週刊循環経済新聞(2008年1月28日)
木材情報302 苦境に立つボードメーカー


 2007年6月の建築基準法の改正により、建築確認の手続きおよび検査などが一層厳格化され、審査期間も長くなったことから、住宅着工件数が大きく落ち込み、その余波で解体件数も減少の一途をたどってきた。
 本紙既報の通り、国土交通省が2007年12月27日に公表した建築着工統計調査(2007年11月分)の結果によると、住宅着工件数は、5か月連続の減少を記録している。
 事態を重く見た国土交通省が、改正建築基準法の円滑な施行を目的に、事務手続きの合理化や解釈の明確化を図る観点から、建築基準法施行規則の見直しに回復へ向かうものと期待されている。
 木くずチップ生産各社では、1月に入っても取扱量が未だ対前年を割り込む状況が続いている。加えて燃料チップ需要は逆に増大していることから、原料木くず入荷即チップ化、即出荷という自転車操業を余儀なくされている。ただし、解体業界関係者の話によると「やや上向きつつある」との声も聞かれ、緩やかに改善へ進む兆しも出ている。
 チップ生産各社の原料争奪を巡っての綱引きもさることながら、ここにきて燃料ユーザーとマテリアル需要のつばぜり合いが激しくなっている。ボードメーカー各社では、原料確保がままならず、生産制限をせざるを得ない状況までひっ迫しつつある。
 原料自体の減少により、生産業者は従来よりグレードの低い木くずまで使用範囲を広げてマテリアル需要向けチップを生産する動きもある。その意味で、ボードメーカーにとっては、原料の量的確保難と品質の低下という、悩ましい課題を抱える事態となっている。

 

※2007年の新設建築着工数は前年比17.8%減の106万741で、1967年以来の低水準となりましたが、2006~2010年の平均は約110万という推計もあります。そろそろ需要減退を見越した対策を講じる時期に来ています。



週刊循環経済新聞(2008年1月21日)
木材情報301 林地残材の受入体制を整備


 森林総合研究所は2006~2010年度までの5年間かけて、重点研究として「森林・林業・木材産業における課題の解決と新たな展開に向けた開発研究」に取り組んでいる。
 研究の目的では、木質バイオマスのマテリアルおよびエネルギーに変換・利用するための個別要素技術の開発、地域の木質バイオマスの効率的な収集・運搬技術を開発して地域内資源に則した木質バイオマス利用システムを開発、木質バイオマスの変換・利用における二酸化炭素の排出削減効果の定量評価-の3点をあげている。
 大切なのは研究を推進する方向で、間伐材、林地残材、工場残廃材、建築解体材などの効率的なマテリアルおよびエネルギー変換・利用技術の開発、効率的な収集・運搬システムの開発、バイオマス利活用による二酸化炭素の排出削減効果のライフサイクルアセスメントを行うと示している。
 未利用資源の林地残材などは、伐採したものの集荷について、どういう仕組みだと経済性があるのか、今のところは明確になっていない。研究を通じて効率的な集荷体制がわかってくれば、有効利用の事業化がいっそう具体化する。
 チップ業者のなかには、未利用材の受入を想定した、設備改造に取り組む業者も出てきた。岩手県奥州市の阿部総業は、生木廃材の専用投入口を設け、同廃材からのチップ生産を開始している。元々タブグラインダで良質の解体材などをチップ化してきたが、木材の調達競争が厳しくなるなかで、生木投入の仕組みを確立した。
 破砕機でチップ化した生木を養生乾燥させて、含水率を2~3割下げてから、専用投入口を通じて既存のチップラインにあるスクリーンに送り、再生原料してストックする。水分に加えて土砂付着の問題がある根株も、養生やスクリーンなどの過程を経て、有効利用される。

 

※住宅用の木材でもまったく同様ですが、木質バイオマスの収集・運搬技術を開発しても担い手が伴わないと画に描いた餅になります。木質以外も含めてバイオマス全体でどのように利用システムを構築することが大事です。



週刊循環経済新聞(2008年1月14日)
木材情報300 未利用バイオマスへの期待高まる


 大型のバイオマス発電施設が全国各地で開設し、木くずチップの需給関係は、供給不足が解消されそうにない。従来の解体材などの建廃木くずを集荷対象とするだけでは、木材やチップを奪い合うだけで抜本解決にはならない。
 今年4月から、木製パレットが一般廃棄物から産業廃棄物に移行する。しかし、一廃許可を持たない多くのチップ業者は、コンプライアンスの問題で目立って取り扱ってこなかっただけで、これまでも実際にはチップ化されてきており、区分の変更が木材リサイクルに与える影響はそれほど大きくなさそうだ。
 そこで、チップ業界や処理業界が大きく着目しているのが、間伐材など未利用資源と言われる林地残材の活用だ。年間400万トンの発生量があるとされ、識者は北欧の森林伐採から集荷、破砕、燃料利用などに至るシステムの研究について関心を高めている。
 国内では外国の木材が値上がりし始めていることから、林業が息を吹き返し始めている。林業が盛んになると、生木廃材の確保が追い風になるかもしれない。
 地球温暖化対策も未利用バイオマスの利用を後押ししそうだ。森林総合研究所は2007年9月、京都議定書報告に必要な森林吸収量の算定・報告体制を開発したが、間伐材や枯死木も対象にできる。森林保全の観点に加えて、温暖化対策で間伐と間伐材の利用が国の施策に導入される可能性がある。

 

※2007年7月にも書いたように、林地残材がもし利用できるようになっても優先順位は他に代替のない紙用チップの方を高くすべきです。森林吸収量の算定・報告体制は確かにできましたが、あくまで日本独自の解釈で、国際的に認められるかどうかは未定です。

最終更新:2008年02月01日 18:11