週刊循環経済新聞(2007年10月29日)
木材情報293 大型チップ化施設ひしめく愛知


 愛知県は、中部地域にあっても、木質廃材を取り扱う業者数の増加が顕著となっている。
 県が2007年6月付で公表したデータによると、許可ベースの総施設数(県・名古屋市・豊橋市・岡崎市・豊田市)は39にのぼる。1日あたりの処理能力は6,700トン以上。25日稼働としても1か月あたり17万トン近いキャパがあることになる。単純に12か月を掛けると、年間201万トン以上という膨大な数字が弾き出される。
 許可別には、愛知県知事分が最も多く、29施設で処理能力が1日あたり3,161トン(立方メートル換算の1施設は除外して計算)。名古屋市長許可は1施設に止まっており、1日あたりの処理能力が456トン。豊橋市長許可は、同616トン、岡崎市長許可が3施設で同1,183トン、豊田市長許可が同1,496トンという内訳だ。(端数は編集部で四捨五入)。
 愛知県許可の1施設ごとの許可能力別をみると、5トン未満が6件、大型の100トンを超えるものが13件、そのうち200トン超の特大施設は7件を数える。90トン台の施設も相当数あるので、まさに群雄割拠の状況となっている。
 豊橋市の2社の4施設の中で、100トンを超えるものは2施設(立方メートル換算を除く)。ほか、100トン能力を超える施設は、岡崎市許可が1、豊田市許可3。
 業者によっては生木を専門としているケースもあり、一概に比較対象できない面もある。しかし、木質燃料チップの需要の高まりで、解体材のみならず、生木にも目が向けられる状況を考慮すれば、業者間の競合は避けられないと見られる。
 ここ数年、専門チップ業者からは新興施設について「“小”であっても10集まれば“大”に匹敵する」といった指摘の声が多く聞かれた。しかし、実際は“小”だけでなく、“大”の新興勢力も着実に台頭している。

 

※許可能力と実際の生産量にどの程度の差があるのか気になります。意外に特大施設とされる200トン以上でも、原料が集まらずに稼働率が半分以下になっている可能性が否定できません。

 


週刊循環経済新聞(2007年10月22日)
木材情報292 発生減、需要増のアンバランス


 中部・東海地域では、製紙工場を中心とした、複数の大型バイオマス発電施設の稼動を控え、木質燃料チップを巡る動きが活発化している。
 愛知県下では、異業種数社の出資会社による、木くずチップ化事業への参入計画が浮上。規模的には、月産3,000トンクラスの生産設備を導入するとの情報があり、木くずチップ業者の間では、「今でも材の取り合いで、ダンピングが横行しているのに、さらに激化するのでは」(大手業界関係者)と、懸念する声があがっている。
 中部・東海地域の木くずチップ業者13社が加盟する、東海木材資源リサイクル協会のとりまとめたデータによると、会員19施設の8月度生産量は燃料が2万7,532トン(対前年同月比=マイナス6,648トン)、製品原料は1万1,365トン(対前年同月比マイナス6,700トン)だった。在庫も、燃料チップ1万9,843トン(対前年同月比=マイナス6,918トン)、製品原料チップ328トン(対前年同月比=マイナス221トン)、未破砕の原材料1万1,509トン(対前年同月比=マイナス1万765トン)。
 全体では、生産ベースでマイナス1万3,348トン、在庫が1万7,904トンの減少となっている。
 背景には、建築基準法の改正で審査が厳格化されたことによる、住宅着工件数の鈍化等の外部要因も指摘されている。国土交通省のデータによると、07年8月分愛知県の着工建築物床面積の対前年同月比は、全体で50%以上、居住用だけに限っても45%以上のマイナスとなっている。
 これら状況に加え、急速に増加する木くずチップ専門施設の許可件数も、市場に大きな影響を与えている。

 

※チップ生産量と住宅着工戸数との関係が書かれていますが、他の原因があるような気がします。実情のよくわからない状態では対策を講じることができません。


週刊循環経済新聞(2007年10月8日)
木材情報290 産廃移行控え、パレットの受け入れ体制固める


 花粉症対策や荒れた森林の再生で、全国的に植林後の針葉樹林の伐採が増えているようだが、伐採後の林地残材など未利用資源のチップ化への道のりは遠い。
 効率的な林地からの残材回収策や理想的なチップ施設の設置場所、発生現場または回収後の仮置場からチップ施設までの輸送方法などが、すべて検討・研究途上にある。チップ業界で林地残材の利用先進国と言える北欧視察の需要が高まっているが、裏返すとまだ実態把握を始めたばかりの段階にある。
 山林を含めた林地は、国や都道府県など公共機関が所有しているものが少なくない。予算措置で対応しなければ未利用材の積極利用はすすまないが、昨年までは、バイオマス発電施設の整備に軸足が置かれていた。林地残材の調達方法の確立や恒久的な材搬出の予算措置が整わないと、有効利用は軌道に乗らない。
 早期の林地残材の実利用をめざしつつ、木材リサイクル産業では当面の間、材確保について従来の解体材やパレット・梱包材を主力とせざるを得ない。
 来年4月1日からの木製パレットや一部木製梱包材の産廃移行は、排出事業者やチップ業界にとって朗報だが、コンプライアンス面での優位性が目立つ。廃材調達はすでにルート整備を進めているところも多い。
 一例を挙げると、チップ業者のC社は約7年前の創業時から、新築・解体など建設発生木材を中心にリサイクルしてきた。5年ほど前に近隣で同業他社の施設開設があり、建設系は廃材調達の競争が厳しくなっていくと予測した。
 一廃の業許可は取得していなかったが、当時から地域の競争に対処するため、周辺の工場や事業所とパレットなどの取扱いについて交渉してきた。創業時から毎年、木くずチップの生産量は右肩上がりを続けてきたが、全体として建設系の割合が減り、工場・事業所系が増えている。来年4月以降はパレットなどを一斉に受け入れる体制を整えている。

 

※間伐材の利用は確かに進んでいるのですが、伐出コストが高いためチップ化は非常に難しい状況が続いています。林地残材は紙用、パレットや梱包材は発電用といったように住み分けた方がいいように思います。

最終更新:2007年10月31日 12:52