週刊循環経済新聞(2008年2月25日)
木材情報306 注目される森林資源の行方

 最近、木質燃料チップの生産業者を回っていると「皆、次は山に目を向けている」という声をよく聞く。
 燃料需要の急速な高まりで、従来の原料集荷手法で得られる物量はすでに需要サイドへ吸収されており、今後も大幅な伸びは予想しがたい。せん定枝や粗大ごみなど、一般廃棄物系の木質材の活用も多少は期待できるものの、決定打とはならない。
 そのような状況下で、注目されつつあるのが日本の大きな天然資源である山林だ。
 少し古いが、林野庁のデータ(1999年)によると、手付かずの林地残材が970万立方メートルあると推計されている。その他、製材工場などから発生する樹皮やのこ屑などの残材が約1,510万立方メートル(2000年3月・林野庁推計)、建設発生木材が約1,190万立方メートル(2000年度・国土交通省資料より林野庁が試算)となっている。
 このなかで、林地残材以外は、大半がマテリアルもしくはエネルギー利用されている。
 さらに、同じく林野庁資料(2002年3月現在)によると、森林資源全体では国有林10億1,129万立方メートル、民有林(自治体保有を含む)30億2,883万立方メートルと、膨大な資源量となる。
 先の「山に目を向けている」という、木質燃料チップの生産業者のことばを裏付けるような各企業の動きも出始めている。
 トヨタ自動車は、社会貢献活動の一環として、2007年9月、三重県で約1,630ヘクタールの民有林を取得。管理運営は、専門企業に委託し「国内の森林再生モデルの構築」に乗り出している。森林に適切な人手が入ると、木質資源は放置されることなく、活用されていく可能性が高まる。
 一方、合板メーカー国内最大手のセイホクは、岐阜県中津川市の山間部に工場を建設し、原料はすべて国産材で賄うという。
 拓かれゆく森林資源の引き込みは、各産業界の思惑も重なり、今後本格化していきそうだ。

 

※木材輸入のおかげもあって、確かに国内の森林資源は豊富だと考えがちですが、人口1人当たりにすると世界平均より少ないのが実態です。他に原料を代替できない紙用を優先する方が望ましいと思います。ちなみに、森林資源量は「推計」に過ぎないので、現実に利用可能な量は別に試算する必要があります。

 


週刊循環経済新聞(2008年2月18日)
木材情報305 木くず燃料チップ価格の標準線


 西日本では、バイオマス発電施設の需要増を受け、木くずチップ生産業者と需要家の間で価格交渉に入る動きが目立ってきている。
 木くずチップ燃料の場合、前回も触れたが、資源そのものの価値の上下による価格交渉ではなく、条件交渉の色合いが強い。需要先への搬送コストだけでなく、時には原料の物量確保のために生じた中間処理料金の値下げ分まで、条件に加えられたりもする。最近では、納入先までの距離の長短に関わらず、RPFと肩を並べるような売値の提示も見受けられる。
 このような交渉のあり方に対し、木くずチップ生産業界の間では「近距離であるのに、必要以上に高い買値を要求することには疑問を持つ。今はたまたま需要過多だが、将来的にはわからない。代替のバイオマスでも出てきたらどうするのか」と懸念する声も上がっている。
 木くず燃料チップは、資源としての価値の標準が定まらないまま、需要過多の波に飲み込まれ、翻弄されている。しかし、他の廃棄物由来の資源は、少なからず物差しがあって、価格も変動している。
 例えば、製紙原料木くずであれば、輸入チップとの比較。再生重油はC重油と、RPFは石炭といった物差しが当てられる。つまり、需要家は新しい資源の購入価格を上回るかを判断材料としている。
 ただし、廃棄物由来燃料は、RPFも「石炭レス何円」といった域にはまだ達していない。しかし、RPFを単体で利用する需要家のなかには、製紙工場より高い水準で買い取るケースもあり、今後徐々に底上げされていく可能性もある。
 木くず燃料チップは、どこで需要と供給、両サイドに納得する標準の線を引くのか、今後の課題となっている。

 

※やや錯綜していてわかりにくいのですが、何度も書いているように木くずチップの市場が存在しない以上は、相対取引での価格交渉なので互いに納得するかどうかになってしまいます。中期的にみれば、需要過多の状況が変わった時にどんな対応をするかが課題でしょう。


