週刊循環経済新聞(2007年7月30日)
木材情報282 大手業者は在庫減少傾向が顕著に


 木くず需要の拡大とともに、木質チップ生産は、新規参入の動きが未だ続いている。
 異業種参入組では、比較的関連深い、解体業者や産廃業者、造園業者などのほか、まったくの異なる分野の企業も見受けられる。
 解体業者の場合、従来は発生現場近くに立地し、処理単価も安いと思われる専門チップ業者の施設に持ち込むケースが多かった。しかし、木くずチップ需要の高まりを目の当たりにし「自ら手がけた方が得策」と、小型破砕機を導入して、チップ生産に参画するケースが増えている。中には建屋内に本格的なラインを設置する業者もある。
 ただし、需要家に定量のチップを継続的に供給するには、木くず集荷の安定が必須。大手専門チップ業者と伍して物量を確保し、馴れない営業も展開せねばならず、採算ベースに載せるには相当のエネルギーが必要だ。集荷量が思うに任せず廃業、もしくは苦戦を強いられる業者も少なくない。
 一方、産廃業界からの参入組は、あくまで選別物を自社で再生利用することによるコストダウンが主たる目的で、チップ販売で利幅を広げようとする意識は、さほど強くない。
 とはいえ、取扱量は多いに越したことはないので、解体業者から木くずと他の産廃が混合状態でも受け入れるなど、産廃業者ならではのサービスで、差別化を図る事例もある。
 専門業者は、逆に取扱量そのものが勝負となる。大手もしくは、中堅の業者施設でも、新規参入組と比べ、木くずの集荷量は数倍にのぼる。
 当初は、新規参入組をあまり問題にしていなかったが、業者数が増えてくると、じわじわとボディーブローとなって利いてくる。その数字は、在庫量の多少となって現れつつある。
 規模が大きいと、比例して抱える需要先も増え、ある程度までは供給責任を負わなければならない。かつては、在庫に余裕をもっての操業だったが、今はほとんど自転車操業状態に。「最近は、トラブルやメンテでボイラが止まると、正直ほっとする」(大手チップ業者)と言った声が、現状を如実に物語っている。

 

※たぶんRPFも同じような状況になっているのではと推察されます。廃棄物といっても無限ではないので、業者ごとに定時・定量・定質で仕入れられる原料とバッファーとする原料を仕分ける必要性が出てくるでしょう。


週刊循環経済新聞(2007年7月23日)
木材情報281 未利用材はまず集荷の研究・検討


 供給不足が課題になるなか、当たり前だが、チップ業者が廃木材を安定調達するには、解体工事業者との連携および未利用資源の有効活用がかぎになる。
 解体工事業の場合、工事の請負は広域的になりつつあるが、事業所は個々の地域にある。特に高ロットで木材が排出されるの木造住宅の解体で、施行に携わるのは基本的に地場色の濃い会社が多い。
 チップ事業を手堅く運営してきた業者は、地域の解体工事業者や工務店を大切にし、施工業者の仕事や気質もよく理解している。チップ向上も純粋な受入だけだと、これからの廃材確保が難しい。ビジネスライクな営業でもなく、町内会のような地域密着の付き合いが大切になる。施工業者もそうした取り組みを営業の糧にしてきた。
 原油高の影響で、廃材、チップともに今後は搬送距離がさらに短くなる。その点でも木材リサイクルは、新たな地域産業として確立していく可能性がある。
 これから、チップ業界を挙げて検討・実証を重ねるのは、林地残材など未利用資源の有効活用だ。伐採するべきだが林立したままの材も含めると潜在的な利用可能量は膨大になる。森林荒廃だけでなく、花粉症対策で公費をかけて杉伐採が始まっている。
 今の課題は間伐材などをどう搬送・集荷し、チップ化するのが望ましいかを検討することにある。国は山全体で出る伐採材の利用を求めてくるが、現実的なのは、まずは整備された林道から一定距離内にある木材の調達だろう。山林の地形も幾つかのカテゴリーに分ける必要性がありそうだ。チップ業界では未利用バイオマスの活用先進国のスウェーデンやフィンランド、ノルウェーの取り組みへの関心を高めている。

 

