見学記録
作成:野瀬光弘(2007年6月25日)

対象:株式会社かずさクリーンシステム
〒292-0836 千葉県木更津市新港17-2
URL http://kankyou.eng.nsc.co.jp/contents/kazusa_clean_system.html

1.事業の沿革
 1996年から県の主導のもとで、4市(木更津、君津、富津、袖ヶ浦)の課長、新日鐵の担当者で広域化の検討を開始。富津は1979年に建設した清掃工場の建て替えを急いでいたが、他市はまだ寿命が先だった。そこで、第一工場は2002年から、第二工場は2006年から稼働させることとし、当初は富津の可燃ゴミ+他市の焼却灰ほかだったが、フル稼働してからは4市の可燃ゴミほかとなった。なお、敷地は元々新日鐵の資材置き場で、計画段階では産廃を受け入れることを想定していたが、地元住民の反対により汚泥など一部の合わせ産廃のみとなった。

2.事業スキーム
 上記のホームページに示された事業スキームの図をみるとわかるように、(株)かずさクリーンシステムを中心に、出資者からの資金のみならず、千葉県や環境省・経産省の補助金を利用して施設を作り、その後の運用は主たる出資者の子会社に委託する方式となっている。資金調達は債務保証の不要なプロジェクトファイナンスを採用。信託銀行を介した支払を行い、20年で返済する計画になっている。なお、市からの委託料は2.7~2.8万円/トンで、20年間のごみ量の推移を基準に定めたという。料金は固定+変動の2層に分かれており、前者が約7割を占める。

3.ごみの焼却
 直接溶融・資源化システム(シャフト炉式ガス化溶融炉)を採用しており、可燃ごみのほか、不燃ごみ、焼却残渣、汚泥などを一括して溶融・資源化する()。ごみ収集は4市それぞれだが、袖ヶ浦はいったん収集したごみを粗破砕し、8.5トンのパッカー車に積み替えて持ち込んでいる。4市で方式は異なるが、いずれも一般ごみは有料化している。ごみの受け入れ量は第一工場100トン×2+第二工場125トン×2=450トン/日だが、多いときには600トン/にのぼる。
 ピットに入れられたごみはクレーンによってガス化溶融炉に運ばれ、還元剤として石灰石とコークスの混合によりメタルとスラグになり、製鉄原料やアスファルト骨材にリサイクルされる。コークスはトン当たり40~50kg投入するが、第一工場だけ稼働していたときは飛灰が多く含まれていたこともあってトン当たり60~70kgと多かった。なお、1時間に1回のペースでメタルとスラグは回収し、量は500~800kg。メタルは1割に過ぎない。
 溶融炉の点検は年に1回2週間止めて、摩耗した部分に耐火物を塗布する。他にも3ヶ月に1回のペースで定期点検を実施。

4.事業の運営
○(株)かずさクリーンシステム:1998年12月設立、資本金20億円、従業員12人。うち1人は4市から持ち回りで出向(2006年度までは2人)。
○日鉄環境プラントサービス(株):1994年4月設立、資本金5,000万円、従業員566人
 事業所はかずさ(千葉)の他に、登別(北海道)、秋田(秋田)、釜石(岩手)、滝沢(岩手)、習志野市(千葉)、巻(新潟)、亀山(三重)、揖龍(兵庫)、香川(香川)、飯塚(福岡)、糸島(福岡)、高知幡多(高知)にある。かずさは56人体制で、1組8人の4組が24時間体制(12時間交替)で作業を行う。
 実際の運営面では、4市の担当部長、新日鐵、エムコのメンバーで運営連絡協議会で定期的に話し合う。なお、リスク管理は会社が自主的に行っているが、事故などの不測の事態が起こった場合のコストは4市で負担することになっている。

5.情報公開
  • 毎年5月にはトラック協会、区の代表などを招いて地元連絡協議会を開き、排ガスやダイオキシンのデータなどを公開。秋には先進地への視察を行っている。
  • かずさクリーンシステムは独自のホームページを持っておらず、産廃情報ネットの優良性評価制度に基づく情報開示を実施していないが、担当者は質問があったら答えるとのことであった。
  • 4市の小中学校から社会見学は受け入れている。

6.今後の方向性
  • 排ガスの基準ができたら医療計廃棄物やアスベストの受け入れを考えたい。本来は住民との合意が得られれば受け入れが可能なはず。
  • 発電量はピーク時に8,000kwに達し、4,000kwは売電できる状況にあるが、まだ1年しか運用していないために試行錯誤の段階にあり、今後は安定的に売電したい。

7.感想
 まだPFI法が施行されていない時期に取り組まれた事例で、当事者は試行錯誤しながらどうにか運用にこぎ着けたという状況だったと推測される。ごみ焼却の方式は製鉄業者ならではのノウハウが活かされており、見ている範囲内ではうまく操業しているように感じられた。ただし、「民間主導による効率的な事業運営」といいつつも、焼却処分だけで2.7~2.8万円/トンはやや高く、必ずしもそう言い切れない部分もある。ごみの収集量が減っても、固定の部分が大きいために減収は小さいので、安全性を考慮して安定的に運営できるが、住民にとってのメリットはほとんどない。
 当座の建て替え資金がなければ今後もPFI方式を採用することとなるため、かずさクリーンシステムのケースは自治体にとって大いに参考になる。ガス化溶融炉は民間企業の方がノウハウの蓄積が大きく、旧来の公設公営は難しいことも考えられる。いずれにしてもプロジェクトファイナンスという資金調達方法や事故が起こった場合のリスクを自治体が一元的に負う仕組みなど、本当に住民にとって望ましいかどうか検討すべき課題は多く残されている。
最終更新:2007年06月28日 11:55