 

週刊循環経済新聞(2008年2月11日)
木材情報304 条件交渉に終始するチップ売買


 各地域で大型のバイオマス発電施設が稼働すると、余剰した木質燃料チップを不足している地域に振り向けて急場をしのぐといった、従来型の手法をとることが困難となりつつある。各地域とも地元の発電施設への供給を維持するだけで手一杯となり「とてもよそに回す余裕などない」というのが実情だ。
 言い換えれば、木質資源循環の「地場産業化」が進行しているといえる。資源需給の均衡が保たれている場合は良いのだが、地域によっては需要施設が乱立し、とても必要な資源が確保できないケースも。
 需要家は、近隣地域で資源を得られなければ、自ずと広域的に集荷を行うことになる。しかし、木くずチップの生産業者からすれば、中間処理料金とチップの売値から、破砕加工賃と輸送費を差し引いた額が利益となる。したがって、遠方へ販売すれば輸送費がかさみ利幅も小さくなるので、チップの売値は多少安くとも、近場の需要家を自ずと選択する。
 需要家、特にパーティクルボードメーカーなどは、木くずチップ以外の代替が難しいので、原料(木くず)を買い付けてでも集荷に走る動きが出ている。製紙用チップなら、輸入チップの価格が、木くずチップ買付けに当たっての基準となりうるが、パーティクルボードは製品の性質上、生木チップの割合を一定以上増やすわけにいかず、コスト的にも見合わない。
 木質燃料チップの場合、RPFや廃タイヤチップを混焼している需要家は、使用する素材の割合を調整できる。ただし、木くずチップの単一使用でボイラーを稼働させている需要家は、やはり買値を上げても必要量を確保しなければならない。
 遠方からの燃料チップ調達は、チップ自体の価格以上に、輸送費をどれだけ需要家が負担するか否かがポイントになる。さらに、生産業者が原料の集荷段階で、物量確保目的で値引きした額も加味した交渉となる。その意味で、資源の価値そのものは二の次。各生産業者と需要家は、条件交渉に終始する状況となっている。

 

※バイオマス発電施設の原料確保に関しては前から書かれていますが、売電も含めた経営状況がよくわかりません。発電効率があまり良くないという話もあるので、稼働を中止するところが出てくる可能性があります。


 

週刊循環経済新聞(2008年2月4日)
木材情報303 チップ市況は“やぶの中”


 西日本では、燃料需要の拡大とともに、木くずの中間処理料金および木質燃料チップの売値の動きが見えにくい状況となっている。
 中間処理料金は、木くず専門チップ生産業者の間では、入口で利潤を確保する意味から、一定水準を維持することがこれまで重要視されてきた。基本的な考え方は現状でも変わらないものの、かつてのようなダンピングによる営業現場での衝突が表面化する事例は少なくなりつつある。
 需要の拡大で、一定量の原料木くずの確保が、木くずチップ生産者にとって生命線であることに変わりない。にもかかわらず、営業現場での原料木くずの争奪戦が表沙汰とならないのは、需要家との燃料チップの売値交渉が上向いていることがトラブル回避の要因となっているようだ。
 木くずの中間処理料金は従来、燃料向けグレードのものであれば、1トン当たり1万円前後というのが相場であった。業者間の認識としては数字上、今も大差ない。だが、実際は解体業者などとチップ生産業者の個別交渉の中で、微妙な値引きが生じているようだ。例えば、ある程度の物量を継続的に搬入する業者の場合は、料金的に何らかの優遇を施すなど、条件は千差万別だ。
 木くずチップ生産業者の原料取扱量は、全体として対前年を下回っている。前回も触れたように、建築基準法改正の影響はまだ尾を引いており、明らかな原材料の増大はまだ確認されていない。
 しかし、入口での取扱量が目減りし、中間処理料による収益が下降しても余りある実入りが燃料チップの販売で得られていると見られる。ただし、需要家との燃料チップの売買条件も個別のチップ生産者ごとに情報が閉ざされており、市況が存在するのかさえ、判別できない状況となっている。

 

※木くずの限ったことではなく、ほぼすべての産業廃棄物にいえることです。価格がオープンになれば業者間のたたき合いが激しくなり、淘汰が起こるかもしれません。コストを積算すれば適正な価格水準はおのずと出てくるような気もします。

最終更新:2008年02月26日 16:33