れがよくなるため重宝される。製紙工場としては輸入材と比べ安価で取り扱い易い、切削チップの利用割合を高めるほどコストメリットが出る。しかしチップの生産サイドでは、柱の買い取り業者が現れるなど、原料確保環境の先行きは不透明感が漂う。

 

※原油価格高騰の影響がチップの需給にも及んでいるようです。船はとても効率のよい輸送手段なので、今後も国内での移出入が増えると予想されます。内陸部に立地する業者はコストアップでかなり厳しい状況なのかもしれません。


週刊循環経済新聞(2008年6月2日)
木材情報315 東海では再生利用指針作成へ

 前回、愛知県が制定したリサイクル製品の環境安全性に関し事前チェックを行う「再生資源の適正な活用に関する要綱」について触れたが、東海木材資源リサイクル協会(名古屋市、山口昭彦会長)では、会員各社が個別に届け出をせずに済むよう、独自の「木材資源の再生利用指針」(案・仮称)の作成作業に入っている。
 同指針で対象とするのは、燃料チップと製品チップ(マテリアル利用)で、内容としては▽「木質チップ」は販売されるユーザーの品質基準により形状および品質が決定され、それぞれユーザーと会員間で契約される▽「木質チップ」は各会員施設により保管を行い、保管基準は「消防法」第十条4項および当該自治体の条例などに基づき許可を受けたものとする▽生産および販売実績については協会にて管理し行政の申し出があれば提出できるようにする▽「木質チップ」の成分分析を年1回以上とし、その分析結果を5年間協会にて保存▽販売することが困難になった「木質チップ」については「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づき適正に処理-などの項目が盛り込まれている(作成過程につき変更の可能性もある)。
 愛知県は要綱に付随して再生利用指針を設け、製品に関する詳細な考え方、留意事項を記載している。個別の製品事例では、木質ボード(繊維板、木質系セメント板、パーティクルボードなど)があげられている。この中で「生活環境保全上の条件」として、土壌環境基準への適合を示している。カドミウム、鉛、六価クロム、ヒ素、総水銀、セレン、フッ素およびホウ素などの物質の有無、含有の有無が問われ、これら以外でも溶出が懸念される場合は基準適合が求められる。
 愛知県は他の中部各県にも説明を行っている。同要綱の施行状況と効果によっては、オール中部での取り組みになる可能性もある。なお、愛知県の話では、東海木材資源リサイクル協会以外にも、数団体が指針作成と申請を検討しているという。

 

※有害物質への対策はすでにRoHSとしてEUなどに導入され、含有量を基準以内に抑制するよう求められています。木質ボード類は日常生活で接することもあるので、特に注意を払う必要性が高いと思います。

最終更新:2008年09月02日 17:00