※2006年あたりから状況が変化し、紙や木質ボード用の木材チップ・パルプの自給率が徐々に高まってきています。他に代替原料がほとんどないこれらの用途への供給を優先すべきで、燃料用は余剰がある場合に限って振り向ける方がいいと思います。


週刊循環経済新聞(2007年7月16日)
木材情報280 暴走しない程度のコスト競争


 C社は大都市圏から50kmほど離れた中堅都市を拠点に、木材チップ業を営んでいる。周辺に同業者のライバルがなく、3年ほど前までは廃材の調達、処理料金の設定とも安定していた。
 しかし、隣県に他産業からの新規参入でチップ施設が建ち、チップを生産しているわけではないが、施設許可を持たない小規模破砕施設も数多く開設した。バイオマス発電を中心にエンドユーザーの開拓も進み、少しずつ地域や隣県の破砕業者と木材調達の競争が厳しくなった。
 特に隣県業者のダンピングは原価すれすれだった。半年ほど前からC社の顧客筋まで手を伸ばし激戦状態に入った。C社は当初、コスト競争に加わらなかった。しかし、チップ化は最終的な再資源化先の姿も見えやすく、排出事業者の中には多少は価格だけで業者を選んでも、不適正処理などの問題を起こさないだろうと判断してしまう。
 一定の価格を下回らないように配慮しながら、ある程度までコスト競争に加わることとした。競争とはいえ、周囲に比べると高値だったが、木材は少しずつ同社に戻るようになった。小規模施設の横行は相変わらずだが、隣県の業者は越境してこなくなった。
 もともとC社は同業界としては歴史が古く、地域密着で木材を受け入れてきた。排出側の担当者もある程度の価格改定があって、おそらく社内への説明がしやすくなった。「目には目を」は危険な点もあるが、時には競争も無視できない。

 

※自由経済の下ではたとえダンピングまがいでも価格競争に規制はありません。事例の業者のように「顔」で取引が継続すればいいのですが、価格だけですべて決まってしまう場合の方が多いと思われます。


週刊循環経済新聞(2007年7月9日)
木材情報279 中間処理の役割を再検討


 東日本で混合廃棄物の破砕や木くずチップを手がけるA社は、住宅などの解体現場から廃材を受け入れている。木くずは単品で持ち込まれるものと、混廃に混ざっているものがある。
 チップは需要家の数、ユーザーから求められる量とともに増えている。これまでは商社経由での搬出を主力にしていたが、今後は需要家への直納も選択肢に入れ、搬出ルートを増やす意向を固めた。
 中間処理施設で使う電力を賄うため、小規模の自家発電施設の導入検討を始めた。少量だが、地場の資材メーカーにもチップを出荷しており、地域性の強い流通経路を築こうと考えている。
 解体系の受け入れが主力なので、良質のムクの木くずも多く出る。しかし、都心から遠くない場所に立地し、ヤードスペースには恵まれていない。木材をグレード別に分別・保管すれば、マテリアルリサイクルでも搬出経路を確保できる。しかし、搬出入を短期間で行うために、全量ではないがユーザーはバイオマス発電を中心に選定する。
 A社の取り組みは、ユーザーへの供給不足と木くずの調達競争が厳しくなっていくなか、排出事業者とユーザーの間で、中間処理業者としてどうイニシアチブあるいはキャスティングボードを握るかを考え、浮かび上がってきた事業構想だ。
 同じく東日本のB社は解体工事業と中間処理業を兼業してきた。既設に加えて、2年前に増設した木くずチップ施設も満杯に近付くほど木材の入荷が順調だ。自社解体の廃材とともに、同業他社とも工事での競合を避けて連携を密にし、安定的に木材を調達している。
 ロットはまとまっているが、チップの供給については強気の構えを出さない。燃料用、マテリアル用のチップをそれぞれ生産し、すべてチップ商社を介して供給する。商社とのパイプを太くし、搬出先についてB社が働きかけなくても済む環境整備をすすめようとしている。

 

※ロットが大きくなれば、中間処理業者がエンドユーザーと直接取引する余地は増えてきます。問題は定時・定量・定質のチップを供給する体制が継続できるかにあります。現状では少数派だろうと思われ、場合によっては輸入が取って代わるかもしれません。

最終更新:2007年08月01日 11:31