週刊循環経済新聞(2008年5月19日)
木材情報314 愛知県の新要綱業界にも余波か

 愛知県が制定し、7月1日に施行する「再生資源の適正な活用に関する要綱」への対応が、木くずチップ生産業者の間で課題となっている。
 同要綱は、フェロシルト問題など産業廃棄物や製品の製造過程で生じる副産物が再生品として使用されるにあたり、生活環境保全上のトラブルが相次いでいる状況を受け、再生品などが市場に流通する前に、それらをチェックすることを目的とする。製品の環境安全性を事前に審査する制度が、都道府県単位で設けられたのは初めて。
 施行後の動向次第では、同様の制度が各地へ広がる可能性もはらんでおり、木くずチップ生産業界全体へ余波が及ぶことも考えられる。
 同制度によると、再生品(再生資源を使用して製造した製品)愛知県内で製造、もしくは愛知県内で排出または発生した再生資源をそのまま販売する場合、すべて届出及び審査の対象となる。すでに販売されているリサイクル製品も対象となるため、木くずチップも該当することになる。
 現行、販売されている製品で該当する場合は、7月1~31日の間に届出をして、審査を受けなければならない。これから販売する再生品は、販売の30日前までに届出が義務づけられる。ただし、再生資源の適正な活用が行われていると知事が確認した業界団体の指針に従って団体加入者により製造・販売されている場合も届出が不必要となる。
 これを受け、東海木材資源リサイクル協会(名古屋市、山口昭彦会長)は、「木材資源の再生利用指針」(案・仮称)の策定準備に入ろうとしている。今後は、定期的な分析などを含め、どのレベルまで指針に盛り込んでいくのかが焦点となってきそうだ。

 

※要綱をみると、木くず以外にも家畜のふん尿が対象に含まれています。行政の規制に批判的な人もいるでしょうけど、どこかで歯止めをかける仕組みがないとフェロシルトのような問題が今後も起こりかねません。


週刊循環経済新聞(2008年5月12日)
木材情報313 常態化する生産即出荷の自転車操業

 木くず搬入、破砕、即出荷。西日本各地のチップ生産施設では、このような状況が常態化している。
 東海木材資源リサイクル協会(名古屋市、山口昭彦会長)が集計した2008年3月度の会員19施設(1施設未集計)によると、出荷は燃料チップが3万7,073トン(前年同月比プラス923トン)、製品(マテリアル)が1万7,522トン(前年同月比マイナス2,349トン)。燃料出荷が1,000トン弱増えている。製品出荷の落ち込みは、燃料への物量的集中が一因とも考えられる。地域需要量の増加率から見れば、さほど驚くべき数字ではない。
 しかし、昨年との大きな差は、在庫量で決定的な違いとなって現れている。
 同じく会員各社の3月度在庫量は、燃料チップが1,576トン、製品チップが361トン、2007年4月のデータと比較すると、製品チップはほぼ同水準であったものの、燃料チップはマイナス2万4,625トンで、大きく落ち込んでいる。
 国土交通省が発表した、2008年3月分の新設住宅着工戸数は8万3,991戸で、前年同月比にして15.6%の減。建築基準法の改正に景気先行きの不透明感の広がりも手伝い、9か月連続の減少を記録する結果となっている。
 木くず自体の増える要因がないところに、需要が一方的に伸長。そして在庫は底をつくといった構図になっている。
 これらの状況を反映し、燃料及び製品チップの買値の上昇とは逆に処理料金は下落の一途をたどっている。
 一時、燃料用グレードの木くずの処理料金は、1キログラム当たり10円前後で推移していた。しかし徐々に値崩れを起こし、中部や関西で7円前後、中国地域はさらに5円前後にまで下がっているという。買値は、この4月の改定で上限に近づいたと見られていることから、今後は体力勝負の“我慢比べ”になる可能性もある。

 

※新設の住宅着工戸数と比例して除去建築物数も減っており、廃材の木くずが入手しにくくなっているはずです。廃棄物処理業者にとっては古い民家が「宝の山」に見えているのかもしれません。


週刊循環経済新聞(2008年5月5日)
木材情報312 燃料チップ価格は軒並み上昇傾向に

 西日本では4月から、廃棄物由来燃料である木質燃料チップやRPFなどの需要家の買値が軒並み上昇している。
 以前から、大手需要家と各チップ生産業者の間で交渉が進められてきたが、その結論が出始めたものと見られる。木質燃料チップ生産業者の間では現状を、かつてない需要拡大を背景に「買値アップの千載一遇のチャンス」(大手チップ生産業者)ととらえる意識が強く、個別交渉に拍車がかかった。
 ある大手需要家は決算期に当たり、経常利益減少の理由として「十分に木質燃料チップを確保できず、割高な重油で補ったため」と発表。原油高の昨今、廃棄物由来燃料の確保が、経営にも影響を及ぼしかねない状況が浮き彫りになった。今回の買取り価格の改定は、需要家サイドが廃棄物由来燃料の取り込みを決断し、動いた結果と考えられる。
 改定後の木質燃料チップの買取り価格は、1キログラム当たり2円から3円弱で落ち着いている。価格改定交渉は、個々の木質燃料チップ生産業者と需要家の間で、閉ざされた形で進められる。需要施設から近い場合は、運賃がつかず、買取り価格は若干低めとなるのが常識であった。しかし、ここのところの交渉では、近場からのチップ供給であっても、プレミアがつくようなケースも出ているようだ。
 ただし、これ以上の無謀な買値アップを要求すると、需要家が他燃料の利用へシフトする恐れもあるため「これ以上の買値アップは考えにくい」(業界関係者)との見方が強い。
 実際に、後発で廃棄物由来燃料利用施設の稼働を計画する需要家の中には、石炭や廃プラスチックのフラフなどで不足分を補える態勢をとるケースも出ている。

 

※廃棄物由来の燃料がどんどん使われていますが、以前にも触れたように燃焼に伴う大気汚染物質の排出が気になります。一定以上の規模ならPRTR制度で報告義務が生じますが、小規模な場合は実態がわかりません。

最終更新:2008年09月02日 16:58