週刊循環経済新聞(2007年8月27日)
木材情報285 高まる需要の流動化要素


 今夏、廃棄物由来の固形燃料を生産する業者にとって、気になる事件が発生した。木質燃料チップの大口ユーザーでもある日本製紙と王子製紙関連の工場で7月、相次ぎ硫黄酸化物および窒素酸化物の排出基準値超過(大気汚染防止法等)が確認され、各工場では自治体など地元対策に追われている。
 日本製紙は、釧路工場(北海道釧路市)のスラッジとRPF、石炭を主燃料とする9号ボイラーと、石炭焚きの8号ボイラーで窒素酸化物と硫黄酸化物の基準値超過が確認された。このうち、9号ボイラーは2006年、663時間にのぼる基準値超過があった。旭川工場(北海道旭川市)で基準超過が認められたのは黒液が主燃料の1号回収ボイラー。両工場とも排出基準値の超過前にボイラーを自動停止する環境インターロックを導入するなど、管理体制の強化が図られている。
 王子製紙グループは、王子製紙の日光工場(栃木県宇都宮市)と佐賀工場(佐賀県久保田町)、江戸川工場(東京・江戸川)、王子製紙の釧路工場(北海道釧路市)、苫小牧工場(北海道苫小牧市)、春日井工場(愛知県春日井市)で基準値超過を確認。廃棄物由来の燃料を利用している工場も複数含まれている。
 排出基準値超過に何が影響を及ぼしているのかについては、未だ特定される段階ではなく、木質燃料チップの調達基準の行方も不透明な状態だ。
 木質燃料チップに関しても、今後は発電用ボイラーの燃焼管理を安定して行うことを目的に、異物混入チェックが厳格化される可能性が高い。
 特に、磁選機で除去できない、アルミの釘などが混入すると、融点が660℃と低いため、トラブルの原因となる確率が高くなる。また沸点を超えると熱交換機に付着する場合も出てくる。
 廃棄物由来の燃料を利用する側にとって、極力単一素材燃料の割合を高くした方が、燃焼が安定し、管理も易しい。その意味で木くずに比べカロリーが高く、異物混入の確率の低い廃タイヤチップなどに利用の重心が移っていくことも考えられる。
 チップ生産業者にとっては、一方で集荷競争、他方で需要の流動化と、不安定要素が増加している。

 

※廃棄物を燃焼させる以上は大気汚染物質への対策は非常に重要となります。廃タイヤはすでに引き合いが強まっていて、次第に入手が困難になりつつあるようです。「廃棄物の資源化」は予想以上に早く進んでいます。


週刊循環経済新聞(2007年8月20日)
木材情報284 皆が「町工場レベル」の集荷合戦


「無茶苦茶だ。大手も中規模も、小規模も皆が町工場のレベルで材料(木くず)の取り合いをしている。このままいくとどうなるのか、不安でならない」
 某中堅チップ業者を訪ねた際の第一声だ。「皆が町工場」、この言葉に、今の木くずチップ市場の現状が如実に表れている。
 際限なく拡大する需要を前にして、チップ業者は我先に集荷競争へ。表面上は、一定水準の処理料金が保たれているように見えるが、実態は大きく崩れている。ここ数年来、木くずの中間処理料金は1トンあたり1万円前後というのが相場であった。各チップ業者とも、ほぼそれに見合った処理料金表も出している。しかし、先の中堅チップ業者によると「料金表なんて、もはやあってないようなもの」となっているのが現状のようだ。ケースバイケースだが、下落幅は3,000~4,000円近くに達していると見られる。
 需要拡大とともに、小規模な新規参入者が増加していることは、これまでも紹介してきた。当初は「目障りな」といった程度であったが、最近では大手・中堅チップ業者にとっても、無視できない存在となりつつある。「小」も10集まれば、それなりの取扱量となる。固定供給先を抱える大手・中堅チップ業者にとって、物量の確保と定量供給は信頼をつなぎとめる命綱。それを守るためには、「小」とも戦わざるをえない。
 大手企業系の排出事業所は、個人営業の解体業者などと異なり、「安かろう悪かろう」によるリスクを回避するため、頻繁に処理料金の変更は要求しない。しかし、全体が下落し、常態化すると話は別だ。つまり、イレギュラーなダンピングにより生じた安値ではなく、「通常料金である」との理解へ変化していく可能性が出ている。
 こうした処理料金体系の地盤沈下は、裏返してみれば、チップの売値(需要家の買値)水準の上昇が背景にある。

 

※ここには大規模な業者でも不利になりうると書かれていますが、実態はさまざまだと思われます。なかには相対取引でうまく価格を維持している場合もあるでしょうし、「定価」が存在しない状況では対策はいくつも取ることができます。



週刊循環経済新聞(2007年8月6日)
木材情報283 原料確保優先で消耗戦は不可避か


 わずか2年前までは、古材由来の木質チップは、買手市場だった。燃料需要の減る夏場を迎えると、チップはだぶつき、古材チップ業者は出荷先の確保に奔走するのが恒であった。ところが、昨今の需要量の急拡大により、供給側が需要家を選択する時代に突入している。
 大手のチップ生産業者は、売値や運送距離及びコスト、需要先施設の荷降ろしの態勢など、諸条件を考慮。供給先の順列を明確にし、原料集荷の状況と照らし合わせて、採算性の低い客先は時に断りを入れることが当たり前となりつつある。
 製紙会社なども、ボイラの稼働を止めると、生産活動に影響を及ぼしかねないことから、なりふり構わず燃料チップの取り込みを図っている。これはマテリアルリサイクル分野のボードメーカーも然りだ。
 以前は、一定量のチップを継続的に納める業者を重んじ、供給協力会社の顔ぶれはある程度決まっていた。
 ところが、昨今ではチップの供給量の大小に関わらず「来る者は拒まず」の姿勢へと変化している。新規参入組の解体業者や産廃業者などとも、直接取引きで、チップを受け入れる動きが活発化している。
 従来からの専門チップ業者にすれば、小規模とは言え、新規参入の業者が増えると処理料金のダンピングが発生する上、自らの原料確保量も減少するので、マイナスが大きい。長年にわたり「需要家に協力してきた」と自負する専門チップ業者の中には、製紙会社などへ無差別の受け入れの抑制を申し入れるケースも見受けられる。需要家は、専門チップ業者の意向を尊重する姿勢を示しつつも、水面下では様々なアプローチをしているのが実態のようだ。
 燃料チップの場合、未だ製品の買値は銭単位の域を出ておらず、中間処理料金の下落は、従来の専門チップ業者、新規参入業者の双方にとって不利益を生む。専門チップ業界のなかでは「こちらも原料の確保は命綱。このような状態が続くと体力勝負で打って出るしかない」との声も聞かれ、消耗戦は不可避の事態となりつつある。

 

※以前にも書いたように、自由主義経済ではこうした「たたき合い」を防ぐ仕掛けはなく、力のある業者しか生き残れません。あとは需要家と供給業者との「話し合い」をする余地があるくらいです。

最終更新:2007年08月28日 20:42